秋が深まり、朝の空気に冷たさがまじりはじめると、薪ストーブ乗りの心はそわそわしてきます。今年はいつ、最初の火を入れようか。夏のあいだ静かに眠っていた鋳物の本体を前に、指おりかぞえてその日を待つ。長い夏をこえて、ひさしぶりにストーブへ火をともす日。この最初の一回には、ほかの日にはない特別な高まりがあります。薪の香り、はぜる音、立ちのぼる熱。そのすべてが、半年ぶりに戻ってくるのです。今日は、シーズン初日の火入れという、薪ストーブの一年でいちばん心おどる日の話をします。
火を入れる前の、静かな支度
最初の火を入れる前には、いくつかの支度があります。夏のあいだにたまったほこりをはらい、煙突やストーブの中を確かめ、火のまわりに燃えやすいものがないか見わたす。よく乾いた細めの薪と焚きつけを用意し、いよいよ火をともす。この一連の支度は、道具と向きあう静かな時間です。長く付き合ってきたストーブのぐあいを、手で確かめながらととのえていく。火を入れる前のこの時間そのものが、すでに薪ストーブの楽しみの一部です。
最初の火の、においと音
シーズン最初の火をともすと、しばらくのあいだ、独特のにおいが立つことがあります。夏のあいだにストーブの表面に積もったほこりや、塗装が熱でなじむにおいです。しばらく窓を少しあけて、ゆっくり温度を上げてやると、やがてにおいはおさまり、澄んだ火に落ちついていきます。パチパチと薪がはぜる音、ガラスの向こうでゆらめく炎。半年ぶりに聞くその音と光に、ああ今年も火の季節が来たと、体の力がほどけていきます。
鋳物を、ゆっくり慣らす
新しい薪ストーブや、鋳物でできたストーブは、最初の何回かをおだやかに焚いて、体をゆっくり慣らしてやります。いきなり強い火で一気に熱すると、金属に無理がかかることがあるからです。はじめは小さな火から、少しずつ温度に慣らしていく。この慣らし焚きは、これから長く付き合う相棒との、はじめての対話のようなものです。あせらず、火と道具のようすを見ながら進める。ていねいなはじまりが、長い付き合いの土台になります。
火のある季節の、はじまり
最初の火が安定して燃えはじめると、部屋の空気がやわらかくあたたまり、家全体がほっとゆるみます。この日から、春までの長い火のある季節がはじまります。毎朝火をおこし、炎を眺め、天板でお湯をわかす。そんな日々の入り口に立つのが、シーズン初日の火入れです。一年の終わりに火を落とす日がさびしいぶん、最初の一回の喜びは大きい。火のある暮らしは、こうした季節の節目とともに流れていきます。
火入れは、薪づくりの答え合わせ
シーズン初日の火のつきぐあいは、じつは前の年の春や夏の手仕事の答え合わせでもあります。よく乾いた薪はすっと火がまわり、澄んだ炎で気持ちよく燃えあがる。割ってから一年、二年と風を通してためてきた薪ほど、初日の火はやさしく立ち上がります。逆に乾きの足りない薪は、火のつきがにぶく、はじめてそこで手のかけ方に気づかされる。だからこそ、最初の火は、来年の薪づくりへの静かな出発点にもなります。火を入れ、燃え方をたしかめ、また次の冬へと支度を重ねていく。薪ストーブの一年は、こうしてゆるやかに巡っていきます。
火の季節を、盛岡から
最初の一本に火をともす日の高まりは、薪ストーブを持つ人だけが味わえる喜びです。岩手・盛岡のD'STYLEは、薪ストーブを、火の入れ方や日々の付き合い方までふくめてご提案しています。火のある季節のはじまりを楽しみたい方は、店でどうぞ。



