1月の盛岡、夜。庭のサウナ小屋から出てきた3年目のお客様が、こう言います。「今日、ぬるいね」。温度計の数字は先月と同じ。ヒーターの設定も、薪の量も変えていません。この「ぬるい」を、私たちは長いあいだ気のせいだと片づけてきました。けれど、同じ温度の刺激を6週間続けたときにホルモンがどう動くかを、数値で追いかけた試験があります。女性選手40人、赤外線サウナ50℃、10分間。設定温度を上げる前に、読んでおきたい話です。
3年目の冬に、同じ温度が「ぬるい」と言われる
1月の盛岡。夜8時、外は氷点下です。庭のサウナ小屋の煙突から、細い煙がまっすぐ上がっています。風のない晩は、煙が空へ棒のように立ちます。
扉が開いて、湯気と一緒にお客様が出てきました。3年目の方です。開口一番、こう言われました。
「今日、ぬるいね」
温度計を見ます。先月と同じ数字。設定も触っていません。薪の量も、入れた時間も、いつも通りです。
こういう言葉を、私たちは毎年いくつか聞きます。そして、その次に来るのが決まって同じご相談です。もう少し温度を上げられませんか。ヒーターを一段大きいものに替えたい。薪サウナストーブをもっと大きい機種にしたい。
長いあいだ、感覚が慣れたのだろう、と思っていました。辛いものに舌が慣れるのと同じで、気持ちの問題だと。
その晩、私たちは設定を触りませんでした。代わりに柄杓で石に水をかけました。2杯。3杯目で、お客様は黙りました。
ただ、体のほうが本当に変わっている可能性を、数値で追いかけた試験があります。同じ温度の刺激を6週間続けたとき、ホルモンの動きがどう変わったか。そこを測った報告です。
先に断っておきます。その試験は、答えを出してはいません。出しているのは手がかりが一つだけで、しかも設計に弱いところがあります。それでも、温度を上げる前に読んでおく値打ちはあると思っています。順番に見ていきます。

40人の選手を、くじ引きではなく組にして分けた
その試験は、女性のチームスポーツ選手40人を対象にしています。2025年に報告されたものです。
40人を二つの群に分けます。ここは正確に書きます。くじ引きではありません。
原著によれば、まず所属チームを優先し、次に神経筋のパフォーマンス(20メートル走、カウンタームーブメントジャンプ、最大随意筋力)、そして年齢の順に条件を見て、近い者どうしを組にしたうえで二つの群へ振り分けています。ペアマッチングと呼ばれるやり方です。無作為割付、つまり振り分けを偶然に任せる方法ではありません。
この違いは、あとの読み方に効いてきます。偶然に任せると、測っていない条件までひっくるめて、たまたま均されることが期待できます。人が条件を見て組にすると、見た項目は揃いますが、見ていない項目は揃うとは限りません。生活の中身、睡眠、体調の波、練習量。そうやって残ったものが結果に紛れ込むことを、交絡といいます。
つまりこの試験は、変化の原因がサウナだと言い切るには弱い設計です。ここを先に置いておきます。
片方の20人は赤外線サウナに入る群。もう片方の20人は入らない群で、こちらを対照群、つまり比べるための群と呼びます。
やることは決まっています。まず、標準化したジャンプトレーニング。全員が同じ内容の、跳ぶ運動をします。その直後に、サウナ群は設定50℃の赤外線サウナに10分間。対照群は同じ時間、常温のところで安静にします。室内の相対湿度は、平均45%(ばらつき12)と記録されています。
これを6週間続けました。
赤外線サウナというのは、パネルから出る遠赤外線で体を直接温める方式です。空気そのものを90℃前後まで熱するフィンランド式とは、仕組みが違います。設定は50℃。サウナの温度としては、かなり低いほうです。
年齢は2群それぞれ22±5歳、23±5歳。この「±5」は、平均からのばらつきの幅を表す書き方(標準偏差)です。22歳ちょうどの人ばかりが集まっているわけではない、という意味になります。
40人で始めて、最後まで通ったのは33人。7人分は途中で抜けています。
1週目は上がった。6週目は上がらなかった
測ったのは唾液のコルチゾールです。
コルチゾールは、体が刺激を受けたときに動くホルモンのひとつ。血を採らなくても、唾液から濃さを測れます。運動でも、寒さでも、熱でも動きます。
採り方を先に見ておきます。唾液は自宅で、10時間の絶食をはさんだ朝に採取されています。サウナ室に入る直前と、出た直後を測ったものではありません。セッションをはさんだ朝どうしの比較です。ここを取り違えると、話がまるごとずれます。
