VENTILATION / 換気の話
薪ストーブは、燃えているあいだずっと部屋の空気を吸って、煙突から外へ捨てている。
吸った分だけ、どこかから入ってこないといけない。
ここを知らずに入れると、煙が部屋に戻ってくる。これは、脅しじゃない。
FIRST / たとえ話
パックのジュースを、ストローで思いきり吸ってみてほしい。
パックが、ベコッとへこむ。
空気が入ってこないのに、中身だけ出ていくからだ。
家とストーブも、まったく同じことが起きている。
| ストロー | = 煙突。燃えた空気を外へ吸い出す。 |
|---|---|
| ジュースのパック | = 家。すきまが少ないほど、へこみやすい。 |
| パックがへこむ | = 負圧(ふあつ)。家の中の気圧が、外より低くなること。 |
| ストローに穴をあける | = 給気口・外気導入。空気の入り口を作ってやること。 |
昔の家はすきまだらけだったから、勝手に空気が入ってきた。
今の家は、そのすきまを一生けんめい塞いである。
暖かくて良い家だが、そのぶんストーブが息をできなくなる。
HOW MUCH / どれくらい吸うのか
定格10kW・効率80%の薪ストーブで計算すると、
吸う空気は1時間あたり およそ30立方メートル(30,000リットル)。
200リットルのドラム缶で150本ぶんだ。これを、焚いている間ずっと。
順番に出す。むずかしくない、かけ算と割り算だけだ。
薪の量 = 出力 ÷ ( 薪の発熱量 × 燃焼効率 )
= 10 kW ÷ ( 3.8 kWh/kg × 0.80 )
= 約 3.3 kg/h
発熱量 3.8 kWh/kg= よく乾いた薪(含水率20%)1kgを燃やして出る熱。 生木だと水を蒸発させるのに熱を使うので、2.0台まで落ちる。湿った薪は、それだけで損。
理論空気量 = 薪の量 × A0
= 3.3 kg/h × 3.7 m³/kg
= 約 12 m³/h
A0(理論空気量)= 薪1kgを「ちょうど」燃やしきるのに要る空気の体積。 木の乾物で約4.6 m³/kg、含水率20%なら乾物は8割なので 4.6×0.8 ≒ 3.7 m³/kg とした。 ここは前提を置いた数字なので、計算機では変えられるようにしてある。
実際の空気量 = 理論空気量 × 空気比
= 12 m³/h × 2.5
= 約 30 m³/h
空気比(くうきひ)= 理論の何倍の空気を実際に吸うか。 ちょうどの量では燃えきらず、煙が出る。だから多めに入れる。 クリーンバーンの新しい機種で2.0前後、古い機種や焚きはじめは3.0を超える。 ここでは間をとって2.5。数字を変えれば結果も変わる。計算機で試してほしい。
HOLE / 穴の大きさ
空気は、圧の差で動く。だから穴の大きさは、 「どれだけの圧の差で、どれだけ通したいか」で決まる。使う式はこれだ。
Q = 3600 × α × A × √( 2ΔP ÷ ρ ) Q = 通したい空気(m³/h) α = 流量係数 0.65(穴のふちで空気がちぢむので、そのぶん割り引く) A = 穴の面積(m²) ΔP = 内と外の圧の差(Pa・パスカル)… 4 Pa を目安にする ρ = 空気の重さ 1.2 kg/m³(20℃)
30 m³/h を 4 Pa で通したいなら、こうなる。
空気の速さ = √( 2×4 ÷ 1.2 ) = 2.58 m/s
穴の面積 = 30 ÷ ( 3600 × 0.65 × 2.58 ) = 0.00497 m²
= 49.7 cm² = 直径 約80mm
だから外気導入は φ100mm が定番になっている。
φ100 は面積78.5cm²。計算で出た49.7cm²に対して1.6倍の余裕がある。
ちゃんと理由があって、その太さなんだ。
※ 実際の配管は、曲がり・長さ・フード・防虫網でさらに抵抗が増える。 だから余裕を見る。長い配管や曲がりが多いときは、もう一段太くする。
DANGER / ここからが、こわい話だ
薪ストーブが吸うのは、さっき出した通り 30 m³/h。
台所のレンジフードは「強」で 300〜500 m³/h。
10倍から15倍だ。勝負にならない。
気密のいい家でレンジフードを「強」で回すと、家の中の気圧はぐんと下がる。 どれくらい下がるか、これも計算できる。
