「薪ストーブって、全部でいくらかかりますか。」

ショールームでいちばん多くいただく質問です。そして、いちばん答えにくい質問でもあります。
答えにくいのは、隠したいからではありません。同じストーブでも、屋根の形が違えば工事が変わるからです。それでも「わかりません」で終わらせるのは不誠実だと思うので、今日は見積の中身を順番に全部見せます。金額の出せるところは出します。出せないところは、出せない理由まで書きます。
先に総額から言うと、目安は80万円から200万円ほどです。
正直に言います、安くないです
薪ストーブの設置は、本体と煙突と、それを家に安全に納める工事が、ひとそろいになった買い物です。鉄の箱の値段だけでは終わりません。屋根の上の板金仕事も、大工さんの手間も、そこに入ってきます。
だから正直に言って、安くはない。
ただ、内訳を一つずつ見ていくと、どの項目にもちゃんと理由があります。そして、削っていい項目と、絶対に削ってはいけない項目があります。それが分かれば、見積書は怖い紙ではなくなります。
費用は、七つでできている
当店の見積は、大きく分けると次の七つで構成されます。
本体だけ届いても、火は焚けません。煙突を立て、金具で固定し、屋根の雨仕舞を納め、床と壁を火から守る。この七つがそろって、はじめて安心して火を入れられます。
①本体が、高くなってきた話
本体は40万円から70万円が一般的な帯です。ただ近年、100万円を超える機種が随分と増えました。
理由はいくつかありますが、大きいのは燃焼技術です。煙を二度燃やして排気をきれいにする仕組みや、蓄熱でじんわり暖める石のストーブ。そういう構造の凝ったものが増え、そのぶん値段も上がってきました。円安の影響もあります。
ここで正直に申し上げると、高い機種が常に正解ではありません。家の広さ、断熱の具合、そもそも一日何時間焚くのか。それによって、身の丈に合った一台は変わります。
ただ、本体はこの先何十年も毎日向き合う道具です。予算と相談しながら、これだと思える一台を選んでください。ここだけは、後から替えがききません。
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②煙突が、いちばん誤解されている
煙突は50万円からです。「筒を通すだけで50万円?」と驚かれることがあります。
でも、煙突は薪ストーブの部品ではありません。煙突がストーブを動かしています。
薪ストーブは、煙突が上に引く力で空気を吸い込み、燃えます。煙突の性能が足りないと、いくら良い本体を入れても、煙が逆流したり、火が育たなかったり、ガラスが真っ黒になったりする。カタログの暖房能力も出ません。
だから煙突の価格は、性能によって変わります。断熱の入った二重煙突か、そうでないか。長さは何メートル必要か。曲がりはいくつあるか。まっすぐ真上に抜ける家がいちばん安く、いちばんよく燃えます。
私は英国RODTECH社認定の煙突掃除 安全インストラクター(東北第一号)として、年間たくさんの煙突を掃除しています。そこで見てきたのは、煙突をケチった家ほど、あとで苦労しているという事実です。
煙突内部にタールが溜まると、煙道火災の危険が出ます。タールは3ミリほど溜まると発火のリスクが上がる、といわれています。そしてタールが溜まりやすいのは、煙突が冷えている家です。冷えていると煙が途中で結露して、内側にべったり付く。断熱の入った煙突が高いのは、そこにお金を払っているからです。
雪が、断熱の答えを教えてくれます
ここからは、岩手の家だから書ける話をします。
煙突を屋根から出すとき、多くの家では「煙突囲い」という箱で覆います。見た目を整え、雨仕舞を納めるための造作です。
この囲いの中に、断熱をきちんと入れるかどうか。ここが分かれ道です。
断熱を入れないと、どうなるか。
冬場、屋根の上で、煙突のまわりだけ雪が溶けます。
私たちは年間250軒を超えるお宅にメンテナンスで伺いますが、雪の日に外から屋根を見上げると、これがはっきり分かります。一面の雪の中に、煙突のまわりだけ黒い輪ができている家がある。
あれは、そこから熱が逃げているということです。せっかく薪で作った熱が、屋根の上の雪を溶かすために使われている。もったいない、という話であると同時に、溶けた水が夜に凍り、屋根の上で氷になっていくという話でもあります。雪国では、これは軽い問題ではありません。
逆に、断熱がきちんと入っている家は、煙突のまわりも他と同じように雪が積もったままです。
見積書の「断熱材」の一行は、金額としては地味です。削っても、引き渡しの日には誰も気づきません。気づくのは、最初の冬に屋根を見上げたときです。
もしいま他社さんの見積を見比べている方がいらっしゃったら、ここだけ聞いてみてください。「煙突囲いに断熱は入っていますか」と。答え方で、その会社が岩手の冬を知っているかどうかが分かります。
金額を出していない項目について
表をご覧になって、③④⑤⑦に金額が書いていないことに気づかれたと思います。
ごまかしているのではありません。この四つは、家によって振れ幅が大きすぎて、目安を書くとかえって誤解を生むからです。
たとえば④の雨仕舞。屋根がトタンか、瓦か、金属の立平か。勾配は急か、緩いか。棟に近いか、軒に近いか。これだけで手間がまるきり変わります。⑤の大工工事も、天井裏の梁がどこを走っているかで難易度が変わる。
「一式いくら」と丸めて書いてしまうこともできますが、それをやると、現地を見たあとで「思ったより高い」となる。それがいちばん良くないと思っています。
だからこの四つは、図面と現地を見てから、あなたの家の数字としてお出しします。
⑥炉台は、鉄板かタイルか
床の不燃材、炉台です。ここは金額がはっきりしています。
鉄板の炉台で5万円ほど。タイル張りにすると10万円からです。
鉄板はすっきりして、掃除が楽で、価格も抑えられます。タイルや石は、部屋の中でストーブの居場所がきちんと決まる。見た目の落ち着きが違います。
どちらが正解ということはありません。ただ、薪ストーブは部屋の主役になる道具なので、足元の見え方は思っているより効きます。ショールームで実物を見てから決める方が多いです。
⑦炉壁の、今むかし
七つの中で、いちばん様変わりしたのが炉壁です。
かつては、ストーブの背面にレンガを積んだり、タイルを張ったりする工事が定番でした。いまは、壁に近づけて置ける機種が増えています。炉壁を立てなくてよい機種を選べば、その工事はまるごと省けて、部屋も広く使えます。
ただし、どの機種でも壁に寄せられるわけではありません。機種ごとに必要な離隔距離が決まっていて、それは法令と製造元の指定で決まります。ここを目分量でやる会社とは、付き合わないほうがいいです。

