十二月の盛岡は、日が落ちるのが早い。四時半にはもう外が青く沈みます。夕方の除雪を終えて、台所で湯を沸かしながら手元の画面を眺めていたら、サウナで睡眠が良くなった人が83.5%、という見出しが流れてきました。よく見かける数字です。ただ、この数字がどんな人たちに、どうやって聞いた答えなのかまで書かれていることは、あまりありません。元の調査まで戻ってみます。
83.5%という数字は、どこの誰の答えか
まず、出どころから辿ります。
この数字はオンラインで行われた世界サウナ調査のもので、有効回答は482件でした。内訳は男性51.3%、女性48.7%。大学卒業以上の学歴を持つ人が81.8%、定期的に運動している人が78.8%。そのうち83.5%が睡眠の改善を報告し、その感じは最長で2晩続いたと答えたと報告されています(Hussain J, Cohen M ら, Complementary Therapies in Medicine, 2019年/RMIT大学ほか)。
押さえておきたいことが、三つあります。
一つめは、これが自己申告のアンケートだということ。脳波を測ったわけでも、血液を採ったわけでもありません。回答した人が自分の感覚を思い出して答えた、その集計が83.5%です。
二つめは、オンラインで参加者を募っている点です。サウナの調査です、と聞いてわざわざ答えようと思った人が集まっている。もともとサウナが好きな人、体調に関心の高い人のほうへ寄っている可能性があります。大卒以上81.8%、運動習慣78.8%という内訳は、その偏りをそのまま映した数字だと読むのが正直なところでしょう。
三つめは、これが日本人を対象にした調査ではないということ。そしてもう一歩踏み込むと、回答者がどんな場所のサウナを使っているのか、自宅の一室なのか、公共の施設なのか、ジムの中の小さな部屋なのか、その内訳までは、私たちが今回この論文から読み取ることはできていません。ですから83.5%を、自宅にサウナがある人たちの数字として持ち出すことはできません。
ここは最後まで外さずに読み進めます。サウナを売っている私たちにとって都合よく読める場所ほど、いちばん慎重に扱うべきところだと思っているからです。

横断調査は、原因と結果を分けられない
この調査は横断調査と呼ばれる形です。横断調査とは、ある一時点でいろいろな人にまとめて聞いて、後から見比べる調べ方のこと。同じ人の前と後を、長い時間かけて追いかけたわけではありません。
この形には、生まれつきの弱点があります。原因と結果を分けられないのです。
たとえば、毎朝の雪かきを何年も続けている人は腰が丈夫だ、という話。雪かきが腰を鍛えたのかもしれません。けれど、もともと腰が丈夫だから雪かきを続けられている、という順番も同じくらいあり得ます。どちらが先かは、その場で見比べただけでは分かりません。
サウナと睡眠も同じです。よく眠れている人ほど日中に元気で、サウナに入る余裕もある。そういう向きの説明も、きちんと成り立ちます。さらに、運動の習慣、生活のリズム、家に湯や熱源のある住まいかどうか。睡眠にもサウナ通いにも同時に効いてくる別の要因は、いくつも考えられます。
さらに言えば、答えた人は自分がサウナを使っていることを分かった上で答えています。せっかく答えるのだから良かったと書きたい、という気持ちが混じらないとは言い切れません。アンケートという道具には、そういう癖があります。数字を疑ってかかるためではなく、数字を正しい重さで持つために、そこは覚えておきます。
ですから、この83.5%はサウナが睡眠を良くした証拠ではありません。サウナを使っている人たちが、睡眠が良くなったと答えた割合です。この記事で報告されていますという言い方を繰り返すのは、そのためです。
スウェーデンの女性384人が答えたこと
もう一つ、新しい調査があります。
2025年の3月から4月にかけて、スウェーデンに住む女性384人に聞いた横断調査です(International Journal of Circumpolar Health, 2025年)。平均年齢は51.77歳。
まず、利用の頻度から。毎日が2.9%、週に数回が32.3%、週に1回が35.9%、それより少ないが28.9%。この四つで100%です。よく引かれる68.2%という数字は、このうち週に1回の35.9%と週に数回の32.3%を足したもの。つまり週1回から週に数回までの層が、合わせて68.2%を占めていた、という意味になります。
ここは数え方を間違えやすいところなので、もう一度書きます。毎日という人は、68.2%の中には入っていません。別枠の2.9%、384人のうち11人です。後の節でこの数字をもう一度使うので、内訳のまま置いておきます。
