薪ストーブに入れる木は、種類によって燃え方がそれぞれ異なります。木の種類によって、同じ薪棚に蓄えられる熱の量も、火のつき方も、燃え尽きるまでの時間も変わります。そして、木であっても薪ストーブに入れてはいけないものがあります。
この読みものでは、岩手で手に入る木の持ち味と使いどころ、針葉樹の上手な使い方、燃やしてはいけない木の見分け方、そして海外で進む薪の品質のルールまでを順にご紹介します。樹種ごとの比重と熱量の数字は「薪の科学」に表でまとめていますので、あわせてご覧ください。
樹種で変わるのは、かさあたりの熱です
よく乾いた木の重さあたりの熱量は、樹種によって大きくは変わりません。差が出るのは密度です。同じ大きさの薪でも、中身の詰まった重い木ほど多くの熱を蓄えています。当サイトの表では、気乾比重はクヌギが0.85、ナラが0.68、スギが0.38で、同じ体積あたりの熱量はナラがスギのおよそ1.8倍になります。
薪は、薪棚一つ、軽トラック一台といった「かさ」で扱うものです。重い木を選べば同じ薪棚で長く焚け、薪を足す回数も減ります。軽い木は火つきがよく、短い時間で部屋を暖めたいときに力を発揮します。樹種の違いは、優劣というより役割の違いと考えると、使い分けがしやすくなります。
岩手の広葉樹、それぞれの持ち味
東北の山には、薪に向く広葉樹が豊かにあります。中心になるのはナラです。岩手でナラと呼ばれる木の多くはミズナラとコナラで、ヨーロッパのオークと同じコナラ属の仲間です。密度が高く、熾火になってからも長く熱を保つため、夜の焚き方や寒い朝の火に頼りになります。そのぶん水が抜けにくく、乾燥には1年半から2年ほどかかります。
クヌギはさらに重く、当サイトの表で比べた樹種の中では最も比重の高い部類に入ります。良質な木炭の原料として、またコナラとともにシイタケ栽培の原木としても知られる木です。ケヤキも重く火持ちのよい木ですが、繊維が交差しながら育つため、割るのに手間がかかります。サクラは中程度の重さで、火つきと火持ちの釣り合いがよく、燃やすと穏やかな香りが立ちます。
白樺は火つきがよく、明るい炎を上げて燃えますが、ナラに比べると早く燃え尽きます。焚き付けから火を大きくする段階で使い、火が落ち着いたら重い薪に替えると持ち味が生きます。白樺の性質は「白樺の薪を知る」で詳しくご紹介しています。このほかカエデ類やホオノキ、クリ、果樹の剪定枝など、里山から出る広葉樹の多くは、よく乾かせば薪として使えます。
針葉樹は、使いどころを選んで
スギ、アカマツ、カラマツなどの針葉樹は、広葉樹より軽く、同じかさでは熱が少なめです。ヤニを多く含むため火つきがよく、燃え上がりの早さは焚き付けにうってつけです。一方で、パチパチと爆ぜて火の粉が飛びやすいので、扉を開けて焚くときには注意が要ります。
針葉樹は煙突を汚しやすい、という話もよく耳にします。米国ジョージア大学の普及記事は、松の樹脂から連想されたこの通説を研究結果に基づいて否定し、煙突に付くクレオソートの多くは比較的低い温度での燃焼から生じると説明しています。同じ記事は、乾燥が不十分な薪では水の蒸発が燃焼を冷やすため、クレオソートが付きやすくなるとも述べています。樹種を問わず、よく乾かした薪を十分な空気で勢いよく燃やすことが肝心です。
国産のアグニのように、針葉樹を主な燃料として焚けるよう設計されたストーブもあります。裏山にスギやカラマツがある家では、乾燥を丁寧にしたうえで、焚き付けや広葉樹との組み合わせに使うと無駄がありません。なお、カラマツはヤニが多いため、当サイトでは1年から1年半と、ほかの針葉樹より長めの乾燥をおすすめしています。
燃やしてはいけない木(一)薬剤・接着剤・塗料を含むもの
見た目は木でも、薪ストーブに入れてはいけないものがあります。米国環境保護庁(EPA)は、塗装された木、防腐処理などの薬剤処理をされた木、合板やパーティクルボードのように薄い板や木片を接着剤で固めた木材を、燃やしてはいけないものとして挙げています。燃やすと有害な物質が出るうえ、機器を傷めるおそれがあるためです。
