「寒くなってきたのでストーブを使おうとしたら、煙突が詰まっていた」「シーズンが始まって初めて焚いたら、変な音がする」。毎年秋になると、こうしたご相談が急に増えます。薪ストーブは、使わない期間が長いほど、見えないところで状態が変わっていることがあります。
点検は、冬が来てから頼むと間に合わないことがあります。理由は大きく二つです。秋に依頼が集中すること、そして点検で傷みが見つかったときに、部品が届くまで時間がかかることです。この読みものでは、薪ストーブを消耗する部品の集まりとして眺め、冬の前に点検を済ませておく意味を、暖房の季節の長さや部品の取り寄せの事情から考えます。初焚きの前にご自分で確かめることは、「秋の初焚き」にまとめています。
秋の依頼は、短い期間に集まります
薪ストーブの点検や清掃のご依頼は、10月以降に一度に集まります。「涼しくなってきたから」「そろそろ使いそうだから」と考える時期が、どのご家庭もほぼ同じだからです。施工する側では、同じ時期に新しいストーブの設置工事も重なります。
岩手では11月に入ると朝晩の冷え込みが強まり、「今すぐ使いたい」という状況になります。そのころにご連絡をいただいても、2〜3週間先まで予約が取れないことがあります。そのあいだは火を入れられないか、不安を抱えたまま使うことになります。
当社の冬支度の目安では、点検と煙突掃除に向くのは6月から8月です。予約が取りやすく、雨の少ない日を選んで屋根の上の作業ができます。夏に間に合わなかった場合も、9月中、遅くとも10月の前半までにご依頼いただければ、秋の混雑はおおむね避けられます。当社では毎年夏から秋にかけて点検をお受けしており、この時期は比較的余裕があります。
冬の途中で止まると、春までが長くなります
冬の前に済ませておく理由を、暖房の季節の長さから考えてみます。家庭用エアコンの期間消費電力量を計算するための日本産業規格(JIS C 9612:2013)は、暖房期間を11月8日から翌年4月16日までとしています。日数にすると160日、一年のおよそ44%にあたります。
そのなかでも1月の盛岡は、気象庁の平年値(1991〜2020年)で月平均気温が−1.6℃、日最低気温の平均が−5.2℃です。家の主な暖房を薪ストーブが担っている場合、この季節にガラスが割れたり、扉のガスケットが傷んで空気の調整が効かなくなったりすると、代わりの暖房だけで寒さをしのぐことになります。
シーズンの途中で傷みに気づいても、部品が届くまでは修理ができません。秋のうちに点検を受け、傷みかけた部品を替えておけば、160日の暖房期間を一台のストーブに安心して任せられます。
薪ストーブは、消耗する部品で組み立てられています
鋳物や鋼板の本体は丈夫ですが、炎や熱に直接さらされる部品は少しずつ消耗します。当サイトに掲載しているハースストーンの取扱説明書(ヘリテイジ8024)を例に、主な部品を見てみます。
扉のまわりのガスケットは、ストーブの気密を保ち、燃焼の効率を支える部品です。説明書は交換の目安を2〜3シーズンに1回とし、使用頻度に応じて定期的に確かめるよう勧めています。確かめ方として紹介されているのは、紙を挟んで扉を閉め、その紙を引いてみる方法です。簡単に抜けるようであれば、気密が十分でない可能性があります。はがれ、ほつれ、硬化が見られるときも交換の時期です。
ガラスは熱衝撃に強いセラミックガラスで、外側には熱を炉内へ反射するIRコーティングが施されています。説明書は、割れやひびが生じたときは使用をやめて交換し、必ず純正品を使うよう求めています。炉の上部で炎と煙の流れを整えるバッフルも、穴が開いたり傷んだりしたまま使い続けると、ストーブの機能や寿命に影響するとされています。
触媒(キャタリティックコンバスター)を備えた機種では、シーズン中に最低3回の目視点検が勧められています。正しく働いていない触媒は、暖房の効率を下げるだけでなく、クレオソートや煙の増加につながると説明書は書いています。
当社の点検でも、扉やガラスのガスケット、炉内の耐火レンガやバーミキュライトのひび、ダンパーや空気調節の動き、本体外側の塗装や錆を確かめます。耐火材のひびを放置すると、本体の鉄に熱が直接当たるようになり、劣化が早まります。表面の錆も、内部へ進む前に手当てしておきます。
