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円筒かご型のサウナヒーターに積まれたサウナストーン
YOMIMONO / 火のある暮らしの話 #40

サウナの突然の休業を防ぐ。
故障と目詰まりの予防設計

文・橋本大治(D'STYLE 代表)|法人・サウナ施設オーナー様向け

サウナ施設の運営で避けたいのが、ストーブや水風呂用チラーの故障による突然の営業停止です。弊社でも突然呼ばれることがありますし、夜中の工事や早朝の工事が入ります。施設さんにとって営業できなくなるのは死活問題です。弊社も緊急で対応しております。

症状としては、ストーブが温まらない、水風呂が冷えない、制御盤にエラーが表示される。こうした不具合が営業直前や繁忙日に発生すると、予約のキャンセル、売上機会の損失、利用者への連絡対応が必要になります。

一度の故障だけで施設の評価が大きく下がるとは限りません。しかし、設備トラブルが繰り返されれば、「行っても利用できないかもしれない」という不安を利用者に与え、施設への信頼を少しずつ失う原因になります。

設備の故障を完全にゼロにすることはできません。一方で、次の点を計画段階から整えることで、突然の停止リスクを減らし、不具合が起きた際の復旧を早めることはできます。

今回は、サウナ室の設計・施工を行うD'STYLE/KUUTA saunaが、設備トラブルによる休業を防ぐために重要な設計と運用の考え方を解説します。

サウナ設備の故障原因は、機器のまわりにもある

ストーブやチラーが停止すると、最初に機械本体の故障を疑う方が多くいます。しかし、実際には機器だけでなく、その周辺条件が影響している場合があります。

例えば、電気サウナストーブでは次のような条件が重なると、ヒーターエレメントや安全装置へ負担がかかります。

水風呂用チラーでも同様です。チラー本体が正常でも、ストレーナーやフィルターが詰まり、水の流量が不足すれば、流量異常や冷却能力低下が起こります。

設備を安定して運転するには、機器本体だけでなく、建物、配管、換気、清掃、点検までを一つのシステムとして考える必要があります。ストーンの積み方や点検の考え方はサウナヒーターの寿命は、石で決まります。でも詳しく書きました。

ストーブの停止・断線リスクを減らす5つのポイント

1.サウナ室に合ったストーブ能力を選ぶ

電気サウナストーブは、大きければ大きいほどよいわけではありません。室内容積に対して能力が不足すると、設定温度へ到達するまで長時間にわたって連続運転することになり、ヒーターエレメントへの負担が増えます。

反対に、能力が大きすぎると、サウナ室の空気だけが先に温まり、サウナストーンに十分な熱が蓄えられる前に制御が停止することがあります。その結果、室温は高いのにロウリュの水が十分に蒸発しない、石の間を水が通り抜ける、といった状態が起こりやすくなります。

Harviaも、ストーブ能力が小さすぎる場合はヒーターエレメントが長時間稼働して摩耗しやすくなり、大きすぎる場合はストーンに十分な熱を蓄えにくくなると説明しています。ストーブ選定では、次の条件を確認します。

D'STYLE/KUUTA saunaでは、ストーブ本体を先に決めるのではなく、サウナ室の図面と使用条件から必要能力を算定します。

2.サウナストーンを正しく選び、積み方に気をつける

ヒーターエレメントの寿命に影響する重要な要素が、サウナストーンです。石を隙間なく詰め込むと、ストーブ内部を通る空気が減り、ヒーターエレメント周辺に熱がこもりやすくなります。

また、重い石をエレメントへ直接押し付けたり、石の間へエレメントを挟み込んだりすると、熱による変形や物理的な負担につながります。Harviaは、石をエレメントの間へ強く押し込まず、石同士で支えながら、空気が流れるように積むことを案内しています。適合しない石、劣化した石、密に詰められた石は、エレメントの寿命やストーブの加熱性能へ影響します。

定期的な積み直しが必要

サウナストーンは、高温と冷却を繰り返すことで少しずつ劣化します。割れた石や細かく崩れた破片がストーブ内部へたまると、空気の流れを妨げます。

Harviaは、家庭用でも少なくとも年1回を目安に石を積み直し、使用頻度が高い場合は、さらに短い間隔で確認するよう案内しています。施設用サウナでは、稼働状況に合わせた点検頻度が必要です。点検時には、次の内容を確認します。

石は消耗品です。割れた石だけを補充し続けるのではなく、定期的に全体を取り出して状態を確認する必要があります。ストーンの点検時期の目安はヒーターのメンテナンス記事に、既設サウナの不具合対応はサウナ修理ローンにまとめています。

3.ストーンが温まってからロウリュを行う

ロウリュは、十分に熱を蓄えたサウナストーンへ適量の水をかけ、蒸気を発生させるものです。ストーンがまだ温まっていない状態で大量の水をかけると、水が十分に蒸発せず、ストーブ内部へ流れ込みやすくなります。

