サウナの主役は熱い石ですが、その石に水をかけて蒸気を生むのが、桶とひしゃくです。木の桶に水を張り、ひしゃくで一杯ずつ、焼けた石にそっと注ぐ。じゅっと音を立てて立ちのぼる蒸気、ロウリュ。この一連の動作を支える、素朴で美しい二つの道具の話をします。地味な脇役に見えて、サウナの楽しみを大きく広げてくれる道具です。
ロウリュを生む、二つの道具
フィンランドのサウナに欠かせないのが、水を張る桶と、水をすくうひしゃくです。焼けた石に水をかけると、瞬間的に蒸気が生まれ、体感の熱さと湿り気がぐっと増します。これがロウリュです。桶とひしゃくは、この蒸気を自分の手で生み出すための道具です。ボタンひとつで蒸気が出る仕組みもありますが、木の桶から一杯すくって石に注ぐという動作そのものが、サウナの大切な儀式になっています。手を動かして熱を作る、その実感が心地よいのです。
木の桶が、なじむ理由
サウナの桶は、木で作られたものが好まれます。杉やヒバ、白樺などの木肌は、熱い室内でも持ち手が熱くなりにくく、水を張ると木の香りがほのかに立ちます。プラスチックにはない、しっとりとした手触りとぬくもりがあります。使い込むほどに味が出て、サウナの風景になじんでいきます。木は乾かし方を大事にすれば長持ちします。使ったあとは水を捨て、風通しのよいところで乾かす。その手入れの時間も、道具を育てる楽しみになります。年月とともに深まる木の色合いは、その桶と過ごした時間の証でもあります。
ひしゃく一杯の、作法
ひしゃくで石に水をかけるときには、ちょっとした作法があります。一度にたくさんかけず、一杯ずつ、様子を見ながら注ぐことです。石の温度が下がりすぎると、よい蒸気が立たなくなります。かけるのは石の中心へ、静かに。勢いよくかけるより、そっと注ぐほうが、蒸気はやわらかく広がります。複数人で入っているときは、まわりに一声かけてから。急に熱くなるのが苦手な人もいるので、みんなの様子を見ながら、少しずつ。この気づかいが、心地よいサウナを作ります。
水に、香りを添える楽しみ
桶の水に、香りを加える楽しみもあります。ロウリュ用のアロマ水を数滴たらせば、蒸気とともに白樺やミントの香りが室内に満ちます。石にかけた瞬間、じゅっという音と一緒に、森のような香りがふわりと立ちのぼる。この香りの演出は、桶とひしゃくがあってこそ味わえるものです。香りは強すぎないほうが心地よく、ほのかに漂うくらいがちょうどいい。水の量も香りも、自分の手で加減できます。それが、この素朴な道具の自由さです。その日の気分で香りを変えれば、同じサウナが毎回違う表情を見せてくれます。
手入れをして、長く付き合う
木の桶とひしゃくは、手入れをすれば長く使えます。大切なのは、使ったあとにしっかり乾かすことです。水を入れたままにしておくと、木が傷みやすくなります。使い終わったら水を捨て、逆さにして風通しのよい場所で乾かす。この一手間で、木の道具はぐっと長持ちします。時々、木肌の様子を見てあげると、道具への愛着もわいてきます。手をかけた分だけ、桶とひしゃくは応えてくれます。育てるように使う。それも、木の道具の醍醐味です。
手で熱を作る喜びを、わが家でも
桶とひしゃくは、蒸気を自分の手で生み出す喜びを教えてくれます。この一連の動作があるからこそ、サウナは受け身でなく、能動的に楽しむ時間になります。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターで、ロウリュを心ゆくまで楽しめるサウナのある暮らしをご提案しています。道具のそろえ方も、店でどうぞ。
写真: Ввласенко (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



