フィンランドのスーパーマーケットに行くと、パン売り場に必ず並んでいるものがある。カレリアンピーラッカ(karjalanpiirakka)。ライ麦粉で作った薄い舟形の皮に、ミルクで炊いた米粥を詰めて焼いたものだ。見た目は素朴で、装飾は一切ない。
カレリア地方から
名前の「カレリア(Karelia)」は、フィンランド東部の地方名。かつてはフィンランドとロシアにまたがる広い地域を指していた。この地方の農家が何百年も前から焼いてきた保存食がカレリアンピーラッカの始まりだ。
戦後、カレリア地方の一部がソ連に割譲され、住民がフィンランド各地に移住した。移住者たちはカレリアンピーラッカのレシピを持って行き、それがフィンランド全土に広まった。地方の家庭料理が国民食になった珍しい例だ。
食べ方
焼きたてを食べるのがいちばんだが、冷めてもおいしい。バターを塗るか、卵バター(ゆで卵をつぶしてバターと混ぜたもの)を載せるのが定番の食べ方だ。朝食にもおやつにも、軽い夕食にもなる。
フィンランドの家庭には「土曜日はカレリアンピーラッカを焼く」という習慣があった。週末にまとめて焼いて、平日に少しずつ食べる。薪オーブンで焼くのが昔のやり方だ。
ストーブの天板で
冷めたカレリアンピーラッカを薪ストーブの天板に置くと、ほどよく温まる。直火ではなく、鋳鉄板の穏やかな熱で温めると、皮がカリッとして中の粥がとろりとなる。電子レンジとは違う温まり方だ。
薪ストーブの天板は調理にも使える。煮込み鍋を載せておけばゆっくりと煮える。やかんを置けば湯が沸く。暖房しながら調理もできる。薪ストーブは暖房器具であると同時に、台所の延長でもある。