大量の水を繰り返しかけなければ体感温度が上がらない場合は、次の原因が考えられます。

Harviaも、サウナが十分に温まってから入室し、ストーンへ水をかけるよう案内しています。温度不足を補うために大量の水を使用すると、機器寿命を縮める可能性があると説明しています。

施設では、お客様が自由にロウリュできる方式であっても、次の情報を分かりやすく掲示することが重要です。

オートロウリュを採用する場合も、噴射量と間隔をストーブ能力、ストーン量、利用人数に合わせて設定します。

4.ストーブ囲いで空気の流れを妨げない

サウナストーブの周囲には、安全のためのストーブガードを設けることがあります。ただし、木材で周囲を密閉するように囲ったり、ベンチや壁との隙間を必要以上に狭くしたりすると、ストーブ内部と周辺の空気が流れにくくなる可能性があります。

デザインを優先してメーカー指定の離隔距離を削ることはできません。ストーブ周辺では、次の条件を確認します。

ストーブガードは、安全性とデザインの両方を考えながら、機器の放熱と対流を妨げない形で設計します。KUUTA saunaでは、ストーブを完成後に置くのではなく、ベンチ、ガード、壁、換気口との位置関係を設計段階から検討します。

5.給気・排気と温度センサーを機種に合わせて設計する

サウナ室の換気は、いくつもの役割を担っています。

ただし、吸気口と排気口の位置は、すべてのサウナで同じではありません。電気ストーブか薪ストーブか、自然換気か機械換気かによって推奨位置が異なります。

例えばHarviaの案内では、電気ストーブを使用する自然換気の場合、給気口はストーブの下または近く、排気口はストーブから離れた床付近に設ける方法が示されています。一方、機械換気では給気位置が上部になる場合があり、温度センサーへ冷気が直接当たらないようにする必要があります。

温度センサーの位置が不適切だと、次の問題が起こる可能性があります。

Harviaも、温度センサーの誤った設置は、過熱、加熱不足、製品の早期摩耗につながる可能性があると説明しています。KUUTA saunaでは、採用するストーブの施工説明書を確認し、建築側の換気設備と連携しながら給気・排気・センサー位置を決定します。

水風呂用チラーの目詰まりを防ぐ設計

水風呂には、見えない汚れが持ち込まれる

水風呂には、利用者の身体から次のような異物が持ち込まれます。

浴槽の水が透明に見えていても、配管内部やフィルターには汚れが蓄積します。これらの異物が循環ポンプやチラー内部へ流入すると、流量低下、冷却能力不足、異音、エラー停止などにつながります。

特にプレート式熱交換器は、内部の狭い流路を通して効率よく熱を移動させる構造のため、異物やスケールへの対策が必要です。熱交換器メーカーのPentairも、熱交換器の閉塞を防ぐため、入口側へのストレーナー設置と定期的な洗浄計画を案内しています。

水風呂は、ろ過と循環まで含めて計画する

水風呂にチラーを設置する場合、チラー単体ではなく、循環・ろ過・衛生管理まで含めて計画します。基本的な考え方の一例は、次のとおりです。

浴槽の吸込口
→ 粗い異物を止めるヘアキャッチャー
→ 循環ポンプ
→ ろ過設備
→ チラーまたは熱交換器
浴槽への戻り口

ただし、機種によってポンプやフィルターの推奨位置、必要流量、配管径が異なります。必ず採用製品の施工要領を優先します。やることはシンプルで、髪の毛や大きな異物を入口で止め、ろ過した水だけをチラーへ送ることです。

目詰まりを防ぐ3段階の対策

第1段階:浴槽の吸込口で大きな異物を止める。浴槽の吸込口には、髪の毛、タオルの糸、ヘアピンなどがそのまま配管へ入らない構造が必要です。吸込口のカバーや粗目のネットは、利用者の安全性にも関係するため、容易に外れない適切な部材を使用します。

第2段階:チラー手前に清掃可能なストレーナーを設ける。配管には、内部を取り外して清掃できるストレーナーを設けます。設置するだけではなく、次の条件を満たす必要があります。

ストレーナーを壁際や機器の裏へ配置すると、日常清掃が難しくなります。設置しても、日常的に清掃できなければ意味がありません。

第3段階:ろ過設備で細かな汚れを減らす。施設用の水風呂では、利用人数や営業形態に合ったろ過設備が必要です。フィルターの能力が小さすぎたり、清掃頻度が足りなかったりすると、水質が悪化するだけでなく、配管とチラーにも負担がかかります。ろ過設備では、次の条件を確認します。

衛生管理に必要な設備は、施設の営業形態、浴槽の構造、自治体の指導などによって異なります。設計時に所管の保健所等へ確認する必要があります。

ストレーナー清掃を、日常業務へ組み込む

どれほど適切な配管をつくっても、ストレーナーやフィルターを清掃しなければ、やがて流量が低下します。清掃頻度は「毎週1回」と一律に決めるのではなく、次の条件を見ながら調整します。

