薪ストーブの家を訪ねると、私たちはつい、庭の薪棚に目が行きます。びっしりと整然と積まれた薪の壁。木口が揃って、こんがりと日に焼けて、上には雪よけの板。ああ、いい薪棚だなあ、と、しばらく眺めてしまう。薪棚は、燃料置き場である前に、庭でいちばん人柄の出る場所です。今日は、薪棚の美学の話をさせてください。
積まれた薪は、なぜ美しいのか
薪の壁が美しいのは、そこに秩序と手間が見えるからだと思います。一本ずつ形の違う薪が、人の手で、崩れないように、風が通るように、考えて積まれている。同じものがひとつもないのに、全体としては整っている。自然の不揃いと、人の丁寧さの合作です。木口の色も、表情豊かです。割りたての白、ひと夏越したベージュ、二年ものの銀灰色。棚の列ごとに色が違うのは、そのまま時間の地層。薪棚は、来年と再来年の暖かさが、目に見える形で貯金されている場所なのです。(薪の乾燥の話は、こちら。)
世界の薪積みは、面白い
薪の積み方には、お国柄が出ます。北欧やドイツには、薪を円形に積み上げる伝統的な方法があり、庭に薪の塔がそびえる景色は壮観です。木口を外に向けて円く積み、真ん中に端材を立てて詰めていく。崩れにくく、乾きも良く、何より美しい。薪積みを競う大会や、薪の積み方だけを論じた本が北欧でベストセラーになったこともあるほどで、雪国の民は、薪を積むという地味な仕事に、誇りと遊び心を注いできました。岩手の庭にも、この文化はよく似合うはずです。
実用の作法も、少しだけ
美学と実用は、薪棚では同じ方向を向いています。地面から浮かせて湿気を絶ち、雨と雪は上だけ防いで、横は風を通す。南向きの壁際なら、日差しが乾燥を進めてくれる。put家の壁にぴったり付けすぎないこと、崩れやすい高さまで欲張らないことは、安全のための作法です。整然と積まれた薪棚は、結局のところ、よく乾く薪棚でもあるのです。
雪の朝の、薪棚
そして、薪棚がいちばん美しいのは、雪の朝です。白い帽子をかぶった薪の壁から、今日の分を数本抜いて、雪を払い、家に運ぶ。棚に空いた小さな穴は、今日も火を焚いた印。春までに、穴は少しずつ広がって、やがて空になった棚に、また新しい薪が積まれる。この繰り返しが、薪のある暮らしの一年です。(薪割りの楽しみは、こちら。)
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