ΔP = ½ × ρ × v² v = Q ÷ ( α × A ) 延床132m²(40坪)・C値1.0 の家 → すきまの合計 132 cm² = 0.0132 m² レンジフード 400 m³/h = 0.111 m³/s v = 0.111 ÷ ( 0.65 × 0.0132 ) = 12.9 m/s ΔP = 0.5 × 1.2 × 12.9² = 約 100 Pa
目安は4 Pa以内。その25倍だ。
こうなると何が起きるか。煙突が、空気の入り口になる。
煙が上がっていかない。逆に、煙突から部屋に向かって空気が入ってくる。
そのとき煙も一緒に入ってくる。
煙は見える。においもする。だから気づける。
こわいのは 一酸化炭素(CO)のほうだ。
色がない。においがない。味もない。気づく手立てが、人間の側に無い。
| 空気中の濃度 | 体に起きること |
|---|---|
| 200 ppm | 2〜3時間で、軽い頭痛。「暖房で暖まりすぎたかな」と思う程度。 |
| 400 ppm | 1〜2時間で頭痛・吐き気。3時間で命に関わる。 |
| 800 ppm | 45分で頭痛・めまい・吐き気。2時間で意識を失う。 |
| 1600 ppm | 20分で頭痛。1時間で死に至る。 |
| 6400 ppm | 1〜2分で頭痛・めまい。10〜15分で死に至る。 |
一般的に知られている中毒の目安。体格・体調・年齢で変わる。 眠っている間に起きると、気づけない。これが、いちばんこわい。
| ① 外気導入を入れる | 燃やす空気を、部屋からではなく外から直接取る。 部屋の空気を奪わないので、負圧の喧嘩に巻き込まれにくい。 |
|---|---|
| ② 給気口を計算して付ける | 上の式で必要な面積を出し、 余裕をみた太さにする。防虫網・曲がりの抵抗も見込む。 |
| ③ 同時使用を設計で潰す | レンジフードを同時給排型にする、 連動の給気を入れる、など。「気をつけて使ってください」で終わらせない。 |
| ④ 一酸化炭素警報器を置く | 人間には気づけないのだから、機械に気づかせる。 寝室と、ストーブのある部屋に。数千円で買える。 |
| ⑤ 最後は現地で測る | 計算はあくまで計算だ。 差圧計で実際に測る。計算と現物が合っているかを確かめて、はじめて終わり。 |
気づけないものは、直せない。
だから、気づく仕掛けのほうを先に作る。それがうちのやり方だ。
CHECK / 自分の家で確かめる
| ドアの重さ | レンジフードを「強」にして、外へ開くドアを開けてみる。 やけに重い・風がヒューッと入るなら、負圧が出ている。 |
|---|---|
| 線香の煙 | 火をつける前のストーブの扉を少し開け、口元で線香をたく。 煙が煙突へ吸われず、部屋側へ流れるなら、引きが負けている。 |
| 焚きつけの煙 | 焚きはじめに煙が室内へ出てくるなら、 煙突が冷えているか、給気が足りない。「いつものこと」で済ませない。 |
| ちゃんと測るなら | 差圧計(マノメーター)で室内外の圧を測る。 うちは現地調査で測る。数字にすれば、言い争いにならない。 |
THE REAL ONE / 本体サイトには、もっとヤバいのがある
この店は定価で売る商店だ。ふざけた名前をしていると思われてもいい。
だが、中身は本気だ。その本気の全部は、こっちには収まらなかった。
本体サイト saunatostove.com に、
逃げずに全部書いた技術のページがある。
重力から書いた煙突の話。木の元素組成から導いた燃焼空気の話。
ステファン・ボルツマンまで戻ったATKの話。
ここまで書いている薪ストーブ屋が、日本にあるか。読んでから言ってくれ。
そのうえ本体サイトには、 読みものも施工事例も、機種の全スペックも、全部そこにある。 D'STYLE 公式サイトを見る →
CALL ME / 俺に連絡しろ
欲しい一台が決まってるなら、機種名をぶつけろ。まだ迷ってるなら、やりたいことを言え。
「うちに置けるのか」「工事込みでいくらだ」「この予算で何ができる」。
遠慮はいらねえ。予算の話も、ど真ん中から聞いてこい。
義理を通して、侠気で応える。まずは話せ。
設置工事は東北限定。写真を送ってくれりゃ、そこから話が早え。