1週目のセッション。赤外線サウナ群では、その翌朝のコルチゾールが5.1±8.6 nmol/L上がっていました。p=0.017。nmol/L(ナノモル毎リットル)は濃さの単位、pは「偶然でこれだけの差が出てしまう確率」の目安です。一般に0.05を下回ると統計上は有意、つまり偶然では説明しにくい、と扱う約束になっています。この上昇は対照群では見られなかった、と原著は書いています。
同じ測定を、6週目にもう一度おこないました。
セッションに伴う変化は、1週目が4.6±10.4 nmol/L、6週目がマイナス1.8±7.6 nmol/L。1週目のほうが変化が大きかった、というのが著者の書き方です。念のため書いておくと、この二つはサウナ群と対照群を比べた数字ではありません。1週目と6週目を比べた数字です。
そして、ここが肝心です。6週目については、交互作用も主効果も認められなかった、と明記されています。噛みくだくと、6週目には統計的に有意な効果は出ていない、ということです。
ですから、正確に言えばこうなります。1週目には上がった。6週目には、上がらなかった。「下がるようになった」とまでは、この試験は言っていません。
もうひとつ気をつけたいのが、±のあとの数字です。8.6、10.4、7.6。どれも平均の変化量より大きい。つまり、全員が同じように動いたわけではなく、人によってかなりばらついている、ということです。平均だけを見て「みんなこうなる」とは読めません。

この試験が言っていないこと
都合のよいところだけ拾わないために、限界を並べます。
まず、割り付けです。先に書いたとおり、くじ引きではなくペアマッチング。揃えたのはチーム、神経筋の力、年齢の三つで、それ以外は揃っていません。効いたのがサウナだと言い切れる設計ではありません。
次に、対象です。女性のチームスポーツ選手だけ。年齢は22±5歳と23±5歳ですから、若い競技者ということになります。男性は入っていません。年配の方も、運動習慣のない方も入っていません。日本人でもありません。この記事を読んでくださっている方の多くとは、体の条件がかなり違います。
次に人数。40人で始めて、完遂は33人。もともと小さな試験ですし、7人が抜けたことがどう影響しているかは、私たちには分かりません。
条件も限られます。50℃、10分間、赤外線、しかも運動の直後。90℃前後のフィンランド式サウナや、薪サウナストーブで焚いたサウナ室に、そのまま置き換えることはできません。湿度も、45%に保つよう管理したのではなく、平均45%・ばらつき12という実測の記録です。
そして結果そのもの。6週目に見えているのは、統計的に有意ではない変化です。数字の向きは下向きでしたが、偶然の範囲を超えたとは言えません。これを「6週間で反応が消えた」と読むのは行きすぎです。有意だったのは、1週目の上昇のほうです。
もうひとつ。コルチゾールの値が下がることが、そのまま体調の良さを意味するわけでもありません。ホルモンは、体の状態を映す物差しのひとつにすぎません。
まとめると、これは無作為化されていない小さな介入試験で、確かなのは1週目に上がったという一点だけです。ここから「サウナに慣れる」という現象そのものが証明された、とまでは言えません。可能性がひとつ示された、という受け取り方が正直なところだと思います。
温度計は、空気の温度しか測っていない
さて、現場の話に戻ります。ここから先は試験の話ではありません。私たちが岩手で見てきたことです。分けて読んでください。
先ほどの試験にも、湿度の数字は出てきました。平均45%、ばらつき12。ただしこれは、45%に保つよう管理した数字ではなく、測ったらそうだったという記録です。ですからこの試験は、湿度が体感を左右するという話を証明してはいません。その話は、現場のほうから出てきます。
温度計が示しているのは、空気の温度です。体が受け取る熱さは、それだけでは決まりません。湿度が上がれば、同じ数字でも熱く感じます。石に水をかけたときに、一瞬で肌がきゅっと締まるあの感じ。あれは温度計にはほとんど出てきません。
岩手の冬は乾きます。とくに薪ストーブで家を暖めている家は、室内の湿度がぐっと落ちます。サウナ室も同じで、乾いた空気のまま温度だけ高い、という状態になりやすい。私たちが見てきた範囲では、「ぬるい」と言われるサウナ室の何割かは、温度ではなく湿度の問題でした。数えて統計を取ったわけではありませんから、これはあくまで経験の話です。
