「よく乾いた薪を使ってください」。この読み物で何十回書いたか分からないこの言葉を、今日は数字にします。乾いた薪とは、含水率20%以下の薪のこと。この一行を体で理解すると、薪の見方が変わります。(見分けの感覚編は、三代目の薪屋の話。今日は計測編です。)

なぜ20%が、壁なのか
伐りたての生木は、重さの半分近くが水です。この水は、燃やすとき、ただ邪魔なだけではありません。水を蒸発させるには、大量の熱が要る。つまり湿った薪は、自分の持つ熱量のかなりの部分を、自分の中の水を沸かすために使ってしまうのです。熱は部屋に出ず、温度は上がらず、燃え残ったガスは煤とタールになって煙突に付きやすい(煙道火災の話)。含水率20%以下なら、この損失が実用上気にならない水準に収まる。だから20%が、世界共通の「乾いた薪」の合格ラインなのです。理想を言えば、15%前後まで下がっていると、火のつきも燃え方も、見違えます。
乾かすには、時間がかかる
薪は、割って積んで、風と日にさらして、はじめて乾きます。丸太のままでは、表面が乾いても芯は湿ったまま。割って断面をさらすことで、水の抜け道ができるのです。乾燥にかかる期間の目安は、スギやマツなどの針葉樹で半年から、ナラやクヌギなどの堅い広葉樹だと一年から二年。火持ちのいい薪ほど、乾くのにも時間がかかります。だから薪づくりは、春に割って、次の冬ではなく、その次の冬に焚くくらいの、気の長い仕事。今日割る一本は、再来年の自分への贈り物なのです。
含水率計は、千円台の名審判
そして、この数字は測れます。含水率計(水分計)。二本の針を薪に刺すだけの単純な道具で、千円台から手に入ります。薪の乾き具合をめぐる「もういけるだろう」「まだだろう」の水掛け論に、数字で決着をつけてくれる名審判です。薪割りのモチベーションにも効きます。去年割った薪が18%まで下がっているのを見る朝の、あの静かな満足感。数字は、待つ楽しみを目に見える形にしてくれます。数値が下がっていく過程そのものが、薪づくりのごほうびになります。
測り方のコツは、「割って、中を」
測定にはコツが一つだけあります。薪の表面ではなく、割った断面の中心部を測ること。表面は雨や夜露で数値が上下しますし、逆に表面だけ乾いて中が湿っている薪もあります。測りたい薪を一本、その場で割って、新しい断面に針を刺す。木口(切り口)より、繊維に直角に刺すほうが正確です。数本測って平均を見れば、その山の実力が分かります。買った薪の検品にも、この方法をどうぞ。当店の乾燥薪は、いつでも測っていただいて結構です。数字に自信があります。
保管が、乾きの九割を決める
せっかく割っても、積み方と置き場所で、乾き方は大きく変わります。基本は、風の通り道に、屋根で雨だけよけて、地面から少し浮かせて積むこと。薪と薪のあいだに風が抜ければ、天日と乾いた風が、水をどんどん連れ去ってくれます。逆に、湿った地面に直置きしたり、全体をぴったり覆ってしまうと、せっかくの薪が湿気を吸い戻す。日当たりと風通しのいい薪棚は、いわば無料の乾燥機です。井桁に組んだ両端の風の抜けは特によく、南向きの壁ぎわは天然の特等席。置き場所を整えるだけで、同じ薪が一段よく燃えるようになります。手間はほとんどかからず、効くのは風と時間。薪づくりが、いちばん割のいい手入れと言われるゆえんです。
数字で付き合うと、薪はもっと面白い
含水率、樹種、火持ち。数字と知識で付き合うほど、薪は奥深い燃料です。岩手・盛岡のD'STYLEは、含水率計の選び方から乾燥薪の販売まで、数字ごと薪の暮らしをお手伝いしています。ご相談、いつでもどうぞ。
写真: Acabashi (Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0)