そして、子どもの頃から10代の頃、つまり18歳より前にはもうサウナが習慣になっていた、と答えた人が73.8%。この設問に答えたのは384人ではなく382人で、そのうち282人という数です。分母が少し違うのは、答えなかった人が2人いたということでしょう。細かい話ですが、割合を書き写すときに一番ずれやすいのがここです。
睡眠は4点尺度で聞かれました。4段階のどれかを選んでもらう形式です。その平均が、サウナを使う前で3.01、後で3.29。統計の上で、偶然では起きにくい差だったと報告されています。身体の痛みについても2.68から3.10へ、同じように差がついたと報告されています。
p値という言葉が、こういう場面で出てきます。ざっくり言えば、その差が偶然のいたずらで出てしまう確率の目安です。この二つはどちらもp<.001。千回に一回も起きないくらい、という意味になります。ただしp値が語るのはそこまでで、差が大きいかどうか、原因が何かについては何も語ってくれません。
もう一点。この4点尺度は、サウナを使う前と後を、回答者が思い出して答える形でした。記憶をたどって比べる以上、良くなったという印象が先にあれば、前の点が低めのほうへ引き寄せられることもあります。
そしてこの調査も、自己申告の横断調査です。回答者は384人全員が女性で、スウェーデンに住む人たち。日本の暮らしの数字ではありません。
さらに、どうやって384人を集めたか。ここが大事です。この調査の回答者は、SNS上のサウナ愛好グループ二つ、サウナ協会一つ、それに大学二校の公式サイトに出た告知を見て集まった人たちでした。無作為に選ばれた384人ではなく、告知を見て自分から手を挙げた384人です。論文自身も、これが非確率標本であること、選択バイアスがあること、回答者に高学歴で就業中の人が多いこと、そして比べるための対照群がないことを、限界として挙げています。サウナ愛好グループに声をかけて集めた集団ですから、先ほどの世界サウナ調査よりもさらにサウナ好きの側へ寄っていると考えるのが自然でしょう。都合の悪い前提ほど、先に書いておきます。

0.28という差を、どう受け取るか
3.01が3.29になった。差は0.28です。
4点満点の物差しの上での、0.28。1点分きれいに上がったわけではありません。四段階の成績表が、平均で0.28だけ上がったようなものです。全体で見れば確かに動いた。けれど一人ひとりの実感としては、前より少しいい、くらいの幅かもしれません。
ここを取り違えると、数字が一人歩きします。統計的に有意というのは、偶然では説明しにくいという意味であって、大きいでも、暮らしが変わるでもありません。この二つはまったく別のことです。
もう一つ、正直に書いておきます。同じ調査で、身体の痛みのスコアは2.68から3.10へ、0.42動いています。睡眠より幅が大きい。つまり睡眠だけが特別に動いたわけではない、という読み方もできます。サウナのあとに気分よく答えている、その全体の底上げが両方に効いている可能性を、私たちは否定できません。
それから、この前後の比較は、年齢や運動習慣といった他の要因の影響を差し引かずに出された数字です。ここは私たちの推測ではありません。論文が限界の項で、睡眠と身体の痛みの前後の変化は共変量を調整しない対応のあるt検定で解析したものであり、交絡因子は考慮されていない、とはっきり書いています。
つまり3.01から3.29という0.28の中には、年齢も、運動の習慣も、もともとの体調も、季節も、まざったまま入っている。分からないのではなく、調整していないと分かっている。そのぶん差の重さを軽く見積もって読む、というのが正しい持ち方だと思います。
論文の中では、女性の体温調節が月経周期に伴うホルモンの変動の影響を受ける点も指摘されています。同じ室温が、同じ体感になるとは限らない。この一文は、後で設計の話に効いてきます。
回数が多いほど良い、ではなかった
世界サウナ調査には、もう一つ触れておきたい結果があります。
SF-12という尺度があります。12個の質問で、その人の健康度をおおまかに測る物差しです。このうち心の健康を表す側の点数が、月に5回から15回サウナを使う群で、他の群より有意に高かったと報告されています(Kruskal-Wallis検定, p=0.0368)。Kruskal-Wallis検定は、三つ以上のグループの分布をまとめて比べるときに使う統計の手法のことです。
ここで注意が要ります。
研究者はあらかじめ利用回数で群を区切っておいて、その群同士を比べました。ですから、月5回から15回が最適な境目だと研究が突き止めた、という話ではありません。あらかじめ用意された箱のうち、その箱の点数が高かった。それだけのことです。
