アイスランドの地熱温泉と湯気の風景
YOMIMONO / 世界の温浴文化

アイスランドの温泉は、なぜ街の真ん中にあるのか。

文・有限会社D'STYLE|岩手・盛岡の薪ストーブとサウナの店

公開日:2026年9月11日

アイスランドは人口38万人の小さな国だが、地熱資源は世界有数。首都レイキャヴィークの名前自体が「煙の湾」を意味していて、入植者が最初に見たのは海岸から立ち昇る地熱の蒸気だった。

この島では温泉が贅沢品ではない。日常の一部であり、インフラの一部でもある。

街を温める地熱

レイキャヴィークの暖房は、ほぼ全てが地熱でまかなわれている。地下から汲み上げた高温の水を、パイプで各家庭に送る。化石燃料を燃やさずに街全体を暖める仕組みが、1930年代から整備されてきた。蛇口をひねるとかすかに硫黄のにおいがする。地面の下が熱い国に暮らしている証拠のようなものだ。

公共プールという社交場

アイスランドには人口比で世界一の公共温水プールがある。「サンドラウグ」と呼ばれるこれらの施設は、ほぼ全ての町にある。入場料は数百円。屋外のホットタブに浸かりながら隣の人と世間話をする。フィンランドのサウナに近い役割を、アイスランドでは温泉が果たしている。

地元の人に聞くと「サンドラウグに行かないアイスランド人はいない」と言う。子どもは学校の授業でここへ来るし、お年寄りは毎朝通う。議員が選挙前にサンドラウグで有権者の声を聞くこともある。裸で湯に浸かれば肩書きは関係なくなる。

野天風呂の文化

観光客はブルーラグーンに行くが、地元の人はもっと素朴な場所を知っている。山中の川に地熱が湧き出す場所、海岸に潮が引くと現れる天然の湯だまり。地図に載っていない温泉が島中にある。

日本の秘湯文化と似ている部分がある。整備された施設ではなく、自然がそのまま湯を差し出しているような場所。ただし、アイスランドの野天風呂は入浴マナーがほぼ存在しない。裸でも水着でも自由。日本の温泉とはそこが違う。

火山の島と東北の温泉

岩手県にも温泉は多い。花巻温泉郷、鳴子温泉、夏油温泉。火山がもたらす恵みを暮らしに取り込んでいる点ではアイスランドと共通している。違いは規模と密度だが、「地面の下が温かい」という感覚は同じだ。

温泉にせよサウナにせよ薪ストーブにせよ、根っこにあるのは「温まりたい」という欲求であり、「温まっている時間が心地よい」という実感だ。その実感を自宅の中に作る手段として、薪ストーブやサウナがある。

D'STYLE
橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)

岩手・盛岡で薪ストーブとサウナの施工を手がけて20年。温浴文化と東北の暮らしをつなげる仕事をしています。

温かい場所は、人を集める。

ストーブの前もサウナの中も、温もりが人を呼ぶ場所です。盛岡のショールームで火のある空間を体験してください。

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