2013年の2月、ノルウェーの国営放送NRKが一本の番組を流しました。暖炉で薪が燃え続ける様子をカメラで映し、それを12時間そのまま放送する。ナレーションも解説もなく、薪がはぜる音と炎だけが続きます。

この番組を見た人が100万人を超えました。当時のノルウェーの人口は約500万人ですから、5人に1人が画面を見ていた計算になります。放送中には、局に抗議の電話が殺到しました。理由は「薪の積み方が間違っている」。樹皮を上に向けて積むか、下に向けて積むか。そこで意見が割れたのです。
薪の積み方に、視聴者が電話をかけてくる。それがノルウェーという国です。
一冊の本が、番組を生んだ
きっかけは、2011年に出たラルス・ミュッティングという作家の本でした。原題は『Hel ved』。薪の割り方、樹種ごとの燃え方の違い、薪棚の組み方、乾き具合の見分け方。それだけを書いた本です。ノルウェーで版を重ね、英語版が『Norwegian Wood』の題で出て、日本語にも『薪を焚く』として訳されています。
薪という、どこにでもある道具の話が、これだけの分量で売れる。それ自体が、ノルウェーにとって薪がどんな位置にあるかを示しています。12時間の番組は、この本の売れ行きを受けて作られました。薪の話を読みたい人がいて、薪が燃える映像を12時間見たい人もいる。日本ではなかなか想像しにくい光景です。
薪積みが、競技になっている
ノルウェーには vedstapling(ヴェドスタプリング)という言葉があります。薪積みのことです。ただ積むのではなく、木口の向きや色の組み合わせで模様をつくる。円形、渦巻き、動物の顔。各地でコンテストが開かれています。薪棚をわざわざ道路側に向けて建てるのは、通る人に見せるためだという話も聞きます。
乾かすための作業が、時間をかけるうちに見せるための場になっていく。ノルウェーでは百万を超える世帯が薪ストーブや暖炉を持っています。春に薪を仕入れ、夏のあいだ乾かし、秋から燃やす。この段取りが暮らしに組み込まれている土台があって、はじめて積み方が競われるようになります。
電気があっても、燃やし続ける
ノルウェーは水力発電の国で、電気は日本より安く手に入ります。それでも薪を焚く家が減りません。停電への備えという理由もありますが、それだけではないと思います。ストーブの前に座って、炎の動きを眺める。効率とは関係のない時間です。
12時間の番組に100万人が集まったのは、そういうことだったのだと思います。画面越しでも、燃える炎を前にすると人は何かを感じる。火は、それだけ長い時間をかけて人間の暮らしに根を張っています。
岩手でも、やっていることは同じです
東北の冬は長く、寒い。薪ストーブは暖房の道具ですが、それだけで終わりません。薪を割り、積み、火をつける。うまく燃え始めたときに、しばらく炎を見ている時間があります。ノルウェーの人たちが何百年も続けてきたことと、中身は変わりません。
「冬が好きな季節になった」とおっしゃるお客様がいます。入れる前は、冬は寒くて耐えるものだった。それが薪の準備をする秋も、火を眺める夜も、楽しみに変わったと言うのです。
当社は暖房性能だけで薪ストーブを選んでいません。ストーブの前に座る時間が、その家の冬をどう変えるかを考えて選びます。盛岡のショールームには、火の入ったストーブがあります。一度、座りに来てください。ご相談は無料です。
よくあるご質問
Q. ノルウェーの薪ストーブは日本で買えますか。
ヨツール(JØTUL)が代表格です。1853年創業のノルウェーのメーカーで、鋳鉄のつくりが特徴です。D'STYLEは岩手県の正規代理店として20機種を扱っています。ドブレ(Dovre)もノルウェー生まれで、こちらも取り扱いがあります。
Q. 薪はいつから準備すればいいですか。
ノルウェーと同じで、春に仕入れて夏のあいだに乾かすのが基本です。含水率20%以下が目安で、生木からだと一年以上かかります。今年の冬にすぐ使いたい場合は、乾燥済みの薪を手に入れるのが確実です。当社でも乾燥薪をお届けしています。
Q. 樹皮は上と下、どちらに向けて積むのが正しいですか。
ノルウェーで電話が殺到したのが、この話です。雨の当たる屋外なら樹皮を上にして水を弾かせる、屋根のある薪棚なら下に向けて木口から乾かす、という考え方があります。雪が積もる岩手では、向きより先に、屋根を掛けて風が通る場所に積むことのほうが効きます。
※本記事はノルウェーの薪文化の紹介です。放送の視聴者数は欧州の複数の報道によります。