それに、これも群と群の比べっこですから、向きは決められません。よく使う人ほど心の健康度が高くなったのか、心の健康度が高い人ほどよく使えているのか。この調査では分けられません。p=0.0368という値も、千回に一回という先ほどの差に比べれば、ずいぶん際どいところにあります。
ただ、素朴に面白いところがあります。回数が多いほど良い、という単純な形では出ていない。たくさん入るほど点が上がっていく、という話ではなかったのです。
なお、睡眠についてこの調査が示しているのは、83.5%という割合までです。残りの人がどうだったかは、この数字の外側にあります。
週に何回、焚けるか。頻度の話は、設備の話になる
先に、はっきり書いておきます。
ここから頻度の話をしますが、月5回から15回という区分は、健康効果を約束する頻度ではありません。前の節で書いたとおり、研究者があらかじめ用意した箱の一つで、しかも群と群の比べっこです。この頻度を確保すれば心の健康が良くなる、という意味には読めませんし、そう読ませるために書くつもりもありません。ここから先で扱うのは、効くかどうかではなく、岩手の冬にそもそもどれくらいの頻度が現実に作れるのか、という設備と動線の話だけです。
その上で、数字だけ並べておきます。月に5回から15回。週にならせば、およそ1回から4回弱です。スウェーデンの調査では、週に1回と週に数回を合わせて68.2%、毎日という人がそれとは別に2.9%でした。北欧の調査に出てくる利用頻度は、だいたいこのあたりの幅に落ちる。分かるのは、それくらいのことです。
なぜ北欧でこの頻度が出てくるのか。家にサウナがあるからだ、と言い切ってしまいたくなります。ただ、今回読んだ二つの調査は、回答者がどこのサウナを使っているかまでは教えてくれませんでした。手元の数字で言えるのは、384人のうち73.8%が18歳より前にサウナを始めていた、というところまでです。習慣が始まる年齢が、日本とはずいぶん違う。そこから先は、私たちの推測になります。推測は推測と書いておきます。
その上で、岩手で同じくらいの頻度を作ろうとすると、話は途端に設備の話になります。
私たちが見てきた範囲では、施設に通う形は冬に落ちます。1月の盛岡は路面が凍り、日が短く、夕方は除雪で潰れる。往復1時間という距離が、そのまま行かない理由になります。夏は週2回だった人が、1月は月1回。よくある落ち方です。
自宅にあると、頻度は気持ちひとつで決まります。ただし焚けば薪が減り、灰が溜まり、掃除の日が来る。手間の側も同じだけ増えます。
ですから私たちは、図面を引く前に一つお聞きします。週に何回、焚くつもりですか。
週1回なら、薪を割る手間は楽しみのうちに収まります。週4回だと、薪の置き場と運ぶ距離が現実の問題になる。同じ広さのサウナでも、そこで熱源の選び方も、薪棚の位置も、扉をどちらに開かせるかも変わってきます。
薪の量も、頻度で桁が変わります。週1回と週4回では、ひと冬に積んでおく量がまるで違う。ですから週4回と伺ったご家庭に、薪サウナストーブ一本だけをおすすめすることは、私たちはあまりしません。HARVIAの電気サウナヒーターを併せて設置しておいて、平日は電気、休みの日は薪、という分け方をされるお宅も岩手にはあります。着火と火の番の手間を減らしたい方には、ペレットサウナという選択肢もあります。頻度を落とさない工夫は、熱源を一つに決めないところから始まることもあります。

回答者が全員女性だった調査から、設計の話をひとつ
スウェーデンの384人は、全員が女性でした。平均51.77歳。
この一点は、私たちにとって他人事ではありません。岩手で自宅にサウナを作るご家庭は、使うのが一人だけということのほうが少ないからです。ご夫婦、お子さん、同居の親御さん。年齢も体格も、暑さの感じ方も違う人が、同じ一部屋を使います。
私たちが見てきた範囲では、家族で使うサウナで最初にもめるのは、たいてい温度です。
設計の側でできることは、実はいくつかあります。
一つはベンチの段数。同じ室内でも、上段と下段では体感がはっきり違います。天井に近いほど熱く、足元に近いほど穏やか。段を分けておけば、同じ時間に一緒に入っても、座る高さで折り合いがつきます。上段でしっかり、下段でゆっくり。同じ室温を、二通りに使えるということです。
もう一つはロウリュの量。焼けた石にかける水の量で湿度が変わり、温度計の数字が同じでも体感がまるで変わります。温度そのものを上げずに手加減できる余地が、ここにあります。
高齢のご家族が一緒なら、下段の座面の高さ、足元の板の張り方、扉の開く向きと手すりの位置。そういう地味なところが、続くかどうかを決めます。
