「ストーブ屋さんって、ふだん何してるんですか」。ときどき聞かれるので、今日は、ある冬の一日をドキュメント風に書いてみます。誇張なし、脚色ほんの少し。盛岡の火の店の日常です。

朝8時 / 店の火入れから始まる
出勤して最初の仕事は、展示場のストーブの火入れです。前夜の熾火を灰の底から掻き起こし、細く割った焚き付けと、ひとねじりの新聞紙で、今朝も炎を育てます。商品でもあり店の暖房でもある実機に火を入れるのは、お客様に「実際に燃えているところ」を見ていただくのが、どんなカタログより早いからです。やかんを天板に載せ、店内の温度が上がってきたら、開店。冬の朝いちばんの電話は、たいてい「煙突から煙が逆流して」「ガラスが曇って」の相談ごとです。電話で解決することも、駆けつけることもあります。(火の読み方の話は、こちら。)
午前 / 煙突掃除の現場へ
午前は、煙突掃除に一件。屋根に上がり、ロッドを継ぎ足しながら回転ブラシを通し、ひと冬分の煤を落とします。煤の量と質は、その家の焚き方の通信簿。さらさらの黒い粉なら合格、ねっとりしたタール状なら要注意。「今年は煤が少ないですね、薪の乾燥ばっちりです」という報告が、私たちの成績発表でもあります。ついでにガスケットの傷みを見つけて、次回の交換をご提案。現場では、コーヒーとお菓子をいただくことも多く、これがこの仕事の隠れた楽しみです。(掃除の現場の話は、こちら。)
昼 / 移動の車内と、相談の電話
昼は、次の現場へ向かう車の中で、おにぎり片手に一段落。この時間、電話がよく鳴ります。補助金の書類の書き方、薪の在庫、はじめて薪ストーブを考える方の、たくさんの不安な質問。一本ずつ、腰を据えて答えます。売る前のこうした相談こそ、いちばん大事な仕事だと思っています。急がず、正直に。この電話の一本が、何年か先の一台につながることを、私たちは知っているのです。
午後 / 設置工事と、薪の配達
午後は、新築のお宅へ薪ストーブの設置工事。百キロ超の本体の搬入は男手数人がかりの力仕事、二重断熱煙突の芯出しはミリ単位の神経仕事です。火入れ式で最初の炎が上がった瞬間の、ご家族の顔。この瞬間のために、この仕事をやっています。帰り道、乾燥薪の配達を二件。軽トラからよく乾いたナラの薪を薪棚へ積み替えながら、常連さんと立ち話。「読み物、読んでるよ」の一言が、何よりの燃料です。(薪の配達の話は、こちら。)
夕方 / ふらり客と、閉店の火の始末
夕方、ふらりと入ってきたご夫婦が、ストーブの前でしばらく火を眺めて、「やっぱりいいねえ」とだけ言って帰られる。それでいいのです。何年か越しに戻ってきてくださる方を、私たちは何人も知っています。閉店前、店の火を夜じまいして、灰をならし、明日の熾火を仕込んで、一日が終わります。派手なことのない、火の番の一日。でも、今日もどこかの家が暖かくなった。それがこの商売です。こんな一日を、盛岡の国道4号線沿いで、毎日続けています。(店でできることは、こちら。)
夜 / その日のことを、書きとめる
店を閉めたあと、机に向かう夜もあります。この読み物を書く時間です。今日の現場で交わした言葉、掃除で見た煤の様子、お客様の何気ない一言。その日に感じたことを、忘れないうちに書きとめておく。売り込みではなく、火と暮らす日々のあれこれを、そのままお伝えしたいのです。こうして一日の終わりに火のことを書いていると、自分たちがどれだけ火に助けられて生きているかを、あらためて思います。明日も、どこかの家の火を、いい火にできますように。そんな祈りのような気持ちで、店の灯りを消します。
写真: No machine-readable author provided. Ohto Kokko assumed (based on copyright clai (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



