薪ストーブを検討中のお客様から、いちばん多くいただく質問。機種でも薪でもなくて、たいていこれなんです。「工事って、家に穴を開けるんでしょう?」
もちろん、開けます。屋根か壁に、煙突を通すための穴を。大切な家に穴を開けるんですから、不安になって当たり前です。だから今日は、設置工事で実際に何が起きるのか、ご相談から火入れまでの流れを、全部お話ししようと思います。
「穴を開ける」と聞くと、やっぱり身構えますよね。でも、どこにどう開けて、そのあとどう守るのか。そこまで分かってしまえば、そんなに怖い話ではないんです。
まずは、暮らし方から聞かせてください
設置の流れは、ご相談から始まります。ここで私がお聞きするのは、機種のご希望より先に「どんなふうに暮らしたいか」です。一日中家にいるのか、夜だけ焚くのか。おじいちゃん、おばあちゃんはいるか。燃費のいいほうがいいか。使い方は楽なほうがいいのか、多少手間がかかっても燃費を取るのか。見た目の美しさか、それとも炎の見え方の美しさか。暖かさはそこまで要らないのか。料理はしたいか。吹き抜けはあるか。同じ家でも、暮らし方が違えば、選ぶべきストーブも煙突の計画も変わってきます。
だから私は、いろんなメーカーを扱うようにしています。車でも、「このメーカーだけが正解」ということは、ないですよね。いろんなメーカーの中から「この一台がいい」という形になる。薪ストーブも、同じなんです。
次が現地調査です。家の断熱性能、間取り、煙突を通せる経路、梁や柱の位置、そして周囲の可燃物との離隔距離。防火の観点から確認しなければいけないことが、実はたくさんあります。図面だけでは分からないことが必ずあるので、私は現地を見ないうちに「できます」とは言いません。
提案と見積り。納得してから、工事です
現地を見せていただいたら、その家に合う機種と煙突の計画をご提案し、お見積りをお出しします。肝心なのは、煙突の経路まで含めた計画を最初にきちんと立てること。ストーブ本体だけ先に決めて、煙突は後から。これをやると、たいていどこかで無理が出ます。
ストーブありきで進めると、うまくいかないことがあります。家に合っていないと、暑すぎたり、逆に寒すぎたり。無理な焚き方でストーブに負荷がかかりすぎて、炉内がボロボロになってしまうことすらあります。だからうちは、その家に合わせたサイズをご提案しています。これは断熱性能とも関わっていて、特に最近の新築は住宅性能が上がっているぶん、選ぶストーブのサイズは、どんどん小さくなっているのが現実です。
ご不明な点は、何度でも聞いてください。内容に納得いただいてから、はじめて工事の日取りを決めます。急かすことはしません。
工事当日。穴を開けて、きちんと守ります
工事のいちばんの山場は、煙突を屋根や壁に貫通させる部分です。穴を開けたら、雨仕舞い、つまり防水と板金の処理を丁寧に行います。ここが甘いと、何年か後に雨漏りという形で返ってきかねません。床には炉台をつくり、必要に応じて壁の防護も施します。
うちは、いつも屋根屋さん——板金の職人と一緒に仕事をしていて、現場でいろんな話を聞きます。たとえば、ある個人の屋根屋さんが雨仕舞いをした家で、あとから漏水(雨漏り)が出てしまった。見に行ったら、屋根がコーキングだらけになっていた、という話。
ちゃんとした板金屋さんは、コーキングで雨を止めたりしません。板と板をきちんと組んで、掴んで、水が入らないようにする。コーキングを使うのは、切り込みを入れたごく一部だけ。だから、きちんとやった板金は、20年でも30年でも、雨漏りせずにもつんです。雨漏りの原因は、たいてい板金の粗さか、コーキング頼みの処理。だからうちは、信頼できる屋根屋さんに雨仕舞いをしてもらいます。とくに新築なら、屋根を葺くそのタイミングで、屋根屋さんが煙突まわりの雨仕舞いまで一緒に仕上げてくれます。最初からきれいに納まるので、より安心です。20年、30年と、雨の心配なく薪ストーブを楽しんでもらえたら——私もお客さんも幸せだな、と思いながら、ご提案しています。
工事が終わったら、火入れです。初めての火をお客様と一緒に入れて、焚き付けの手順、空気の調整、薪の選び方まで、実際に火を見ながらご説明します。そして設置した後は、毎年の点検と煙突掃除。ここまで全部ひっくるめて、うちの考える「設置工事」です。
性能と安全は、煙突で決まります
私は英国RODTECH社認定の煙突掃除安全インストラクターとして、たくさんの煙突の中を見てきました。つまり、施工の「10年後」を見てきた人間なんです。壁の裏側で手を抜いた仕事は、10年後の煙突が全部教えてくれます。
それに、費用をぎりぎりまで切り詰めた施工の「その後」も、たくさん見てきました。先に言っておきたいのですが、安いこと自体が悪い、という話ではありません。良いものを少しでもお求めやすく——それは、どの会社さんも一生懸命やっていることだと思います。値引きをするなら、技術や知識ではなく、商品(仕入れや段取り)で安くする。そこは、私も同じ気持ちです。
ただ、なかには「見えないところ」を削って安くしている施工もあります。大工工事や屋根の板金、あるいは、日本暖炉ストーブ協会がすすめる安全な煙突の高さ(長さ)を短くすれば、そのぶん煙突代は下がります。でも、壁の裏の仕事は、完成したときには見えません。だからこそ、そこは削らない。安いか高いかより先に、「どこにお金をかけたか」を、正直にお話ししたいんです。
きれいに燃える炎の裏には、
たいてい見えない煙突の仕事がある。
だからうちは、壁の裏まで美しい施工にこだわります。誰にも見えない場所こそ、きちんとやる。煙突の引きが良ければストーブは気持ちよく燃えますし、正しい離隔と防火処理があれば、毎日安心して火を入れられます。ストーブ選びの前に、まず煙突。順番はいつもこれです。
20年後も、笑顔で薪ストーブのある暮らしを続けてほしい。一生ものの薪ストーブライフを楽しんでもらうために、必要なことなんだと思います。
新築でも、いま住んでいる家でも
新築なら、設計段階からご相談いただくと煙突の経路もストーブの位置も自由度が高く、いちばん良い形にできます。いま住んでいる家への後付けも、実は多くの場合可能です。ただ、こればかりは現地を見てからでないと確かなことが言えないので、まずは見せてください。岩手・青森・秋田の全域と、宮城・山形の一部まで伺います。
現地調査は無料です。盛岡・国道4号線沿いのショールームには火の入った薪ストーブがあり、ご来店の予約も要りません。「うちにも置けるのかな」くらいの気持ちで、聞かせてください。細かすぎると言われるくらい説明しますが、性分なので許してください笑



