熱く焼けた石に、ひしゃくで水を一杯。ジュッ、という音とともに、白い蒸気が一気に立ちのぼります。次の瞬間、目には見えない熱の波が、天井から、壁から、ふわりと降りてきて、全身を包み込む。息が、熱くなる。肌がぴりっと粟立ち、汗が一斉に噴き出す。これが「ロウリュ」です。サウナ好きが、あの一瞬のために通う。そう言っても、大げさではありません。
ロウリュは、"サウナの魂"という意味だった
フィンランド語の「löyly(ロウリュ)」は、もともと単なる蒸気のことではありませんでした。古くは、サウナに宿る精霊、その"息"や"魂"を指す言葉だったと言われます。石に水をかけて立ちのぼる蒸気は、サウナという場所の、生きた息づかい。そう思うと、あの白い湯気が、少し違って見えてきます。
だからでしょうか。フィンランドでは今も、ロウリュは静かに、丁寧に行われます。大声ではしゃぐものではなく、その熱の波を、目を閉じて、ただ味わうもの。湯気の音と、自分の呼吸だけが聞こえる、教会のような静けさ。本場のサウナで私たちが教わったのも、この"間(ま)"の使い方でした。熱さを競うのではなく、余韻を味わう。そこに、サウナの深さがあります。
なぜ、あんなに熱く感じるのか
不思議なのは、温度計の数字はさほど変わらないのに、体感の熱さが、まるで別物になることです。カラッとした90度の部屋より、湿ったロウリュの効いた80度のほうが、ずっと熱く感じる。数字は、あてになりません。
理由は、湿度にあります。乾いた空気は、熱を伝えるのがゆっくり。ところがロウリュで一気に湿度が上がると、水分を含んだ熱い空気が、肌にぴたりと吸い付くように熱を運びます。だから、同じ室温でも、体感温度がぐっと跳ね上がる。あの"波"の正体は、湿度の急上昇なのです。
そしてもうひとつ。蒸気は、香りを連れてきます。白樺のヴィヒタを近くに置けば若葉の香りが、アロマ水を一滴垂らせばその香りが、熱とともにふわりと広がる。弊社の店舗でも、冬は薪ストーブの天板に置いたスチーマーで、白樺のアロマ水を焚いています。(白樺の枝束のことは、ヴィヒタのつくり方にまとめました。)
良いロウリュは、"石"で決まる
ここが、いちばん大事なところです。
ロウリュの善し悪しを決めているのは、実は石です。熱く、たっぷりと蓄熱したサウナストーンは、水をかけた瞬間に、力強い蒸気へと変えてくれます。逆に、石の量が足りなかったり、サウナヒーターの力が弱かったりすると、石が冷えてしまい、水がジュワッと湿っぽく残るだけ。あの"波"が、来ません。ぬるく、重く、こもった空気になってしまいます。
フィンランドには「石が泣く」という言い方があります。力の足りないヒーターでは、石が本気を出せない、という意味です。だからサウナヒーター選びでは、出力と、積める石の量が肝心になります。私たちがハルビアのサウナヒーターをおすすめするのは、この"ロウリュのための設計"が、しっかりしているからです。岩手・盛岡で、本物のロウリュを味わえるサウナを、と考えるなら、まずは石とサウナヒーターから選んでいきましょう。(サウナヒーターの寿命は、石で決まる話も、あわせてどうぞ。)
ロウリュの、作法
最後に、少しだけ作法を。
水をかけるのは、少しずつ。一気に大量の水は、やけどのもとですし、石も一度に冷えてしまいます。ひしゃく半分ほどから、様子を見て。人と一緒に入るときは、ひと声「ロウリュ、いいですか?」。熱さの好みは、人それぞれですから。そして、かけたら、目を閉じて、その波を待つ。
難しいことは、何もありません。ただ、石と、水と、自分の呼吸に、少しだけ丁寧になる。それだけで、サウナの時間は、驚くほど深くなります。
石に、水を
石に水がふれて、蒸気が立ち、白樺の香りが満ちる。目を閉じて、その熱の波を待つ、静かな一瞬。そこに、サウナのほとんどすべてが宿っています。あなたのご自宅にも、その"魂"を。ロウリュのための一台選びから、岩手・盛岡のD'STYLEが、ご相談に乗ります。



