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1週目は上がった。
6週目は上がらなかった。同じ50℃を6週間続けた40人の試験

文・有限会社D'STYLE|岩手・盛岡の薪ストーブとサウナの店

公開日:2026年8月21日

1月の盛岡、夜。庭のサウナ小屋から出てきた3年目のお客様が、こう言います。「今日、ぬるいね」。温度計の数字は先月と同じ。ヒーターの設定も、薪の量も変えていません。この「ぬるい」を、私たちは長いあいだ気のせいだと片づけてきました。けれど、同じ温度の刺激を6週間続けたときにホルモンがどう動くかを、数値で追いかけた試験があります。女性選手40人、赤外線サウナ50℃、10分間。設定温度を上げる前に、読んでおきたい話です。

3年目の冬に、同じ温度が「ぬるい」と言われる

1月の盛岡。夜8時、外は氷点下です。庭のサウナ小屋の煙突から、細い煙がまっすぐ上がっています。風のない晩は、煙が空へ棒のように立ちます。

扉が開いて、湯気と一緒にお客様が出てきました。3年目の方です。開口一番、こう言われました。

「今日、ぬるいね」

温度計を見ます。先月と同じ数字。設定も触っていません。薪の量も、入れた時間も、いつも通りです。

こういう言葉を、私たちは毎年いくつか聞きます。そして、その次に来るのが決まって同じご相談です。もう少し温度を上げられませんか。ヒーターを一段大きいものに替えたい。薪サウナストーブをもっと大きい機種にしたい。

長いあいだ、感覚が慣れたのだろう、と思っていました。辛いものに舌が慣れるのと同じで、気持ちの問題だと。

その晩、私たちは設定を触りませんでした。代わりに柄杓で石に水をかけました。2杯。3杯目で、お客様は黙りました。

ただ、体のほうが本当に変わっている可能性を、数値で追いかけた試験があります。同じ温度の刺激を6週間続けたとき、ホルモンの動きがどう変わったか。そこを測った報告です。

先に断っておきます。その試験は、答えを出してはいません。出しているのは手がかりが一つだけで、しかも設計に弱いところがあります。それでも、温度を上げる前に読んでおく値打ちはあると思っています。順番に見ていきます。

白樺の林
薪サウナストーブに火が入ったサウナ室。壁のヴィヒタが乾くほど、岩手の冬は室内の湿度が落ちます(当社施工)

40人の選手を、くじ引きではなく組にして分けた

その試験は、女性のチームスポーツ選手40人を対象にしています。2025年に報告されたものです。

40人を二つの群に分けます。ここは正確に書きます。くじ引きではありません。

原著によれば、まず所属チームを優先し、次に神経筋のパフォーマンス(20メートル走、カウンタームーブメントジャンプ、最大随意筋力)、そして年齢の順に条件を見て、近い者どうしを組にしたうえで二つの群へ振り分けています。ペアマッチングと呼ばれるやり方です。無作為割付、つまり振り分けを偶然に任せる方法ではありません。

この違いは、あとの読み方に効いてきます。偶然に任せると、測っていない条件までひっくるめて、たまたま均されることが期待できます。人が条件を見て組にすると、見た項目は揃いますが、見ていない項目は揃うとは限りません。生活の中身、睡眠、体調の波、練習量。そうやって残ったものが結果に紛れ込むことを、交絡といいます。

つまりこの試験は、変化の原因がサウナだと言い切るには弱い設計です。ここを先に置いておきます。

片方の20人は赤外線サウナに入る群。もう片方の20人は入らない群で、こちらを対照群、つまり比べるための群と呼びます。

やることは決まっています。まず、標準化したジャンプトレーニング。全員が同じ内容の、跳ぶ運動をします。その直後に、サウナ群は設定50℃の赤外線サウナに10分間。対照群は同じ時間、常温のところで安静にします。室内の相対湿度は、平均45%(ばらつき12)と記録されています。

これを6週間続けました。

赤外線サウナというのは、パネルから出る遠赤外線で体を直接温める方式です。空気そのものを90℃前後まで熱するフィンランド式とは、仕組みが違います。設定は50℃。サウナの温度としては、かなり低いほうです。

年齢は2群それぞれ22±5歳、23±5歳。この「±5」は、平均からのばらつきの幅を表す書き方(標準偏差)です。22歳ちょうどの人ばかりが集まっているわけではない、という意味になります。

