転倒防止の話は、サウナまわりについて書きました(こちら)。今日はその屋外編、雪道の歩き方講座です。雪国育ちには常識でも、言葉にして子どもや転入者に教えられる人は、案外少ない。改めて、体系立ててお届けします。
基本は、ペンギン歩き
雪道の歩き方の要点は、三つです。一、歩幅を小さく。大股は重心移動が大きく、滑った時に立て直せません。二、フラット着地。かかとから着く普段の歩き方をやめて、足の裏全体を同時に、真上から置くように着地する。三、急がない。時間の余裕が、最大の滑り止めです。この三点セットが、いわゆるペンギン歩き。少し前傾で、重心を常に足の真上に置く。見た目の格好良さは捨ててください。転んで骨折するより、ペンギンのほうがずっと格好いいのです。
なぜ、氷はあれほど滑るのか
氷が滑るのは、表面にごく薄い水の膜ができるからです。氷のいちばん上の分子は下の層より動きやすく、そこへ体重や気温が加わると、水に近い層になって、靴底との間ですべりを生みます。だからこそ、気温が0度前後の「解けかけ」がいちばん危ない。かちかちに凍りきった真冬日の朝より、日中に少しゆるんだ夕方の路面のほうが、実はよく滑ります。逆に、氷点下十度を下回る乾いた雪は、キュッキュッと鳴って比較的グリップします。この理屈を知っておくと、危ない時間帯と場所の見当が、自然につくようになります。
危険地帯の、見分け方
雪道には、危険の濃淡があります。最凶は、ブラックアイスバーン。濡れたアスファルトに見えて、実は薄い透明な氷。夜間や朝、橋の上、日陰の交差点に出ます。「濡れて見えるだけの黒い路面」こそ疑ってください。次に、横断歩道の白線の上(氷膜がつきやすい)、店の出入り口の踏み固められたツルツル、屋根からの落雪水が凍る軒下。逆に、新雪の上とザラメの雪は比較的安全です。歩くラインを、白いところ、ざらざらしたところへ選んでいく。雪国の人が無意識にやっている経路選択です。
装備と、転んだときの作法
靴は、深い溝のある冬底を。ツルツル路面が多い年は、脱着式のスパイクが強い味方です。手袋は防寒だけでなく、転倒時に手をつくための防具でもあるので、ポケット歩きは厳禁。転びそうになったら、あらがわず、お尻から低く落ちるのが最善です。頭と手首を守ることを最優先に。荷物はリュックにすると、両手が空き、背中のクッションにもなります。両手が自由なだけで、とっさの一歩や踏ん張りが、驚くほど安定します。
子どもと、年配の家族へ
雪道の歩き方は、雪国に長くいる人ほど無意識で、言葉にして教える機会が案外少ないものです。子どもには、走らない、手はポケットから出しておく、白くてざらざらした所を選ぶ、の三つを繰り返し伝えます。年配の家族には、時間に追われない段取りを。少し早めに家を出るだけで、あわてない分、足元が安定します。転んで手首や足を痛めると、冬の楽しみが一気に遠のいてしまうもの。玄関に滑り止めや、頼れる一本の杖を置いておく。ほんの少しの備えが、家族みんなの冬の安心につながります。
家の敷地は、自分で安全に
そして、わが家の動線です。玄関まわり、サウナ小屋への通路、薪棚までの道。融雪剤、砂、灰(こちら)、屋外マットで、家族の通り道だけは確実に固めておく。火照った体でサウナから戻る夜道は、特に念入りに。岩手・盛岡のD'STYLEは、冬の動線まで含めた設置のご相談を承っています。この冬も、ご安全に。ペンギンで参りましょう。
写真: ansik from Turku, Finland (Wikimedia Commons, CC BY 2.0)