錆を防ぐ手入れは、シーズンの終わりから始まります。ハースストーンの説明書は、湿気の多い地域では炉内の灰に湿気が溜まって錆の原因になるため、シーズンの終わりに灰を取り除くよう書いています。夏のあいだの扱い方ひとつで、秋の点検で見つかる傷みの量は変わります。
部品は、海を越えて届きます
当社で扱う薪ストーブの多くは、海外で作られています。ハースストーンは1978年に始まった米国の会社で、鋳鉄の部品はスペインの親会社の鋳造所で作り、バーモント州モリスビルの工場で一台ずつ組み立てています。日本へは長野総商株式会社が1993年から輸入しています。ヨツールはノルウェーのフレドリクスタに本拠を置く鋳物ストーブの会社で、日本の輸入元は株式会社メイクです。
そのため、よく使われる部品は国内に在庫があっても、機種や部品によってはメーカーからの取り寄せになります。煙突の部材も同じです。点検で傷みが見つかった時期が早ければ、部品の到着を待って、11月の焚き始めまでに交換を終えられます。ぎりぎりのご依頼では、修理が終わらないまま寒い季節を迎えることになりかねません。
その一方で、ハースストーンでは1990年代の機種にもパーツリストが用意されていて、多くの部品が今も取り寄せられます。長く使い続けられる道具であることと、部品を待つ時間が必要になることは、輸入品という同じ事情の表と裏といえます。
型番と記録を、手元に残しておきます
部品の取り寄せを早めるために、ご自宅でできる備えがあります。まず、ストーブの機種名と製造番号を控えておくことです。本体に付いている製品ラベルを写真に撮っておけば、ご相談のときにそのまま送っていただけます。
次に、取扱説明書を手元に置いておくことです。ハースストーンの説明書には、ガラスやガスケットの品番に加えて、扉ごとに必要なガスケットの太さと長さまで載っています。部品の名前と番号がわかると、確認のやりとりが短くなります。当サイトでは、各社の取扱説明書を機種ごとに掲載しています。
そして、点検や交換の記録を残しておくことです。いつ煙突を掃除し、どの部品をいつ替えたかがわかれば、次に替える時期の見当がつきます。ガスケットのように数シーズンごとに替える部品は、記録があると交換の時期を逃しにくくなります。
年に一度、専門の目で確かめます
「去年も使えたから今年も大丈夫」とは限りません。ガスケットは外から見ても傷みがわかりにくく、内側から炎の熱を受けて少しずつ硬くなっていきます。煙突の内壁も、表から見えないところで変化しています。煙突の中には、ひと冬の焚き方がそのまま残ります。掃除の現場で何を確かめているかは、「煙突掃除の現場で、見ていること」で写真とともにご紹介しています。
ハースストーンの説明書は、シーズンの終わりに煙突を掃除し、劣化した部材がないかを点検するよう求めています。当社の目安も、ワンシーズン焚いたら1回の点検と煙突掃除です。煙突の傾きやガラスの欠けのように、ご自分で確かめられることは日ごろから見ておき、そのうえで年に一度、分解を含む点検を専門の者に任せる。この組み合わせが、冬を通して安心して火を使うための基本になります。点検の内容は薪ストーブ点検・メンテナンスのページでご覧いただけます。
よくある質問
Q. 点検の費用の目安はいくらですか。
煙突清掃込みの点検で、屋根の形状や煙突の長さによって異なりますが、当社では状況を見て見積もりをお伝えしています。まずはご相談ください。
Q. 設置から何年くらいで点検が必要ですか。
設置後に関わらず、シーズン前の年1回の点検・清掃が基本です。使用量が多い場合(ほぼ毎日焚く)はシーズン中にも煙突の状態を確認することをお勧めします。
関連するページ:煙突について
参考:暖房期間はJIS C 9612:2013(ルームエアコンディショナ)による。盛岡の気温は気象庁の平年値(1991〜2020年、気象庁)による。ガスケット・ガラス・バッフル・触媒の扱いは当サイト掲載のハースストーン ヘリテイジ8024 取扱説明書、メーカーと輸入元は当サイトのハースストーン・ヨツールのページによる。