「薪ストーブって、どう選べばいいんですか」

ショールームでいちばん多い質問です。世界中のブランドを扱っている店として、正直にお答えします。
カタログの「対応畳数」は、岩手ではあてにならない
これはまず知っておいてほしいんですが、カタログに書いてある対応畳数は、多くが本州の温暖地基準です。岩手の一月、氷点下の朝にその数字どおり働いてくれると思っていると、だいたい裏切られます。
「なぜ裏切られるのか」を、もう少しきちんと説明させてください。実は、まったく同じ理屈が、エアコンの世界にもあります。
岩手は、思っているより北海道に近い
「岩手と北海道、そんなに変わらないでしょう」と言われることがありますが、これは体感の話ではなく、国が定めた基準にも表れています。
建築物省エネ法には、地域ごとの寒さのレベルを分ける「地域区分」という制度があります。数字が小さいほど寒い地域です。この区分でいうと、東京23区は6地域、盛岡市は3地域。そして八幡平市の旧安代町にいたっては、札幌市と同じ2地域です。
つまり、盛岡でさえ東京よりだいぶ寒い区分に入っていて、県内の一部は札幌と肩を並べています。これは感覚の話ではなく、国が建物の断熱基準を決めるために引いた、公的な線引きです。
ここを押さえておくと、なぜ「畳数」という表示が岩手で機能しないのか、理屈で分かります。
畳数表示は、ある一つの気温を前提に作られている
暖房器具の「何畳用」という表示は、たいてい特定の外気温・室温を前提にした計算です。エアコンでいえば、外気温が2℃前後のときの能力を基準にしていることが多い。薪ストーブのカタログも同じで、本州の平均的な冬の寒さを想定して、対応面積が書かれています。
ところが、外の気温が下がれば下がるほど、家から逃げていく熱の量は増えます。室内と室外の温度差が大きいほど、壁や窓から熱がどんどん奪われるからです。
ためしに計算してみます。室温を20℃に保つとして、外気温2℃なら温度差は18℃。外気温マイナス15℃なら温度差は35℃。後者は前者のおよそ二倍です。
つまり、盛岡や八幡平の真冬の朝は、カタログが前提にしている気温よりずっと外が冷たく、家の中から逃げていく熱の量も、単純計算で二倍近くになる。「何畳用」と書かれた数字の余力は、実際にはそこまで残っていないということです。
エアコンの世界では、この理由から寒冷地仕様という区分があり、カタログにもマイナス15℃時の能力という、より厳しい条件での数字が別途載っています。薪ストーブのカタログには、そこまで細かい表示はほとんどありません。その隙間は、私たちのような施工店が埋めるしかありません。

