ラップランドは北極圏にまたがる地域で、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアにまたがっている。ここに暮らすサーミの人々は、数千年にわたってトナカイと共に生きてきた。
トナカイは家畜であり文化
サーミの人々にとってトナカイは肉、毛皮、骨、角——暮らしの素材すべてを提供してくれる存在だ。トナカイの毛皮で作った衣服と靴は、マイナス40度でも体を守る。化学繊維のダウンジャケットよりもトナカイの毛皮の方が暖かいと、今でもサーミの牧畜民は言う。
現在、スウェーデンとノルウェーに合わせて約5万人のサーミがおり、そのうち約1割がトナカイの牧畜に従事している。残りの人々は現代的な暮らしをしているが、トナカイとの関わりは文化のアイデンティティとして続いている。
ラヴウの中の火
サーミの伝統的なテント「ラヴウ(lavvu)」は、中央に火を焚く構造になっている。円錐形のテントの真ん中に炉があり、煙は頂上の穴から抜ける。火を囲んで家族が座り、トナカイの肉を焼く。
この「住居の中心に火がある」という形は、日本の囲炉裏文化と同じだ。地球の反対側で、同じ発想にたどり着いている。寒い場所に住む人間にとって、家の真ん中に火を置くのは自然なことなのだろう。
冬の準備は夏に始まる
ラップランドの冬は10月から5月まで続く。その長い冬に備える準備は夏の間に行われる。薪を切り、干し肉を作り、ベリーを摘んで保存する。夏の白夜の下で働き、冬の極夜を越える。
岩手の薪ストーブユーザーも同じだ。春から夏にかけて薪を割り、薪棚に積んで乾燥させる。秋に薪の含水率を確認し、冬に備える。寒い土地に住む人間の暮らしには、どこにいても準備の季節がある。