そして先ほどの一文。同じ室温が、同じ体感とは限らない。体調も日によって違います。持病のある方、薬を飲んでいる方は、始める前に主治医にご相談ください。

効くかどうかより先に、続くかどうか
ここまで見てきた数字は、どれも続けている人たちの数字です。1回入って測ったものではありません。83.5%も、3.01から3.29も、日常のどこかにサウナが入っている人たちが答えた数字でした。
続くかどうかを決めるのは、温度計の数字ではないと思っています。
脱いだ場所が寒くないか。薪を取りに行く距離が何メートルあるか。灰を捨てる場所が、雪の日でも行けるところにあるか。寝室までの動線が、途中で冷え切ってしまわないか。岩手の冬は、面倒が一つあるだけで足が止まります。雪かきと同じです。スコップが玄関のすぐ横に立てかけてあるかどうかで、続く人と続かない人が分かれる。
調査に答えた人たちも、たぶん同じだったはずです。18歳より前に始めた人が73.8%という数字は、少なくとも、身近なところにサウナがある暮らしを長く続けてきた人が多い集団だった、ということは示しています。その結果を後から聞かれて、良くなった気がします、と答えた。83.5%とは、そういう数字だと私たちは読んでいます。
もし数字を目標にするなら、月に何回入れたか、を数えるのがいちばん現実的だと思います。温度でも時間でもなく、回数。ただしそれは健康の目標ではなく、設備がうまく回っているかどうかの目安として、です。
D'STYLEでは、薪サウナストーブ、ペレットサウナ、それからHARVIAの電気サウナヒーターを扱っています。盛岡の国道4号沿いのショールームでは、実際に火の入った状態をご覧いただけます。ただ、ご相談のいちばん最初にお聞きするのは、いつも熱源の種類ではありません。週に何回、どの時間に入りたいですか。そこから決めていきます。
サウナの調査を読んでいて思うのは、数字の強いところと弱いところが、はっきり分かれているということです。83.5%は大きい。けれどそれは自己申告で、一時点で聞いた答えで、自ら手を挙げた人たちの答えでした。因果関係を示したものではありません。週1回から週に数回で68.2%、毎日はそれとは別に2.9%。頻度の数字も、その頻度なら効くという意味ではありません。効くかどうかより先に、続くかどうか。岩手の冬は、続けにくさのほうが先に来ます。持病のある方、薬を飲んでいる方は、必ず主治医にご相談ください。本記事は研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。
参照した研究
- Hussain J, Cohen M ら/世界サウナ調査(オンラインの横断調査・有効回答482件、男性51.3%/女性48.7%、大卒以上81.8%、定期運動78.8%)。83.5%が睡眠の改善を報告、効果は最長2晩。SF-12のメンタル面は月5〜15回利用群が他より有意に高い(Kruskal-Wallis, p=0.0368)。ただしこの区分は研究者があらかじめ設定した群であり、最適頻度を示すものではありません。Complementary Therapies in Medicine, 2019年/RMIT大学ほか
- スウェーデン在住女性384人の横断調査(2025年3〜4月実施、平均51.77歳)。利用頻度は毎日2.9%、週に数回32.3%、週1回35.9%、それ以下28.9%で、週1回〜週に数回の合計が68.2%(毎日の2.9%はこれに含まれません)。18歳未満でサウナを始めた人は73.8%(この設問の有効回答382人中282人)。4点尺度の睡眠スコア3.01→3.29(p<.001)、身体の痛み2.68→3.10(p<.001)。International Journal of Circumpolar Health, 2025年(PMC12679837)
- スウェーデンの調査の回答者は、SNS上のサウナ愛好グループ2つ、サウナ協会1つ、大学2校の公式サイトでの告知により集められた非確率標本です。論文は限界として、選択バイアス、回答者が高学歴・就業層に偏ること、対照群がないことを挙げています。また睡眠と身体の痛みの前後比較は、共変量を調整しない対応のあるt検定であり、交絡因子は考慮されていないと明記されています。
- いずれも自己申告による横断調査であり、因果関係を示すものではありません。世界サウナ調査の回答者に高学歴・運動習慣層の偏りがあること、女性の体温調節が月経周期のホルモン変動の影響を受けることは、論文中でも指摘されています。
この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。



