12月になると、盛岡の朝は道が凍ります。散歩をやめた、というお客様の話を、現場でよく聞きます。体力をつけようにも、外を歩けない季節がある土地です。今日紹介するのは、フィンランドで2,277人を26年間追いかけた研究です。運動でできる体力が高い人だけでなく、体力は低いままでもサウナに入る回数が多かった人で、数字に違いが出ていました。
散歩をやめた、という話
雪かきの朝、玄関先で滑って尻もちをついた。そんな話を、冬の点検でよく聞きます。岩手の12月から3月は、路面がほぼ凍っています。歩くこと自体にリスクが伴う季節が、毎年4か月ほど続きます。
体を動かすことが健康にいいという話は、誰でも知っています。ですが「動けない季節をどう過ごすか」という問いには、あまり答えが用意されていません。今日はその隙間に触れる研究の話です。フィンランドで長く続けられているコホート、KIHDから出た報告になります。

2,277人を26年、追いかけた研究
紹介するのは、フィンランドのKunutsor SKらが2017年にAnnals of Medicine誌に発表した論文です。フィンランドの成人男性2,277人を、中央値で26.1年という長い期間、追跡しています。
この間に、対象者のうち1,124人が何らかの原因で亡くなり、520人が心臓や血管の病気で亡くなりました。研究チームは参加者を「体力の高い・低い」と「サウナに入る頻度の高い・低い」の組み合わせでグループ分けし、それぞれの死亡リスクを比べています。
ハザード比とは何か、先に説明します
この先、「HR」という数字が出てきます。ハザード比(Hazard Ratio)の略で、基準となるグループと比べて、ある出来事(この場合は死亡)が何倍起きやすかったかを示す指標です。1より小さければ、基準グループより起きにくかった、という意味になります。
もう一つ、「95%信頼区間」という数字も出てきます。これは推定の幅のことです。同じ調査を何度も繰り返したら、その区間の中に本当の値が95%の確率で収まるだろう、という統計上の見積もりです。区間の幅が広いほど、その推定はまだ揺れがある、と読みます。
体力が高く、サウナにもよく入る人の数字
基準となったのは「体力が低く、サウナにあまり入らない」グループです。これに対し、「体力が高く、サウナによく入る」グループでは、全ての死因を合わせた死亡のハザード比が0.60(95%信頼区間0.48から0.76)でした。
心臓や血管の病気による死亡に限ると、ハザード比は0.42(0.28から0.62)と、さらに差が大きくなっていました。ここまでは、体力と頻度の両方が揃った、いわば理想形のグループの数字です。多くのサウナ記事は、ここで話を終えています。
体力が低いままでも、頻度が高かった人
この研究がおもしろいのは、ここからです。「体力は低いが、サウナには週によく入る」というグループでも、全ての死因を合わせた死亡のハザード比は0.78(0.64から0.96)でした。
体力が高いグループの0.60ほどではありませんが、基準グループとの間に差が見えています。運動で体力を上げられない期間があっても、サウナに入る回数そのものに、何らかの関連が見えていた、という報告です。ただし信頼区間の上限は0.96で、1に近いところにあります。差はあっても、その幅はそれほど大きくない、という読み方が正確です。
これは因果関係ではありません
ここで必ず添えなければならないことがあります。この研究は観察研究です。サウナに入っている人たちの生活を、後から見比べた研究であり、サウナに入ったから死亡リスクが下がった、と証明したものではありません。
そもそも体が元気だからサウナによく行けている、という逆の因果関係(逆因果)を、完全には排除できません。死亡率を確かめるために、サウナに入る人と入らない人を無作為に分けて比べたランダム化比較試験は、今のところ存在しません。この分野の研究の多くが抱える、共通の限界です。

五十を過ぎて、自分の冬を考える
私自身、五十を過ぎてから、冬の運動量がはっきり落ちたのを感じています。若い頃は雪の中でも走れましたが、今は無理をすれば怪我をします。この研究の「体力は低いが頻度は高い」という行を読んだとき、自分に一番近いのはここだな、と思いました。
体力を上げる場所が少ない土地で、何ができるか。薪ストーブの前に座って過ごす時間も、その一つだと考えています。効能を語るつもりはありません。ただ、動けない季節に、暖かい場所で座って過ごす時間があること自体を、悪くないと思っています。

研究が見ていたのは、あくまで体力とサウナ頻度という二つの条件を組み合わせた集団の死亡率であり、原因と結果を証明したものではありません。日本人と生活習慣も気候も異なるフィンランドの中高年男性が対象で、女性のデータはこの研究には含まれていません。持病のある方、通院中の方は、サウナの利用について必ず主治医にご相談ください。私たちは薪ストーブとサウナの専門店として、こうした研究をそのまま紹介することを大事にしています。体力が上げにくい岩手の冬に、火のそばで過ごす時間をどう作るか。ご相談があれば、盛岡のショールームでお話しします。
本記事は研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。
参照した研究
- Kunutsor SK, Laukkanen T, Laukkanen JA ほか, Annals of Medicine, 2017 (PubMed 28972808)
この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。



