ふと嗅いだ匂いが、何十年も前の記憶を、映像も感情もまるごと連れてくる。誰にでも覚えのある、あの現象には名前があります。プルースト効果。紅茶に浸したマドレーヌの香りから幼少期の記憶があふれ出す、小説「失われた時を求めて」の場面にちなんだ呼び名です。今日は、香りと記憶の話。そして、サウナと薪ストーブの家が、家族の記憶に何を残すかという話です。
嗅覚だけが、特別扱いされている
五感の中で、嗅覚だけは、脳の中で特別な経路を通っています。視覚や聴覚の情報が理性の関所を経由するのに対し、匂いの信号は、記憶と感情をつかさどる部位へ、ほぼ直行する。だから匂いの記憶は、理屈抜きで、感情ごと蘇るのです。しかも長持ちする。顔や名前は忘れても、おばあちゃんの家の匂いは、何十年たっても一発で分かる。匂いは、脳のいちばん深い棚に仕舞われる記憶なのです。
サウナの香りが、懐かしい理由
初めて本格的なサウナに入ったのに、なぜか懐かしい。そう言う方が、少なくありません。木の香り、蒸気の匂い、かすかな煙。これらは、木の校舎、風呂屋、祖父母の家、焚き火といった、多くの日本人の原体験の匂いと重なっています。サウナの香りは、新しい体験のふりをして、実は古い記憶の扉を叩いている。あの「初めてなのに帰ってきた感じ」の正体は、たぶんこれです。(森の香りの話は、こちら。)
わが家の匂いを、仕込んでいる
ここからが、今日いちばん伝えたい話です。薪ストーブとサウナのある家は、匂いの記憶を、毎日仕込んでいる家です。朝の着火の薪の香り、天板の味噌汁、サウナの木とロウリュの蒸気、ヴィヒタの白樺。子どもたちは、この匂いの中で育ちます。そして何十年か先、どこか遠くの街で、ふと薪の煙やサウナの木の香りに出会ったとき、その子の胸に、実家の冬がまるごと蘇る。楽しかった記憶は薄れても、匂いの鍵は残り続けます。家の匂いは、親が子に残せる、いちばん息の長い贈り物のひとつだと思うのです。(家族の記憶の話は、写真に残らない時間にも。)
いい匂いの家を、つくりませんか
岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナとハースストーン、バーモントキャスティングスの薪ストーブの設置を通じて、「いい匂いの家」づくりをお手伝いしています。二十年後の誰かの郷愁を、今日から仕込みはじめませんか。ご相談、いつでもどうぞ。



