庭にサウナを構えると、通う手間が消える。ただそれだけのことが、体に触れる回数を静かに変えていく。イタリア・パドヴァ大学が10人の男性で行った小さな観察を手がかりに、週に何回、何分入るかという、頻度の話をしたい。
施設なら月に数回、庭ならその何倍にもなる
岩手・盛岡でD'STYLEが薪サウナやペレットサウナの新規設置を担当したご家庭に、その後の使い方をうかがうことがあります。多くの方が口を揃えるのは、「思ったより頻繁に入るようになった」という一言です。
サウナ施設に通っていたころは月に数回だったのが、庭に薪サウナやペレットサウナが立った途端、週2回、3回になる。移動の手間がなく、火を熾すだけで入れてしまうからです。特に岩手の冬は外遊びが減る季節で、雪かきの後にひと汗流す習慣がついた方も少なくありません。使用頻度が上がること自体は、自宅設置の満足度としてはむしろ歓迎されている面もあります。
ただし、頻度が上がるということは、体への刺激が積み重なる回数も増えるということです。今回は、この「頻度」を実際に測った研究を紹介します。

パドヴァ大学の10人、週2回・3か月という条件
紹介するのは、Garolla A, Torino M, Sartini B, Cosci I, Patassini C, Carraro U, Foresta Cらが2013年にHuman Reproduction誌に発表した研究です(Garolla A, et al. "Seminal and molecular evidence that sauna exposure affects human spermatogenesis." Human Reproduction 2013;28(4):877-885)。
対象は、もともと精液所見が正常だった健康な男性10名。この10名が、80〜90℃のサウナに1回15分、週2回のペースで3か月間入り続けました。研究者はその前後で、精子の数や運動率、それを支える細胞レベルの指標を調べています。
対象がわずか10名という小規模な研究であることは、最初に断っておく必要があります。この人数と条件だけで、すべての男性に同じことが起きると言い切ることはできません。あくまで「こういう条件で、こういう変化が観察された」という報告として読むのが正確です。

3か月後、何が下がっていたか
3か月間サウナに通った後(研究ではT1と呼ばれる時点)、被験者の精子数と運動率は、開始前と比べて統計的に意味のある差で低下していました(P<0.001、Pの値が小さいほど偶然の差ではなさそうだという目安です)。
細胞の中身も測られています。エネルギーを作る小さな器官であるミトコンドリアの機能は76.8%から54.0%へ、精子のDNAをしっかり折りたたむための置き換え(ヒストン-プロタミン置換)は78.7%から69.0%へ、遺伝情報を守るための凝縮の度合い(クロマチン凝縮)は70.7%から63.6%へ、それぞれ低下しました。
一方で、有意ではなかった項目もあります。テストステロンなどの性ホルモン濃度には、統計的に意味のある変化は見られませんでした。ホルモンの分泌そのものは変わらず、精子を作る現場の指標だけが動いた、という結果です。都合の良い数字だけを取り上げるのではなく、動かなかったものも合わせて見ておく必要があります。
やめて3か月ではまだ戻らず、6か月で戻った
この研究でもっとも興味深いのは、低下したという結果そのものより、時間の経過です。
サウナ利用を中止して3か月後(T2)の時点でも、精子数や運動率、細胞レベルの指標は低いままでした。3か月我慢すれば元に戻る、というわけではなかったのです。すべての指標が開始前の水準まで完全に回復したのは、中止から6か月後(T3)でした。
入っていた期間が3か月、戻るのにかかった期間が6か月。かけた時間の倍がかかって、ようやく元通りになった計算です。この研究は不妊症そのものを診断したり治療効果を検証したりしたものではなく、あくまで健康な男性における精液所見の変化を追った観察です。妊活や不妊への影響を断定する研究ではない、という点を誤解のないよう添えておきます。
週2回・15分という、越えやすいライン
改めて条件を見直すと、この研究の負荷は「80〜90℃・15分・週2回」でした。サウナ施設に月数回通う生活では、まず超えない頻度です。ところが自宅に薪サウナやペレットサウナがあると、この条件はごく自然に越えてしまいます。
岩手の冬は日照時間が短く、外での作業や運動が減る分、サウナに入る回数が増える傾向があると、D'STYLEでは施主の方々とのやり取りの中で感じています。これは統計として取ったものではなく、あくまで私たちが見てきた範囲での実感です。庭に設備があること自体が、知らぬ間に頻度を押し上げる要因になり得るということは、設置を検討する段階で知っておいて損はありません。

設備の話としてできること
D'STYLEはサウナの効果や健康への影響について助言する立場にはありません。私たちにできるのは、設備としての事実を正確にお伝えすることです。
薪サウナ・ペレットサウナともに、ヒーターの出力や石の量によって室温の上がり方は変わり、同じ「15分」でも到達する温度は機種によって差があります。導入時には、ご家庭の使用目的や頻度の見通しをうかがった上で、出力の異なる複数の機種をご提案しています。子作りを考えているご家庭からご相談をいただくこともありますが、その場合は使用頻度や温度についての判断を私たちが下すのではなく、婦人科・泌尿器科の主治医にご相談いただくようお願いしています。

数字は、行動を決めるための材料に過ぎない
この研究が示しているのは、「サウナが悪い」でも「サウナは安全」でもありません。ある条件のもとで、ある指標が下がり、ある指標は変わらず、時間をかけて戻った、という一つの観察結果です。
自宅にサウナがあることの良さは、思い立ったときに火を熾せる自由さにあります。同時にその自由さは、頻度という形で静かに積み重なっていきます。週に何回入るか、どのくらいの温度で何分過ごすか——数字を知った上で、自分の生活に合わせて決めていただければと思います。気になることがあれば、専門の医療機関にご相談ください。
サウナは、体にとって心地よい負荷であると同時に、繰り返せば積み重なる刺激でもあります。今回紹介した研究は10名という小さな規模の観察であり、そこから導き出せることには限りがあります。それでも、「頻度」という切り口を一つ持っておくことは、自宅に火のある暮らしを続けていく上で、静かに役立つはずです。\n\n本記事は研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。
参照した研究
- Garolla A, Torino M, Sartini B, Cosci I, Patassini C, Carraro U, Foresta C. "Seminal and molecular evidence that sauna exposure affects human spermatogenesis." Human Reproduction 2013;28(4):877-885.
この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。