開業直後は、まず短い間隔で確認し、実際の汚れ方を見て適正な清掃頻度を決める方法が現実的です。

日常点検の例

営業前。

営業中。

営業終了後。

壊れてから連絡するのでは、どうしても対応が後手に回ります。普段と違う小さな変化を記録しておくと、故障の前ぶれに気づけることがあります。

機械室の排熱不足も、チラー停止の原因になる

空冷式チラーは、水から奪った熱を本体周辺の空気へ放出します。そのため、狭い機械室や換気不足の空間へ設置すると、チラーが排出した熱を再び吸い込み、冷却能力が低下することがあります。特に夏場は、次のような問題が起こりやすくなります。

チラーの配置では、本体寸法だけでなく、メーカー指定の吸気・排気スペースを確保します。

岩手県などの寒冷地では、夏の排熱対策と同時に、冬季の凍結対策も必要です。屋外配管や停止中のチラー内部に水が残ると、凍結による配管や熱交換器の破損につながる可能性があります。

メンテナンススペースは、余った場所につくらない

サウナ施設では、利用者が使う空間を広く確保するため、機械室や点検スペースが小さくなりがちです。しかし、機器の周囲に作業空間がないと、簡単な点検や部品交換にも時間がかかります。例えば、次のような問題が起こります。

この状態では、部品交換だけで済む不具合でも、周辺設備の撤去や復旧が必要になります。結果として、修理時間、工事費、休業期間が増えます。

図面に「点検時の動き」まで描く

機器配置を考える際は、本体の外形寸法だけでは不十分です。次のスペースも図面へ落とし込みます。

機械室の広さは、通常運転時だけでなく、故障時と交換時を想定して決める必要があります。

ストーブ周辺も、交換・点検できる構造にする

ストーブのエレメントや内部配線を交換する場合、製品によってはストーブ本体の取り外しが必要です。ストーブガードやベンチが完全に固定されていると、修理のために木部を解体しなければなりません。設計時には、次の点を検討します。

電気ストーブの結線確認やエレメント交換は、資格・知識のある専門業者が行う必要があります。Harviaも、危険な充電部へ触れる可能性がある作業は、認定された電気技術者等が行うよう案内しています。

部品の入手性と修理体制も、設備選びの一部

施設用機器を選ぶ際は、購入時の価格や性能だけでなく、故障後の対応も確認します。

特殊な輸入機器を使用する場合は、部品到着まで時間がかかる可能性があります。施設の規模によっては、使用頻度の高い消耗品や重要部品を予備として保有することも検討します。

不具合時の対応手順を、決めておく

トラブルが発生してから担当者を探し始めると、復旧が遅れます。開業前に、次の情報を一つにまとめておくと対応しやすくなります。

スタッフが「電源を入れ直す」「エラーを何度もリセットする」といった自己判断を繰り返すと、不具合を悪化させる可能性があります。異音、異臭、火花、漏電、水漏れなどがある場合は、使用を停止し、専門業者へ連絡します。既設サウナのトラブルはサウナ修理ローンで対応しています。

D'STYLE/KUUTA saunaの予防設計

D'STYLE/KUUTA saunaでは、サウナを完成させることだけでなく、完成後に点検・修理・更新しやすいことも重視します。

サウナ室

水風呂・チラー

運用・保守

D'STYLEは、建築会社、設計事務所、電気工事会社、設備工事会社と情報を共有し、建物と機器の境界で問題が起きないよう調整します。法人・施設のサウナは施設・法人向けサウナのページでもご案内しています。

まとめ|休業を減らすのは、機器・設計・運用の連携

サウナストーブやチラーは、使用を続ければ部品の摩耗や劣化が起こります。どれほど高性能な機器でも、故障を完全に防ぐことはできません。しかし、次の対策を行うことで、早期故障や突然の営業停止リスクを減らすことはできます。

サウナ施設の安定運営を支えるのは、目に見えるサウナ室のデザイン以上に、利用者からは見えない配管、換気、電気、ろ過設備、機械室、メンテナンス経路です。この見えない部分をどこまで設計しておけるかで、その後の営業のしやすさが変わってきます。

D'STYLE/KUUTA saunaでは、個人宅、別荘、ホテル、旅館、温浴施設など、利用目的に応じてサウナ室の設計・施工をご提案しています。新規開業や改修を検討されている場合は、内装や機器が決まる前の段階でご相談ください。ストーブ、換気、チラー、配管、機械室、点検スペースまで含め、完成後の運営を考えた計画を作成します。

※本記事は一般的な設計・運用上の考え方を説明するものです。実際の施工、点検、清掃方法は、採用する機器の施工説明書・取扱説明書と、各メーカーの指定を優先してください。電気設備の点検や修理は、資格と専門知識を持つ業者へ依頼してください。

D'STYLE
橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)

住田町の山主だった祖父から三代、火と生きてきました。英国RODTECH社認定の煙突掃除 安全インストラクター(東北第一号)。盛岡・国道4号線沿いのショールームにいます。

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