薪ストーブを始めた方から、そっと寄せられるご相談があります。「薪に、虫がいるんですけど」。わかります。樹皮をめくったら白い幼虫、割ったら小さな穴の迷路。今日はその虫たちとの付き合い方の話です。先に安心を一つ。薪の虫は、家を食べにきた敵ではありません。
薪の虫の、正体を知る
薪でよく会うのは、カミキリムシの幼虫(通称テッポウムシ)、キクイムシの仲間、樹皮の下で冬を越すダンゴムシやクモ、ときにアリたちです。彼らは伐られた木や弱った木を食べて土に還す、森の分解係。森のなかで倒木が静かに土へ戻っていくのは、この虫たちの働きのおかげです。虫がいるのはむしろ、農薬にも防腐剤にも汚れていない、生きた森から来た薪の証拠。ちなみに虫食いの穴が多い薪も、火力そのものは立派なものです。よく燃えて、暖かい。
家の柱に、引っ越さない理由
いちばん気になるのは、「この虫が家の柱を食べ始めるのでは」という点だと思います。ここは、はっきり安心してください。薪に来る虫たちの住まいは「まだ湿り気の残る、樹皮つきの丸太」であって、しっかり乾いて削られた建材の柱ではありません。すみかにする木の状態が、そもそも違うのです。家をむしばむシロアリが好むのは、地面に近く湿った木。屋内に運び込む乾いた薪とは、条件が正反対です。薪の虫が建材に移り住んで食い荒らす、という展開は基本的に心配無用。彼らはあくまで、森の丸太の住人です。
家に入れる前の、ひと呼吸ルール
それでも、家の中で虫にこんにちはされたくはありません。実用のルールは三つ。一つ、薪は使う分だけ、焚く当日に運び込む。室内で何日も寝かせると、暖かさで虫が春と勘違いして起きてきます。二つ、運ぶ前にコンコンと打ち付けて、樹皮の隙間の住人にお引き取りいただく。気になる樹皮ははがしてしまってもいい。三つ、室内ストッカーは床を汚さないトレー付きにして、ときどき空にして掃除する。この三つで、同居トラブルはほぼ起きません。軍手を一双、薪棚の脇に掛けておくと、この作業がおっくうでなくなります。
薪棚は、風通しが虫よけになる
薪棚側の予防もあります。地面に直置きせず、床を上げて風を通す。これは乾燥のためでもあり(含水率の話)、湿った木を好む虫たちにとって居心地を悪くする効果もあります。よく乾いた薪は、虫にとって魅力の少ない住まいです。乾かすほど、燃えも良くなり、虫も減る。薪づくりの基本は、そのまま虫対策の基本でもあるのです。日当たりと風通しは、薪にとっても人にとっても気持ちがいい。
薪棚は、小さな生き物の宿でもある
薪棚をのぞくと、実にいろいろな生き物に出会います。樹皮の裏で丸くなるダンゴムシ、巣を張るクモ、越冬するてんとう虫。少しぎょっとしますが、彼らの多くは、庭の小さな虫を食べてくれる頼もしい隣人です。とりわけクモは、蚊やコバエを捕らえる働き者。薪棚は、そうした生き物にとって、雨風をしのぐ格好の宿なのです。火のある暮らしは、薪という森のかけらを家の軒先に置くことで、季節ごとの生き物とも自然に付き合う暮らしになります。虫が得意でなくても、少しだけ見方を変えてみてください。薪棚のにぎわいは、その庭が生きている証し。生き物の気配ごと季節を感じられるのも、田舎の火の暮らしの、ささやかな役得です。
薪の悩みは、まるごとどうぞ
岩手・盛岡のD'STYLEは、薪ストーブの設置だけでなく、薪の調達・保管・虫の相談まで、火のある暮らしの実務をまるごとお手伝いしています。薪棚の写真を持って、店へどうぞ。
写真: Mogens Engelund (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