40人で始めて、最後まで通ったのは33人。7人分は途中で抜けています。

1週目は上がった。6週目は上がらなかった

測ったのは唾液のコルチゾールです。

コルチゾールは、体が刺激を受けたときに動くホルモンのひとつ。血を採らなくても、唾液から濃さを測れます。運動でも、寒さでも、熱でも動きます。

採り方を先に見ておきます。唾液は自宅で、10時間の絶食をはさんだ朝に採取されています。サウナ室に入る直前と、出た直後を測ったものではありません。セッションをはさんだ朝どうしの比較です。ここを取り違えると、話がまるごとずれます。

1週目のセッション。赤外線サウナ群では、その翌朝のコルチゾールが5.1±8.6 nmol/L上がっていました。p=0.017。nmol/L(ナノモル毎リットル)は濃さの単位、pは「偶然でこれだけの差が出てしまう確率」の目安です。一般に0.05を下回ると統計上は有意、つまり偶然では説明しにくい、と扱う約束になっています。この上昇は対照群では見られなかった、と原著は書いています。

同じ測定を、6週目にもう一度おこないました。

セッションに伴う変化は、1週目が4.6±10.4 nmol/L、6週目がマイナス1.8±7.6 nmol/L。1週目のほうが変化が大きかった、というのが著者の書き方です。念のため書いておくと、この二つはサウナ群と対照群を比べた数字ではありません。1週目と6週目を比べた数字です。

そして、ここが肝心です。6週目については、交互作用も主効果も認められなかった、と明記されています。噛みくだくと、6週目には統計的に有意な効果は出ていない、ということです。

ですから、正確に言えばこうなります。1週目には上がった。6週目には、上がらなかった。「下がるようになった」とまでは、この試験は言っていません。

もうひとつ気をつけたいのが、±のあとの数字です。8.6、10.4、7.6。どれも平均の変化量より大きい。つまり、全員が同じように動いたわけではなく、人によってかなりばらついている、ということです。平均だけを見て「みんなこうなる」とは読めません。

D'STYLEの施工例
コントロールパネルが示すのは空気の温度だけ。同じ92℃でも、湿度と体の慣れで受け取る熱さは変わります

この試験が言っていないこと

都合のよいところだけ拾わないために、限界を並べます。

まず、割り付けです。先に書いたとおり、くじ引きではなくペアマッチング。揃えたのはチーム、神経筋の力、年齢の三つで、それ以外は揃っていません。効いたのがサウナだと言い切れる設計ではありません。

次に、対象です。女性のチームスポーツ選手だけ。年齢は22±5歳と23±5歳ですから、若い競技者ということになります。男性は入っていません。年配の方も、運動習慣のない方も入っていません。日本人でもありません。この記事を読んでくださっている方の多くとは、体の条件がかなり違います。

次に人数。40人で始めて、完遂は33人。もともと小さな試験ですし、7人が抜けたことがどう影響しているかは、私たちには分かりません。

条件も限られます。50℃、10分間、赤外線、しかも運動の直後。90℃前後のフィンランド式サウナや、薪サウナストーブで焚いたサウナ室に、そのまま置き換えることはできません。湿度も、45%に保つよう管理したのではなく、平均45%・ばらつき12という実測の記録です。

そして結果そのもの。6週目に見えているのは、統計的に有意ではない変化です。数字の向きは下向きでしたが、偶然の範囲を超えたとは言えません。これを「6週間で反応が消えた」と読むのは行きすぎです。有意だったのは、1週目の上昇のほうです。

もうひとつ。コルチゾールの値が下がることが、そのまま体調の良さを意味するわけでもありません。ホルモンは、体の状態を映す物差しのひとつにすぎません。

まとめると、これは無作為化されていない小さな介入試験で、確かなのは1週目に上がったという一点だけです。ここから「サウナに慣れる」という現象そのものが証明された、とまでは言えません。可能性がひとつ示された、という受け取り方が正直なところだと思います。

温度計は、空気の温度しか測っていない

さて、現場の話に戻ります。ここから先は試験の話ではありません。私たちが岩手で見てきたことです。分けて読んでください。

先ほどの試験にも、湿度の数字は出てきました。平均45%、ばらつき12。ただしこれは、45%に保つよう管理した数字ではなく、測ったらそうだったという記録です。ですからこの試験は、湿度が体感を左右するという話を証明してはいません。その話は、現場のほうから出てきます。

