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雪の見える窓辺で薪ストーブの火が灯るリビング
YOMIMONO / 冬と火の話

冬が好きになる話。
光と音と、火のある暮らし

文・橋本大治(D'STYLE 代表)|読了目安 12分

公開日:2023年8月8日 / 最終更新日:2026年9月27日

盛岡で、サウナと薪ストーブの仕事をやっています。ディースタイルの橋本です。私は、長くて暗くて、朝は雪かきから始まる、岩手の冬が大好きです。

薪ストーブ屋だからでしょう、と笑われることもあります。確かに、そう思われても仕方がない。でも実を言うと、冬が好きで、それでこの仕事に就きました。

この記事は、冬が好きになるまでの話と、冬を味わうための話です。光のこと、音のこと、巣ごもりの文化のこと、サウナの入り方のこと。長くなりますが、つきあってください。

冬が好きになるまでの話

祖父は、住田町の山主でした。若い頃は樺太まで渡って林業をやって、伐った丸太を二週間かけて川に流して運んだ、なんて話を、子どもの頃に何度も聞かされました。とにかく、そういう人でした。

帰ってきてからは、自分の山を手入れして、薪を作って売ったり、果樹園をやったりしていました。父も好きで、造園屋をやりながら薪を売っていた。そして、私で三代目ということになります。そういうわけで、我が家にはいつも薪の火がありました。ありがたいとも、特別とも思いませんでした。むしろ私は、幼い頃、薪づくりが面倒で嫌でした(笑)。

いちばん覚えているのは、小学生の頃の、玄関の暖かさです。学校から、腰まである雪をこぎながら歩いて帰る。足の感覚もなくなった頃に、ようやく家に着く。玄関を開けると、一気に薪ストーブの暖かさが、体を包んでくれる。特に、顔がぶわっと火照ったのを、今でも覚えています。そのままストーブの前に座り込んで、濡れたジャンパーや靴下を乾かしながら、パチパチいう音を、ただただ聞いている。あの時間が、子どもながらに、一年でいちばん好きでした。

寒い土地に生まれた火は、
暖かい土地の火とは、少し意味がちがう気がします。

ことわっておくと、エアコンや灯油ストーブを悪く言う気はありません。速いし、楽だし、うちにも普通にあります。ただ、ひとつだけ違うことがある。薪火の前には、人が集まるんです。「大きな炎は人を遠ざけ、小さな炎は人を集める」と、私は思っています。薪ストーブの前には、気づくと誰かがいて、犬もいて、猫もいる。天板では、鍋ややかんがコトコトいっている。暖房というより、家の真ん中で小さな焚き火をしているような感じです。

薪ストーブを入れたお客さんが、口を揃えて言うことがあります。「冬が来るのが、楽しみになった」。薪を割って、積んで、火を入れて、燃えるのをぼんやり見る。面倒です。はっきり言って、面倒です。私も、子どもの頃は得意じゃなかった。でも今は、その面倒くささごと、冬が自分の手のなかに入ってくる感覚が、好きです。

冬の光の話

冬の太陽は低い。だから、部屋の奥まで光が届きます。夏は窓の手前で止まっていた光が、冬になると床を横切って、壁の向こうまで伸びていく。地軸が23.4度傾いているおかげで、北国の冬には「家の中を歩く光」がある。それだけで、部屋の空気がすこし変わります。

雪が積もると、外がレフ板になる。曇りの日でも部屋の中がふわっと明るいのは、雪が光を反射して、窓から返しているからです。東北の人間は、冬は暗いと思い込みがちですが、雪国には雪国の明るさがある。でも書きましたが、冬の昼の光は、体をゆるめる力があります。

午後4時ごろ、太陽が沈みかける時間が好きです。空が茜色に染まって、雪面がオレンジになる。あの時間は15分くらいしか続かない。短いから、毎日見ても飽きません。そして日が暮れたら、火の出番です。月見の話にも書きましたが、暗くなってからの時間に、火は居場所をつくってくれる。太陽が沈んだあとの暮らしを、薪ストーブが引き受けてくれます。

冬の音の話

雪には音があります。踏んだときの音の高さで、おおよその気温がわかる。マイナス5度より冷えると、キュッキュッと高い音がする。それより暖かいと、ギュッギュッと鈍い。雪の結晶が壊れるときの摩擦音が、気温で変わるからです。

「しんしん」という言葉があります。雪が降るときの擬音として使われますが、実際に聞こえているのは、雪が音を吸っているほうの静けさです。新雪の表面は空気をたくさん含んでいて、それが吸音材のように働く。だから雪が積もった朝は、世界がひとまわり静かになる。あれは雪の音ではなく、雪がつくる沈黙の音です。

夜中に、ピシッと何かが割れるような音がすることがあります。氷が膨張して裂ける音です。屋根の雪がズズッと動く音は、落雪の前兆なので気をつけてください。冬の嵐の話でも触れましたが、寒い空気は音をよく通す。遠くの除雪車の音が、妙にはっきり聞こえる夜がある。