工事は、二日から三日です
「何日くらい家に入るんですか」もよく聞かれます。
標準的なケースで、着工から完了まで二日から三日です。
屋根に穴を開けて、貫通部を納め、煙突を立て、雨仕舞を仕上げ、室内側で炉台を作ってストーブを据える。屋根の上と部屋の中を行き来しながら進みます。
二日から三日というのは、住みながらでも耐えられる長さだと思います。もちろん雨や雪が続けば延びます。屋根の仕事があるので、こればかりは天気次第です。
後付けも、できます
「うちはもう建ってしまったから」とあきらめている方へ。
薪ストーブは、いま住んでいる家にも後付けできます。実際、当店の施工の多くは後付けです。
鍵になるのは、煙突をどこからどう通すか。家の構造、間取り、屋根の形。これによって答えが変わるので、図面と現地を見て判断します。二階の部屋を突っ切らずに抜けるルートがあるか、というのが最初の関門です。
ここは電話や写真では決められません。まずは現地調査にお呼びください。

補助金が使える場合があります
自治体によっては、薪ストーブの設置に補助金制度を設けています。
ひとつだけ、絶対に覚えておいていただきたいことがあります。ほとんどの制度は、発注する前に申請しないと使えません。契約してから「そういえば補助金は」と言われても、もう間に合わないのです。もったいない話ですが、これが毎年あります。
補助金で実際に戻った金額の実例を、3〜5行で。
・どの自治体か(市町村名まで)
・いくら戻ったか
・お客様の総額に対して、どのくらいの割合だったか
・申請から入金までどのくらいかかったか
※制度名や年度が曖昧でも、金額が実数なら十分に強い材料になります。
対象や条件は制度ごとに違います。補助金のページで、お住まいの自治体の情報をご確認ください。見積のご相談の際に、遠慮なくお尋ねいただいても大丈夫です。当店で申請書類のお手伝いもしています。
安くない理由は、二十年、三十年の安心
ここまで読んで、やっぱり大きな買い物だな、と感じた方もいると思います。その通りです。
ただ、薪ストーブは設置した日から、十年、二十年、三十年と、冬が来るたびに火を焚き続ける道具です。
屋根の雨仕舞が甘ければ雨漏りにつながる。防火の納まりが甘ければ、そもそも安心して焚けない。断熱が入っていなければ、毎年屋根の上の雪を溶かし続ける。
あとから壁や天井の裏に隠れて見えなくなる部分ほど、丁寧にやっておく必要があります。内訳を全部お見せしているのも、その一行一行が、長く火を焚き続けるための工事だからです。
見積書の一行一行が、
この先二十年、三十年ぶんの安心なんだと思っています。

よくある質問
Q. いちばん安く抑えるとしたら、どこを削れますか
本体と炉台です。本体は帯の下のほうを選ぶ、炉台は鉄板にする。この二つで、見た目と使い勝手を保ったまま総額を下げられます。逆に、煙突と断熱と防火の納まりは削らないでください。ここを削ると、安心と暖かさの両方を失います。
Q. 総額80万円から200万円、どのあたりが多いですか
家の条件によりますが、幅が大きいのは本体の価格差と、煙突のルートの難しさが理由です。まっすぐ真上に抜けられる家と、屋根裏を大きく迂回する家とでは、③④⑤がまるきり変わります。
Q. 見積は無料ですか
現地調査とお見積は無料です。図面をお持ちいただければ、おおよその話はショールームでもできます。
Q. 他社の見積と比べたいのですが
どうぞ比べてください。そのときは総額だけでなく、煙突が二重断熱かどうか、煙突囲いに断熱が入っているか、この二点を見比べてみてください。同じ総額でも中身が違うことがあります。
Q. 工事のあと、毎年いくらかかりますか
薪代と、年に一度の煙突掃除です。煙突掃除はワンシーズンに一回が目安で、当店では夏の間にお願いすることが多いです。薪は当店で販売しています。
まずは、現地調査から
80万円から200万円という幅を、あなたの家の一枚の見積にする近道は、現地を見ることです。
屋根の形、間取り、ストーブを置きたい場所。それが分かれば、七つの項目に具体的な数字が入ります。
盛岡・国道4号線沿いのD'STYLEショールームで、実際の薪ストーブを見て、触って、確かめてください。火の入った実機があります。現地調査とお見積のご相談は、お電話一本から始まります。TEL 019-681-2477(9:00〜17:00、定休:水曜・大型連休・年末年始)でお待ちしています。
岩手・盛岡で薪ストーブ・ペレットストーブをお考えの方は、ハースストーン・バーモントキャスティングス正規代理店のD'STYLEへ。煙突の計画から設置工事まで、おすすめの一台をご提案します。どうぞお気軽にご相談ください。
写真: Ximonic (Simo Räsänen) (Wikimedia Commons, CC BY 4.0)