温度計が示しているのは、空気の温度です。体が受け取る熱さは、それだけでは決まりません。湿度が上がれば、同じ数字でも熱く感じます。石に水をかけたときに、一瞬で肌がきゅっと締まるあの感じ。あれは温度計にはほとんど出てきません。

岩手の冬は乾きます。とくに薪ストーブで家を暖めている家は、室内の湿度がぐっと落ちます。サウナ室も同じで、乾いた空気のまま温度だけ高い、という状態になりやすい。私たちが見てきた範囲では、「ぬるい」と言われるサウナ室の何割かは、温度ではなく湿度の問題でした。数えて統計を取ったわけではありませんから、これはあくまで経験の話です。

冒頭のお客様の話に戻ります。あの晩、私たちは設定を触らずに、柄杓で石に水をかけました。2杯、3杯。4杯目のあと、お客様は「ああ、これこれ」と言って座り直しました。

温度を上げるのは、この確認をしてからでも遅くありません。ロウリュの回数を増やす、一度にかける水の量を変える、間隔を空けてみる。それだけで戻ることがあります。

もちろん、戻らないこともあります。そのときに、次の話になります。

凍ったバルト海
石にかけた水が蒸気になって立ちのぼるところ。設定温度を上げる前に、まず湿度で体感が戻らないか試します

石を増やす、という選択

サウナストーンは、蓄熱の素材です。熱を溜めて、ゆっくり返す。鉄板が熱くなるのも冷めるのも早いのに比べて、石はどちらもゆっくりです。

ロウリュをしたときに、蒸気がふわりと持ち上がってしばらく室内に残るかどうか。あれは石が抱えている熱の量で決まります。石が少ないと、水をかけた瞬間だけ熱くて、すぐ元に戻ります。「ぬるい」の正体が、これのこともあります。

ですから、出力を上げる前に石を見ます。

見るところは三つ。量が減っていないか。割れて粉になっていないか。積み方が詰まりすぎていないか。石は使っているうちに必ず割れます。割れた粉が下に溜まると、空気の通り道が塞がってヒーターにも負担がかかります。私たちは年に一度、全部下ろして積み直すことをおすすめしています。灰を掻き出すのと同じで、地味ですが効きます。

HARVIAの電気ヒーターは、機種によって載せられる石の量が違います。同じ出力でも、石をたくさん抱える機種は蒸気の持ちが変わります。設置のときに部屋の広さだけで選んでしまうと、あとから石を足したくても足せません。

これから設置される方には、出力と一緒に石の容量も見てください、とお伝えしています。カタログの隅にある「ストーン最大容量」という行です。あそこが、3年目の「ぬるい」に効いてきます。

D'STYLEの施工例
木で包んだ自宅サウナ室とHARVIAのヒーター。石は熱をためる素材で、量と積み方で蒸気の持ちが変わります

薪サウナストーブという、蓄熱のもう一つの答え

薪サウナストーブは、また違う効き方をします。

HARVIAのレジェンド150(WK150LD)のような薪サウナストーブは、鋼の本体のまわりに石を抱かせる構造です。炉の中で薪が燃え、本体が熱を持ち、その熱が石へ移る。電気ヒーターのように狙った温度でぴたりと止まってはくれませんが、そのぶん溜まる熱の総量が違います。

数字にすると分かりやすいところがあります。メーカー公表値(2026年8月時点)で、レジェンド150は出力16kW、適用体積6〜13㎥、ストーン最大容量120kg。同じ6〜13㎥に対応するエム3(WKM3)は出力16.5kWで、ストーンは最大30kgです。部屋の大きさは同じでも、抱える石の量は4倍違います。ロウリュの蒸気がどれだけ持つか、焚き終わりの熱がどれだけ残るか。差が出るのはそこです。もっと大きな部屋なら、レジェンド300(WK300LD)は適用体積14〜28㎥、ストーン最大容量260kgになります。

火が落ちてからも、しばらく効きます。焚き終わりの、上からじんわり降りてくる熱。あれを好む方は多いです。

薪サウナストーブは、煙突の計画がそのまま安全の計画になります。断熱二重煙突、可燃物との離隔、貫通部の防火、炉台。岩手は薪が手に入りやすい土地ですし、私たちは薪ストーブを20年以上扱ってきましたから、原木の入手先も、乾かす場所の作り方も、灰の捨て方も一緒に相談できます。