冒頭のお客様の話に戻ります。あの晩、私たちは設定を触らずに、柄杓で石に水をかけました。2杯、3杯。4杯目のあと、お客様は「ああ、これこれ」と言って座り直しました。
温度を上げるのは、この確認をしてからでも遅くありません。ロウリュの回数を増やす、一度にかける水の量を変える、間隔を空けてみる。それだけで戻ることがあります。
もちろん、戻らないこともあります。そのときに、次の話になります。

石を増やす、という選択
サウナストーンは、蓄熱の素材です。熱を溜めて、ゆっくり返す。鉄板が熱くなるのも冷めるのも早いのに比べて、石はどちらもゆっくりです。
ロウリュをしたときに、蒸気がふわりと持ち上がってしばらく室内に残るかどうか。あれは石が抱えている熱の量で決まります。石が少ないと、水をかけた瞬間だけ熱くて、すぐ元に戻ります。「ぬるい」の正体が、これのこともあります。
ですから、出力を上げる前に石を見ます。
見るところは三つ。量が減っていないか。割れて粉になっていないか。積み方が詰まりすぎていないか。石は使っているうちに必ず割れます。割れた粉が下に溜まると、空気の通り道が塞がってヒーターにも負担がかかります。私たちは年に一度、全部下ろして積み直すことをおすすめしています。灰を掻き出すのと同じで、地味ですが効きます。
HARVIAの電気ヒーターは、機種によって載せられる石の量が違います。同じ出力でも、石をたくさん抱える機種は蒸気の持ちが変わります。設置のときに部屋の広さだけで選んでしまうと、あとから石を足したくても足せません。
これから設置される方には、出力と一緒に石の容量も見てください、とお伝えしています。カタログの隅にある「ストーン最大容量」という行です。あそこが、3年目の「ぬるい」に効いてきます。

薪サウナストーブという、蓄熱のもう一つの答え
薪サウナストーブは、また違う効き方をします。
HARVIAのレジェンド150(WK150LD)のような薪サウナストーブは、鋼の本体のまわりに石を抱かせる構造です。炉の中で薪が燃え、本体が熱を持ち、その熱が石へ移る。電気ヒーターのように狙った温度でぴたりと止まってはくれませんが、そのぶん溜まる熱の総量が違います。
数字にすると分かりやすいところがあります。メーカー公表値(2026年8月時点)で、レジェンド150は出力16kW、適用体積6〜13㎥、ストーン最大容量120kg。同じ6〜13㎥に対応するエム3(WKM3)は出力16.5kWで、ストーンは最大30kgです。部屋の大きさは同じでも、抱える石の量は4倍違います。ロウリュの蒸気がどれだけ持つか、焚き終わりの熱がどれだけ残るか。差が出るのはそこです。もっと大きな部屋なら、レジェンド300(WK300LD)は適用体積14〜28㎥、ストーン最大容量260kgになります。
火が落ちてからも、しばらく効きます。焚き終わりの、上からじんわり降りてくる熱。あれを好む方は多いです。
薪サウナストーブは、煙突の計画がそのまま安全の計画になります。断熱二重煙突、可燃物との離隔、貫通部の防火、炉台。岩手は薪が手に入りやすい土地ですし、私たちは薪ストーブを20年以上扱ってきましたから、原木の入手先も、乾かす場所の作り方も、灰の捨て方も一緒に相談できます。
ただし薪は手間でもあります。焚きつけてから使える温度まで上げるには時間がかかり、盛岡の冬は外気温で立ち上がりが変わります。私たちが見てきた範囲では、真冬は夏より30分ほど余分に見ておくと安心です。
その手間を減らしたい方には、ペレットサウナという選択もあります。外付けタンクからペレットを自動で送る方式で、薪を割る必要がありません。それでいて、炎はちゃんと見えます。
どれが自分に合うかは、続けたい頻度で決まります。週に一度なら、薪の手間も楽しみのうち。週に四度なら、話は変わります。

温度ではなく、入り方を変える
三つ目の選択が、設備をいっさい触らないことです。
先ほどの試験で、サウナに入っていた時間は10分でした。長くありません。運動の直後という条件もありました。それでも1週目の翌朝には有意な上昇があり、6週目には同じ上昇が見られなかった、と報告されています。繰り返しますが、6週目の結果は有意ではありませんでした。それでも、体の側が受け取り方を変える可能性はある、という程度には読めます。
刺激の受け取り方が変わるのなら、変える先は温度でなくてもいい。時間を延ばす、セット数を減らす、休憩を長く取る、水風呂を挟む、あるいは挟まない。順番を入れ替えるだけで、体感が変わることがあります。
