体重計の数字が、汗をかいた翌朝だけ軽くなっている。そんな経験をした方は多いと思います。「サウナで痩せますか」は、盛岡の店舗でも一番よく聞かれる質問のひとつです。今回は、その数字の出どころを、実際に測った研究まで遡って読んでみます。答えはどちらも本当で、どちらも半分の話でした。
体重計の針が動く朝
薪ストーブに火を入れる季節になると、店の電話が増えます。サウナに関する相談の多くは温度や設置の話ですが、月に何度かは「痩せますか」という質問が混ざります。正直に答えると、私たちはこれまで濁してきました。感覚としては「体が軽くなる気はする」としか言えなかったからです。今回、その感覚の中身を、実際に汗と体重を測った研究まで遡って確かめてみました。

90℃・40分で消費した413kcal
ポーランドの研究チームが、座り仕事中心で少し体重が重めの男子大学生45名(平均20.76歳)を対象に、90〜91℃・湿度14〜16%のサウナに10分ずつ4回、間に5分の休憩を挟んで入ってもらいました。1セットごとの消費エネルギーは73.04kcal、93.82kcal、114.91kcal、131.40kcalと回を追うごとに増え、40分の合計はおよそ413kcalでした。心拍数は入る前の98拍から平均133.36拍まで上がり、最も高い人では160拍に達していました。ウォーキング1時間分に近い消費量が、座っているだけで出ていたことになります。
でも体重減の中身は、ほぼ水分
ただし同じ研究では、60分のプロトコル全体で体重が0.65±0.24kg減ったことも記録されています。ここが大事なところで、この研究は脂肪の減少量を直接測定したものではありません。体重減のほとんどは発汗による水分の喪失で説明できると考えるのが自然で、「脂肪が何グラム減ったか」という数字はそもそもこの論文には存在しません。ここで具体的な脂肪減少量を挙げるとすれば、それは検証されていない推測にすぎず、誤解を招きます。翌朝に体重が軽くなっていたとしても、それは水を飲んで眠れば戻る種類の軽さだということです。

血圧はむしろ上がっていた
見落とされがちな数字がもうひとつあります。収縮期血圧は128.40から140.67mmHgへ、拡張期血圧は82.89から94.27mmHgへと、いずれも上昇していました。心拍も最高160拍まで出ています。これは「痩せる」という言葉の裏側で、体には相応の負荷がかかっているという記録でもあります。自宅サウナは施設と違って時間を気にせず一人で長く入れてしまうぶん、この数字は知っておいていただきたいところです。

3週間続けた場合には、別の数字が出ている
1回の負荷とは別に、継続した場合の研究もあります。健康な男性16名が90±2℃のサウナに15分×3セットを、3週間かけて計10回行ったところ、総コレステロールとLDL(いわゆる悪玉コレステロールの比率が高い成分)が期間中から終了後1週間にわたって低下し、中性脂肪も一部の測定時点で下がっていたと報告されています。一方でHDL(善玉コレステロールと呼ばれる成分)には有意な差は見られませんでした。著者らはこの変化を、中強度の有酸素運動に近い変化と表現していますが、これは観察された変化であって、サウナが脂肪を燃やしたと証明したものではありません。因果関係を確かめる研究ではないという点は、繰り返しお伝えしておきます。
被験者は、若い男性が中心だったこと
ここまでの2つの研究は、いずれも被験者が男子大学生45名、あるいは健康な男性16名という、限られた集団でした。年齢も20代前半に偏っています。年配の方や女性、持病のある方に同じ変化が起きるとは限りません。研究の条件をそのまま自分にあてはめず、あくまで参考として読んでいただくのがよいと思います。

岩手の冬、体重計に乗るタイミング
岩手の冬は運動量が落ちる季節です。除雪はしていても、外を歩く距離はぐっと減ります。そんな時期に体重が動くと、つい一喜一憂してしまいますが、サウナに入った直後の体重は水分が抜けた分だけ軽く出ます。もし体重の変化を見たいのであれば、入る前と、水を飲んで一晩落ち着いた翌朝とで比べるくらいが、実務的な読み方だと思います。

設計の話として、私たちにできること
D'STYLEでは薪ストーブとペレットストーブ、両方のサウナヒーターを扱っています。写真の92℃という表示は当社が施工した室内サウナのコントロールパネルで、実際に90℃前後まで上げて使う方が多いのも事実です。ただ、心拍が最高160拍まで上がる負荷だという前提を知ったうえで、無理のない時間で入っていただきたいというのが、施工店としての立場です。血圧や心拍に不安のある方、持病や服薬中の方は、サウナを新しく始める前に主治医にご相談ください。私たちができるのは、盛岡の冬でも安全に使い続けられる室内環境と、休憩スペースの動線を設計することです。
サウナに入れば、確かにカロリーは消費されます。90℃前後で40分入れば400kcalを超えるという記録もあります。ただ、体重計に出る軽さの多くは水分であり、脂肪が減ったことの証明にはなりません。血圧や心拍にも相応の負荷がかかっていることを、数字は同時に示していました。痩せるための道具としてではなく、一日の終わりに体を温め、静かに過ごすための場所として使っていただくのが、私たちの願いです。体調や持病に不安のある方は、始める前に主治医へご相談ください。本記事は研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。
参照した研究
- Podstawski R ほか. BioMed Research International. 2019;2019:7535140(PMC6360547)
- Pilch W ほか. 2014(PMID 25001587)
この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。