そして、薪が爆ぜる音。パチッ、パチパチッ。あれは薪の中の水分が沸騰して、繊維を押し破る音です。乾燥の甘い薪はバンッと大きな音がするし、よく乾いた薪はチリチリと細かい音になる。どちらも好きです。

冬ごもりの話

動物は、冬に無理をしません。熊は穴にこもる。栗鼠は秋のうちに蓄える。人間だけが、冬も夏と同じペースで動こうとする。

北欧に「ヒュッゲ」という言葉があります。キャンドルを灯して、毛布にくるまって、温かい飲み物を手に持つ。あの感覚です。デンマークの人たちは、暗くて長い冬を「耐えるもの」としてではなく、「味わうもの」として組み立てた。居心地のいい巣をつくることが、冬の仕事だという考え方です。

日本にも、同じ知恵はあります。囲炉裏端に座って、干し柿を食べながら藁仕事をする。こたつに足を入れて、みかんの皮をむく。春に向けて味噌を仕込む。冬ごもりの時間は、ただ寒さをやり過ごすためのものではなくて、手を動かしながら、春の準備をする時間でした。

いい巣には、火がいります。薪ストーブでも、ペレットストーブでも、サウナでも。体の芯まで温まる場所がひとつあれば、冬の巣は完成します。雪解けの話にも書きましたが、冬をちゃんと過ごした人の春は、格別です。

冬のサウナの入り方

冬のサウナは、夏とすこし手順がちがいます。気温が低い分、体が冷えやすい。いくつか、気をつけていることを書きます。

まず、脱衣室を暖めておくこと。サウナ室だけ熱くても、脱衣室が寒いと、出入りのたびに体が冷える。小さなヒーターでいいので、脱衣室の温度を20度くらいに保つと、体への負担がぐっと減ります。適温の話でも書きましたが、温度差の管理が、サウナの快適さを決めます。

最初のセットは、いつもより長めに。体の芯が温まるまでに、夏より時間がかかります。表面だけ温まって出ると、水風呂で一気に冷えてしまう。じっくり座って、額に汗が浮くまで待つ。かけ湯の話で触れたように、サウナ室に入る前にかけ湯をするのも、冬は特に大事です。

水風呂は、短めに。冬の水道水は夏よりずっと冷たい。盛岡だと、冬場は10度を切ることもあります。夏と同じ時間つかると、冷えすぎます。30秒から1分を目安に。白湯の話でも書きましたが、サウナのあとの水分補給は、冬こそ意識してください。

外気浴は、格別です。雪が降っているなかで椅子に座ると、体から湯気が立ちのぼる。あの瞬間のために冬のサウナに入っている、と言ってもいい。ただし長居は禁物です。気温がマイナスの日は、3分もすれば指先が冷たくなります。椅子の話でも触れましたが、体が冷え切る前に中に戻ること。室内サウナなら、外気浴の代わりに窓を開けて冷気を入れるだけでも十分です。

最後のセットのあとは、しっかり体を拭いて、暖かい服を着てから外に出る。星の話にも書きましたが、冬のサウナ上がりに見る星空は、本当にきれいです。雪かきの話でも触れたとおり、冬の体を動かす順番は大事で、サウナも同じです。冷やしたまま終わらせない。温かい状態で、一日を締めくくる。

あなたの冬を、人生で一番好きな季節にしたい。

冬が好きだと言うと、変わってるね、と返されることがあります。岩手に住んでいれば、なおさらです。雪かきは重いし、水道は凍るし、灯油代はかさむ。わかっています。

それでも、低い太陽が部屋の奥まで届く午後の光、雪がつくる深い静けさ、薪が爆ぜるチリチリという音、サウナ上がりに雪のなかで湯気を立てる瞬間。冬にしかないものが、こんなにある。

うちのショールームでは、薪ストーブに実際に火を入れています。カタログの写真をどれだけ眺めても、暖かさだけは、どうやっても伝わらないので。雪の日に、火にあたりに来るだけでもいい。火の前で、岩手の冬の話でもしましょう。薪のこと、煙突のこと、サウナのこと。聞きたいことがあれば、なんでも。

「あなたの冬を、人生で一番好きな季節にしたい。」これが、うちの仕事です。

岩手・盛岡で薪ストーブ・ペレットストーブをお考えの方は、ハースストーン・バーモントキャスティングス正規代理店のD'STYLEへ。煙突の計画から設置工事まで、おすすめの一台をご提案します。どうぞお気軽にご相談ください。

写真: AleWi (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)

D'STYLE
橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)

住田町の山主だった祖父から三代、火と生きてきました。英国RODTECH社認定の煙突掃除 安全インストラクター(東北第一号)。盛岡・国道4号線沿いのショールームにいます。

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