とくに年配の方には、温度を上げる方向を最後に回すようにお願いしています。慣れたと感じているのは、熱さに対する感覚の話です。心臓や血圧にかかる負担まで同じように慣れているかどうかは、この試験からは何も分かりません。若い女性選手を6週間見ただけの試験ですから、当然です。
サウナ室での事故は、温度が高いときにだけ起きるものではありません。空腹、飲酒、寝不足。条件が重なるほうが危ない、というのが現場での実感です。持病のある方、お薬を飲んでいる方は、入り方を変える前に主治医にご相談ください。
物足りない、という感覚は悪いものではありません。ただ、その解決策の一番手が「温度を上げる」である必要はない、というだけです。
3年目のお客様が、結局変えたもの
冒頭のお客様の話の続きです。
その方は結局、ヒーターを替えませんでした。石を足して、積み直して、ロウリュの回数を増やしました。それから、入る時刻を変えました。以前は夕食のあとでしたが、先に入って、それから食べる。
翌シーズン、「ぬるい」と言われることはなくなりました。数値で確かめたわけではありませんから、何が効いたのかは分かりません。ご本人は「段取りを変えただけ」と言っています。
私たちが見てきた範囲では、3年目に何かを変える方は多いです。そしてその「何か」は、たいてい設備ではありません。焚きつける時刻、上段と下段の使い分け、休憩の場所、一人で入るか家族と入るか。そういうところです。
40人の女性選手の6週間の試験は、岩手のお客様のことを何ひとつ語ってはくれません。対象も条件も違いますし、割り付けもくじ引きではなく、はっきりしているのは1週目の上昇だけでした。ただ、同じ刺激を続けていると体の反応のほうが変わるのかもしれない、というその一点だけは、現場の実感と静かに重なりました。
温度計の数字が同じでも、去年の自分と今年の自分は違う。そう考えると、「ぬるいね」という一言は、不満ではなく報告なのかもしれません。
煙は、今夜もまっすぐ立っています。
温度を上げるのは、いちばん最後です。石を足す、湿度を見直す、入り方を変える。順にたどってもまだ足りないときに、ようやくヒーターや薪サウナストーブの容量の話になります。D'STYLEは岩手・盛岡で、HARVIAの電気ヒーターも、薪サウナストーブのレジェンド150(WK150LD)も、ペレットサウナも設置してきました。おすすめは、部屋の大きさと続けたい頻度で変わります。持病のある方、お薬を飲んでいる方は、入る前に主治医にご相談ください。本記事は研究の紹介であり、疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。
参照した研究
- 女性チームスポーツ選手40人(完遂33人、22±5歳と23±5歳の2群)を、所属チーム・神経筋パフォーマンス(20m走、カウンタームーブメントジャンプ、最大随意筋力)・年齢の順にペアマッチングして赤外線サウナ群20人と対照群20人へ振り分けた6週間の介入試験、2025年報告(PMC12416168)。無作為割付ではなく、交絡の影響が残る設計です。標準化したジャンプトレーニング後に設定50℃の赤外線サウナ10分または常温安静を実施。相対湿度は平均45%(ばらつき12)の実測値であり、管理された条件ではありません。
- 同試験の唾液コルチゾール(10時間の絶食後、自宅で朝に採取)。1週目のセッション翌朝、赤外線サウナ群で+5.1±8.6 nmol/L(p=0.017)、対照群では上昇なしと明記。セッションに伴う変化は1週目+4.6±10.4 nmol/L、6週目-1.8±7.6 nmol/L(群間比較ではなく1週目と6週目の比較)。6週目は交互作用も主効果も認められませんでした。赤外線サウナ設定50℃という条件下の結果であり、高温のフィンランド式サウナや当社製品の効果を示すものではありません。
- 本文のHARVIA薪サウナストーブのスペックはharvia.jp公表値(2026年8月2日時点)。レジェンド150(WK150LD)16kW・適用体積6〜13㎥・ストーン最大容量120kg、エム3(WKM3)16.5kW・6〜13㎥・30kg、レジェンド300(WK300LD)23kW・14〜28㎥・260kg。価格・仕様は改定される場合があります。
この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。