とくに注意したいのが、防腐処理をした木材です。クロム・銅・ヒ素を含む防腐剤(CCA)で処理された木は、米国では2003年末まで住宅のデッキなどに広く使われていました。EPAはこうした木を家庭で燃やさないよう呼びかけており、米国アイオワ州の資料によれば、燃やすとクロムと銅は灰に濃縮され、ヒ素は気化して空気中に出ていきます。こうした灰は、畑にまく土壌改良材としても使えません。
解体した家の柱や古い建具、塗装された家具の端材などは、薬剤や塗料の有無を見た目だけで判断するのが難しいものです。由来の分からない材は焚かないと決めておくのが確かです。
燃やしてはいけない木(二)流木、傷んだ木、ウルシ
EPAの一覧には、海の流木のほか、湿った木、腐った木、病気の木、かびの生えた木も含まれています。腐朽の進んだ木は中身がもろく軽くなっていて熱が少なく、湿った木は前述のとおり煙突を汚す原因になります。
山の木で気をつけたいのが、ウルシの仲間です。米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、ポイズンアイビーなどの植物を燃やすと、かぶれの原因物質ウルシオールを含む粒子が煙とともに舞い、吸い込むと肺の刺激や重いアレルギー性の呼吸器障害を起こすおそれがあるとして、燃やさないよう注意を促しています。日本の山に自生するヤマウルシやツタウルシも、同じウルシオールを含む植物です。雑木をまとめて譲り受けたときは、ウルシが混じっていないか確かめてから焚いてください。
欧州では、売る側に「乾いた薪」を求めています
樹種を選ぶのと同じくらい大切なのが乾燥です。イングランドでは2021年5月から、家庭用の薪を2立方メートル未満の単位で売る場合、含水率20%以下と認証された「Ready to Burn」の薪でなければ販売できなくなりました。2立方メートル以上をまとめて売る場合も、乾かし方と含水率の確かめ方を記した案内を買い手に渡すことが求められています。家庭の燃焼による大気汚染を減らすための規則です。
薪の品質を等級で表す国際規格もあります。ISO 17225-5は、薪ストーブや暖炉、調理用ストーブ、薪を使うサウナストーブなどで使う薪を対象に、原料、含水率、長さ、太さで等級を定めています。最上級のA1では、原料が幹の部分の木材と、化学処理をしていない製材の端材に限られます。長さも30cm、40cm、50cmといった区分で表示されます。どんな木を薪にしてよいかという考え方が、規格の中にも組み込まれています。
米国のEPAも、薪は含水率20%未満でよく燃えるとして、水分計で確かめてから焚くことを勧めています。ジョージア大学の記事によれば、伐ったばかりの木は重さの40〜50%が水です。この水を飛ばすために、薪の熱の多くが使われてしまいます。岩手の気候では、割って風通しのよい場所に積み、ナラやクヌギなら1年半から2年乾かすのが目安です。
当社では、乾燥させた広葉樹の薪の販売と配達も行っています。樹種の選び方や、ご自分で集めた木が焚けるかどうかで迷われたときは、どうぞお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q. 果樹の木(りんご・さくらんぼ等)は薪に使えますか。
広葉樹ですので薪として使えます。燃やすとよい香りがするため、スモーク料理に使う方もいます。ただし量が少ないので、主燃料より副燃料として使うのが現実的です。
Q. 建材の廃材や合板は燃やせますか。
絶対に避けてください。防腐剤・接着剤・塗料が含まれていて、燃焼時に有害なガスが出ます。煙突も傷めます。
Q. 薪の含水率はどうやって確認しますか。
含水率計(水分計)で測れます。2,000〜5,000円ほどで市販されていて、薪の断面に針を刺すだけで数値が出ます。乾燥状態を確認したい方にはおすすめです。
参考:比重と熱量は当サイト「薪の科学」の表、針葉樹とクレオソート、伐採直後の含水量はジョージア大学 CAES Field Report(2010年)(英語)、燃やしてはいけない物と含水率はEPA Burn Wise(英語)、CCA処理木材はアイオワ州天然資源局(英語)、ウルシ類の煙はNIOSH(英語)、イングランドの規則はWoodsure(英語)、ISO 17225-5はカナダ天然資源省の資料(英語)による。地域や気候によって、適した樹種や乾燥期間は異なります。

