2020年12月17日、ユネスコはフィンランドのサウナ文化を無形文化遺産に登録しました。正式名称は「Finnish sauna culture(フィンランドのサウナ文化)」。「サウナ」という習慣が、世界的に保護すべき文化として認められた日です。
無形文化遺産とは、建造物や美術品ではなく、習慣・慣行・知識・技術など「形のない文化」を対象にしたユネスコの制度です。歌舞伎、能楽、和食なども日本からこの制度で登録されています。サウナがその対象になったのは、フィンランドにとっての「サウナとは何か」という問いに対する、一つの答えです。
フィンランド人にとってのサウナ
フィンランドは人口550万人ほどの国ですが、サウナの数は約300万と言われています。ほぼ2人に1台。住宅のほとんどにサウナが備わっており、マンションには共同サウナがある。議会にもサウナがある。企業の会議室代わりにサウナを使う文化もある。
フィンランドにおいてサウナは娯楽ではなく、生活インフラに近い存在です。かつては出産がサウナ室で行われた。病人を看病したのもサウナだった。葬儀の前に遺体を洗ったのもサウナだった。清潔な場所、特別な場所として、生と死の両方に立ち会ってきた。
「サウナでは、人は素のままでいられる。地位も肩書きも、服と一緒に脱ぐ。」
— フィンランドの言い伝え
この言葉は、フィンランドのサウナが単なる入浴施設ではないことをよく表しています。裸で汗をかく場所では、社会的な身分や役割が意味をなさない。だから本音で話せる。政治家が政策を議論し、ビジネスパートナーが契約前に話し合う。そういう場としてサウナが機能してきた歴史があります。
なぜ2020年に登録されたのか
フィンランド政府がサウナ文化のユネスコ申請を進めたのは、サウナが近代化の中で変質しつつあることへの危機感が一因にあります。電気式サウナや赤外線サウナの普及により、薪で焚く伝統的なサウナが減っている。ロウリュの習慣を知らない世代も出てきた。記録に残し、守っていこうという動きが国全体で高まっていました。
登録申請はフィンランドの文化省が主導し、サウナ愛好家団体、職人、コミュニティが協力して資料を作成しました。ユネスコの審査は約2年かかり、2020年の審査会で正式に認められました。
登録されたのは「どのサウナ文化」か
ユネスコが登録したのは、フィンランドのサウナ文化全体ではなく、特に「煙(けむり)サウナ(サヴュサウナ)」の伝統を中核に置きながら、より広い「フィンランドのサウナ文化」です。
煙サウナは最も古い形式のサウナで、煙突のない小屋の中で薪を長時間焚き、石に熱を蓄えてから煙を出し、煙が抜けたあとに入ります。準備に半日かかることもある。この手間をかける行為そのものが文化です。
ヴィヒタでの身体ケア、ロウリュの方法、薪の選び方と準備、サウナ後に湖に入る習慣、そしてサウナでの話し方のマナー——それらすべてが「フィンランドのサウナ文化」として一つにまとまっています。
日本のサウナブームとの違い
日本では2010年代後半からサウナブームが続いています。「ととのう」という言葉が流行し、サウナ施設の新規開業が相次いだ。利用者数は増え、サウナ文化への関心が高まっています。
ただ、日本のサウナブームの主役は「都市型の施設」です。電気ヒーターと高温乾燥サウナ、水風呂と外気浴のセット。それはそれで価値があるのですが、フィンランドの人が「サウナ」という言葉で思い浮かべるものとは、かなり違います。
薪で焚くサウナ、ロウリュの蒸気、ヴィヒタの香り、そして外の湖へ飛び込む感覚。それが本来のフィンランドサウナの体験です。日本でも薪焚きのサウナを求める方が増えています。当社が取り扱うハルビア(HARVIA)のサウナストーブは、フィンランドのメーカーです。ロウリュができる本格的なサウナ室を岩手に作ることができます。
よくある質問
Q. ユネスコ無形文化遺産に登録されると何が変わりますか。
登録自体に法的な保護効果はありませんが、国際的な注目が集まることで保護活動が加速します。フィンランドでは登録後、煙サウナ職人の育成支援や、サウナ文化の記録・普及活動が活発になりました。
Q. 日本のサウナはユネスコに登録されていますか。
2026年時点で、日本のサウナ文化はユネスコ無形文化遺産に登録されていません。