効いてくるのは、畳数より三つの条件
畳数の数字を鵜呑みにするより、実際に効いてくるのは家の断熱と、天井の高さと、間取りです。
同じ三十坪でも、吹き抜けのある家と細かく仕切られた家とでは、必要な火力がまるで違う。断熱がしっかりした新しい家と、昔ながらの家とでも変わります。だからうちは、現地を見てから機種の話をします。先に機種を決めてしまうと、たいてい後で困るんです。
関東と岩手、同じ相談でも答えが変わる
分かりやすい例を挙げます。仮に「三十畳のリビングに、しっかり暖まるストーブを」というご相談だとして、これが関東と岩手では答えが変わります。
関東の平野部であれば、カタログの畳数表示にある程度沿って選んでも、大きく外すことは少ないです。冬でも氷点下まで下がる日はそう多くありません。
一方、岩手、とくに盛岡から北、八幡平や雫石、西和賀のような地域では、カタログの畳数表示より一段階、余力のある機種を選ぶことをお勧めしています。氷点下十度、雫石であれば時に氷点下二十度に迫る朝がある土地です。表示の畳数ぎりぎりの機種を選んでしまうと、いちばん寒い朝に、いちばん頼りたい火力が出ない、ということが起こり得ます。
逆に、盛岡市内でも比較的新しく高断熱の家であれば、無理に大きな機種を選ぶ必要はありません。ここは「岩手だから大は小を兼ねる」という単純な話ではなく、家の断熱性能とセットで考えるべきところです。
実際にあった現場の話を、3〜5行で。
・同じくらいの坪数で、機種選定が分かれた実例(新しい高断熱の家 vs 昔ながらの家、など)
・逆に「畳数表示どおりで選んで、後から力不足だった」という相談を受けた実例があれば
※なくても記事は成立します。あれば層4がもう一段強くなります。
鋳物か、鋼板か、それとも石か
薪ストーブの本体は大きく分けて、鋳物(鋳鉄)と鋼板です。鋳物はあたたまるのに時間がかかるぶん、火が消えたあとも長く暖かさを放ちます。ヨツールやドブレがこれです。鋼板は立ち上がりが早くて反応がいい。どっちが上という話ではなくて、暮らし方に合わせて選ぶものです。
一日中家に人がいて、火を絶やさない暮らしなら鋳物。共働きで帰宅後にサッと暖めたいなら、立ち上がりの早さも大事。ここも、暮らしを聞かせてもらえれば一緒に決められます。
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鋳物の中にも、推しがいます。国産のAGNI(アグニ)です。表面積が大きくとられているので、同じサイズのストーブと並べると、ひとまわり大きな暖かさに感じる。毎日火を焚いている私の体感です。
うちのいちばんの推しは、「石」のストーブ
もうひとつ、これは覚えて帰ってほしいんですが、石です。ソープストーンという蓄熱性の高い天然石をまとったストーブは、遠赤外線がとにかく強い。日なたに当たったときみたいに、芯から温まります。
そして、あのまろやかさ。角のない、じんわり続く暖かさは、石のストーブでないと出ません。火を落としたあとも、石が長く熱を放ちつづける。「とにかく暖かいストーブがほしい」という方には、ソープストーンのハースストーンがぴったりだと思います。
寒冷地ほど、この「火を落としたあとも暖かい」という性質がありがたく感じられます。朝いちばんに火を起こすまでの、いちばん冷え込む時間を、前の晩の熱がまだ支えてくれているからです。
ストーブ選びって、
半分くらいは煙突選びなんです。
本体より、煙突の話をさせてください
薪ストーブの性能と安全は、煙突で決まります。安い煙突でケチると、ドラフト(上昇気流)が弱くて燃えない、結露する、掃除が大変、と後悔が続きます。逆に、煙突計画がきちんとしていれば、ストーブは気持ちよく燃えてくれます。
私は煙突掃除人でもあるので、施工の良し悪しが十年後にどう出るかを、嫌というほど見てきました。だからうちは、壁の裏側まで美しい施工にこだわります。
そして、これも寒冷地ならではの話ですが、外気温が低いほど、煙突内部で結露が起きやすくなります。断熱の入っていない煙突を、寒い岩手で使うと、この結露とタールの問題が本州以上に出やすい。畳数と同じで、煙突も「岩手仕様」で考える必要があります。

岩手なら、針葉樹が燃やせるかも見る
岩手は杉の間伐材が豊富な県です。一般的な鋳鉄ストーブは針葉樹が苦手ですが、国産のAGNI(アグニ)のように針葉樹をクリーンに燃やせる設計のものもあります。地元の木を燃料にできるのは、コストの面でも森の面でも理にかなっています。
よくある質問
Q. 結局、何畳用を選べばいいですか
畳数だけでは決められません。断熱、天井高、間取り、そしてどの地域にお住まいか。八幡平や雫石であれば、カタログ表示より一段階余力のある機種をお勧めすることが多いです。まずは現地を見せてください。
Q. 大は小を兼ねる、で大きい機種を選んでもいいですか
オーバーサイズにも欠点があります。焚きはじめから室温が上がりすぎたり、燃焼が不安定になったりします。適正なサイズを、余力を持って選ぶのが正解です。「とりあえず大きいの」は、実は失敗のもとです。
Q. 鋳物と鋼板、結局どちらが岩手向きですか
どちらも岩手で使われています。一日中家にいて火を絶やさない暮らしなら鋳物、朝晩だけ集中的に焚きたいなら鋼板が向くことが多いです。暮らし方次第です。
Q. 石のストーブは、本当にそんなに違いますか
熱の質が違います。遠赤外線の割合が高く、空気そのものより体や壁を直接温める感覚に近い。火を落としたあとの余熱の長さも、鋳物や鋼板とは別物です。ショールームで実際に手をかざしてみてください。
最後は、火を見て決めてください
さんざん理屈を並べておいて何ですが、最後の決め手は、たぶん理屈じゃないんです。ショールームで実際に火の入ったストーブを見て、「これだ」と思った一台が、たいてい正解です。うちには、いつも火が入っています。見に来てください。
岩手・盛岡で薪ストーブ・ペレットストーブをお考えの方は、ハースストーン・バーモントキャスティングス正規代理店のD'STYLEへ。煙突の計画から設置工事まで、おすすめの一台をご提案します。どうぞお気軽にご相談ください。
写真: Kotivalo (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



