「薪ストーブって、寝るときはどうするんですか?消すんですか?」。設置前のお客様から、必ずいただく質問です。もっともな疑問です。今日は、薪ストーブの家の「夜じまい」の話。毎晩の小さな作法を身につければ、薪ストーブは安心して眠れる暖房です。むしろ、この作法の時間そのものが、一日の締めくくりの静かな儀式として、なかなかいいものなのです。

薪の火は、消さずに「畳む」
まず、大前提から。薪ストーブの火は、水をかけて消したりしません。寝る前にやるのは、消火ではなく、火を穏やかに畳むことです。扉を閉め、空気の量を絞って、燃焼をゆっくりにする。密閉された鋳鉄や鋼板の炉の中で、薪は静かに熾火になり、朝まで灰の下で眠ります。ナラやクリのような密度の高い広葉樹の薪を、太めのまま一本入れて空気を絞れば、熾火は長持ちし、朝の火起こしがぐっと楽になる。正しく設置され、正しく使われている炉内の火は、閉じ込められた安全な火です。扉を閉めておけば、煙突の上向きの引き(ドラフト)が煙と燃えかすを外へ運び、火の粉が部屋へ飛び出すこともありません。これが、たき火やこたつの火とのいちばんの違いです。(朝の火起こしの話は、こちら。)
寝る前の、指差し確認
そのうえで、毎晩の確認事項を型にしましょう。一、扉とハンドルはきちんと閉まっているか。二、空気調整は就寝の位置か。三、ストーブとその周り一メートルに、燃えるものを置いていないか。乾かしていた洗濯物、脱いだ上着、新聞紙。夜じまいの前に、必ず遠ざける。四、灰の始末をした日は、灰バケツが屋外の安全な場所にあるか。かき出した灰の中の熾火は、半日以上も熱を持ち続けます。金属バケツ、ふた付き、屋外の不燃物の上。この三点だけは、絶対です。(灰の扱いは、こちら。)
備えの道具も、忘れずに
そして、使わないことを祈りながら備えるものたち。住宅用火災警報器は、消防法の改正で、新築住宅は二〇〇六年から、既存の住宅も二〇一一年ごろまでに、全国で設置が義務づけられました。ストーブの部屋と寝室、両方にあると安心です。無色無臭で気づきにくい一酸化炭素を知らせる警報器も、薪ストーブの家には心強い備え。消火器を一本、台所とは別に、ストーブの部屋の出入口近くへ。いざというとき、火に近づかず手に取れる場所が肝心です。そして年に一度の煙突掃除は、煙突内にたまったクレオソート(タール状のすす)の発火を防ぐ、いちばん確実な夜の安心です。道具と点検が揃っていれば、薪ストーブの火災リスクは、きちんと管理できるリスクになります。(煙道火災の話は、こちら。)
火の始末は、一日の締めの儀式
夜じまいの所作は、慣れれば二分です。空気を絞り、扉を確かめ、部屋を見回して、明かりを消す。オレンジ色の熾火だけが残った部屋に「おやすみ」を言って寝室へ向かう時間は、戸締まりと同じ、暮らしの節目の儀式になります。日本では古くから、囲炉裏やかまどの火の始末を、親が子に厳しく教えてきました。夜回りが「火の用心、マッチ一本火事のもと」と拍子木を打って歩いた記憶も、そう遠い昔ではありません。火の用心は、火と暮らす者の礼儀。この静かな一手間ごと、薪ストーブの暮らしの豊かさだと、私たちは思っています。
安心ごと、設置します
岩手・盛岡のD'STYLEは、ハースストーンやバーモントキャスティングスの薪ストーブの設置で、安全距離や炉台の計画から夜じまいの作法まで、まるごとお渡ししています。不安は、知識で解けます。どうぞ何でも聞きにいらしてください。
写真: cogdogblog (Wikimedia Commons, CC BY 2.0)



