薪ストーブの暮らしの、あまり語られない現実の話をします。虫です。薪は森から来た自然物ですから、虫がついているのは、当たり前のこと。怖がる話ではありませんが、知らないと、家の中で小さな悲鳴が上がります。今日は、薪の虫の顔ぶれと、家に持ち込まないための三つの習慣。これさえ身につければ、虫は「森のおまけ」くらいの、のどかな存在になります。

薪にいる虫の、顔ぶれ
薪でよく出会うのは、まず、カミキリムシの幼虫です。樹皮の下や材の中にいて、春先、薪棚の近くで、木をかじる「コリコリ」という音が聞こえることさえあります。次に、キクイムシの仲間。薪の表面に、針で刺したような小さな穴と、きなこのような細かい木の粉があれば、彼らの仕事です。そして、岩手の秋の風物詩、越冬場所を探すカメムシ。薪の隙間は、彼らにとって、理想の冬の宿です。ほかに、樹皮の下のクモやワラジムシ、アリなど。いずれも、人を刺したり、家の柱を食べたりする害は、ほとんどありません。彼らの目当ては、あくまで「森の、湿った木」。しっかり乾いた家の柱に住み着く心配は、基本的に無用です。正体が分かれば、恐怖は、ただの知識に変わります。
習慣その一、屋内には数日分だけ
いちばん大事な習慣が、これです。薪の大量の保管は、必ず屋外の薪棚で。部屋の中に持ち込むのは、数日で使い切る分だけにする。暖かい室内に長く置くと、薪の中で冬眠していた虫たちが、「春が来た」と勘違いして、もぞもぞ目を覚まします。室内のログラックの薪は、こまめに回して、置きっぱなしの数週間を作らないこと。これだけで、室内での遭遇率は、ぐっと下がります。冬の初めに、その年の薪をひととおり見て、穴や木の粉の目立つものを、外の棚に分けておくと、なお安心です。(薪棚の話は、こちら。)
習慣その二、持ち込む前にひと払い
薪を家に運ぶ前に、薪同士を二、三度、軽く打ち合わせて、樹皮の浮いたところを払う。これで、表面の虫と、土や雪も、一緒に落ちます。カメムシの季節は、樹皮の裏を、ちらりと確認。玄関先に、手ぼうきかブラシを一本置いておくと、この儀式が、自然と習慣になります。ついでに、乾き具合が音で分かる。よく乾いた薪は「カーン」と高く鳴るので、一石二鳥の作法です。刺激すると匂いを出すカメムシは、つぶさずに、そっと外へ逃がすのがコツです。虫にも、こちらにも、そのほうが、ずっと平和です。(音で分かる話は、こちら。)
習慣その三、よく乾いた薪を使う
そもそも、虫が好むのは、水分の多い、生っぽい木です。しっかり二年乾かした薪は、虫にとって、魅力の少ない、かさかさの住まい。乾いた薪の虫の少なさは、使ってみると、はっきり体感できます。乾燥は、火のためにも、煙突のためにも、そして虫のためにも、すべての基本なのです。よい薪を選ぶことは、そのまま、虫の少ない、静かな冬を選ぶことでもあります。(乾燥の話は、こちら。)
それでも出たら、火の中へ
それでも時々、部屋で一匹に出会います。そのときは、慌てず、ティッシュでそっとつまんで、炉の中へ。森から来たものは、火に還っていただく。これが、薪ストーブの家の、静かな流儀です。虫の一匹くらいで動じなくなったころ、あなたはもう、立派な薪ストーブ乗りです。森の恵みには、少しばかりの、森のにぎやかさが付いてくる。それも込みで受け入れると、薪の暮らしは、ぐっと大らかで、豊かなものになります。岩手・盛岡のD'STYLEは、薪の保管や虫のご相談まで、暮らしの実際に沿って、お手伝いしています。よく乾いた薪の販売も、どうぞお気軽に。
写真: Smoky Vendace (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)