ただし薪は手間でもあります。焚きつけてから使える温度まで上げるには時間がかかり、盛岡の冬は外気温で立ち上がりが変わります。私たちが見てきた範囲では、真冬は夏より30分ほど余分に見ておくと安心です。

その手間を減らしたい方には、ペレットサウナという選択もあります。外付けタンクからペレットを自動で送る方式で、薪を割る必要がありません。それでいて、炎はちゃんと見えます。

どれが自分に合うかは、続けたい頻度で決まります。週に一度なら、薪の手間も楽しみのうち。週に四度なら、話は変わります。

フィンランドの情景
HARVIAの薪サウナストーブ レジェンド150(WK150LD)。ストーン最大容量120kg、石を多く抱える機種ほど焚き終わりの熱が長く残ります

温度ではなく、入り方を変える

三つ目の選択が、設備をいっさい触らないことです。

先ほどの試験で、サウナに入っていた時間は10分でした。長くありません。運動の直後という条件もありました。それでも1週目の翌朝には有意な上昇があり、6週目には同じ上昇が見られなかった、と報告されています。繰り返しますが、6週目の結果は有意ではありませんでした。それでも、体の側が受け取り方を変える可能性はある、という程度には読めます。

刺激の受け取り方が変わるのなら、変える先は温度でなくてもいい。時間を延ばす、セット数を減らす、休憩を長く取る、水風呂を挟む、あるいは挟まない。順番を入れ替えるだけで、体感が変わることがあります。

とくに年配の方には、温度を上げる方向を最後に回すようにお願いしています。慣れたと感じているのは、熱さに対する感覚の話です。心臓や血圧にかかる負担まで同じように慣れているかどうかは、この試験からは何も分かりません。若い女性選手を6週間見ただけの試験ですから、当然です。

サウナ室での事故は、温度が高いときにだけ起きるものではありません。空腹、飲酒、寝不足。条件が重なるほうが危ない、というのが現場での実感です。持病のある方、お薬を飲んでいる方は、入り方を変える前に主治医にご相談ください。

物足りない、という感覚は悪いものではありません。ただ、その解決策の一番手が「温度を上げる」である必要はない、というだけです。

3年目のお客様が、結局変えたもの

冒頭のお客様の話の続きです。

その方は結局、ヒーターを替えませんでした。石を足して、積み直して、ロウリュの回数を増やしました。それから、入る時刻を変えました。以前は夕食のあとでしたが、先に入って、それから食べる。

翌シーズン、「ぬるい」と言われることはなくなりました。数値で確かめたわけではありませんから、何が効いたのかは分かりません。ご本人は「段取りを変えただけ」と言っています。

私たちが見てきた範囲では、3年目に何かを変える方は多いです。そしてその「何か」は、たいてい設備ではありません。焚きつける時刻、上段と下段の使い分け、休憩の場所、一人で入るか家族と入るか。そういうところです。

40人の女性選手の6週間の試験は、岩手のお客様のことを何ひとつ語ってはくれません。対象も条件も違いますし、割り付けもくじ引きではなく、はっきりしているのは1週目の上昇だけでした。ただ、同じ刺激を続けていると体の反応のほうが変わるのかもしれない、というその一点だけは、現場の実感と静かに重なりました。

温度計の数字が同じでも、去年の自分と今年の自分は違う。そう考えると、「ぬるいね」という一言は、不満ではなく報告なのかもしれません。

煙は、今夜もまっすぐ立っています。

温度を上げるのは、いちばん最後です。石を足す、湿度を見直す、入り方を変える。順にたどってもまだ足りないときに、ようやくヒーターや薪サウナストーブの容量の話になります。D'STYLEは岩手・盛岡で、HARVIAの電気ヒーターも、薪サウナストーブのレジェンド150(WK150LD)も、ペレットサウナも設置してきました。おすすめは、部屋の大きさと続けたい頻度で変わります。持病のある方、お薬を飲んでいる方は、入る前に主治医にご相談ください。本記事は研究の紹介であり、疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。

参照した研究

この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。

D'STYLE
橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)

住田町の山主だった祖父から三代、火と生きてきました。英国RODTECH社認定の煙突掃除 安全インストラクター(東北第一号)。盛岡・国道4号線沿いのショールームにいます。

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