盛岡の健診会場で渡される問診票を、じっと見たことがあります。喫煙の欄がある。飲酒の欄がある。運動習慣の欄もある。けれど、入浴やサウナの頻度を書く欄はどこにもありません。あれは健康と関係のない、ただの習慣だということなのでしょうか。その問いに、部分的な答えを返してくれる研究があります。女性が半数を超える、男女1,688人の追跡調査です。
問診票に、サウナの欄はありません
健診の問診票には、生活習慣を尋ねる欄が並びます。たばこを吸うか。お酒はどれくらいか。週に何回、汗をかく運動をしているか。どれも、長い時間をかけて積み上げられた研究があるから、そこに欄があります。
サウナの欄はありません。日本ではサウナが娯楽の側に置かれてきたからだと思います。銭湯の付属、旅先の楽しみ、あるいは我慢比べ。生活習慣の一つとして数える発想が、そもそも薄かったのでしょう。
一方でフィンランドでは、サウナは週に何度も入るものです。だから研究者は、それを喫煙や運動と同じ列に並べて数えることができました。近年よく紹介されるサウナと心血管の研究は、そういう土壌から出てきています。
ただ、この分野には長く指摘されてきた弱点があります。対象がほとんど中年のフィンランド人男性だということです。男性だけのデータから、女性の生活の話をするのは無理があります。数字だけが独り歩きすると、そこが抜け落ちます。
研究を読むとき、私が最初に見るのはそこです。何人を、何年、どういう人たちを調べたのか。今日紹介する報告は、その欄が少しだけ違います。

女性867人を含む1,688人を、15年追った
その報告は、BMC Medicine の2018年16巻、論文番号219に載っています。フィンランド東部の男女1,688人。内訳は女性867人、男性821人で、女性が全体の51.4%と、半数をわずかに超えています。平均年齢は63歳。中央値で15.0年追跡し、その間に181件の心血管死が記録されました。
中央値で15.0年、という言い方を少しだけ。全員を15年追った、という意味ではありません。追跡できた期間を短い順に並べたとき、ちょうど真ん中に来る人が15.0年だった、ということです。平均と違って、極端に長い人や短い人に引っ張られにくい示し方です。
サウナに入る頻度で三つに分けています。週1回の群を基準にすると、週2〜3回の群のハザード比は0.75、95%信頼区間は0.52から1.08。週4〜7回の群は0.23で、区間は0.08から0.65でした。
ハザード比、信頼区間、観察研究
ハザード比は、比べものです。週1回の人たちに出来事が起きる勢いを1として、ほかの群がその何倍かを表します。0.75なら、およそ四分の三。0.23なら、およそ四分の一。1より小さければ少ないほうへ、大きければ多いほうへ寄っている、という向きの表示です。何人が助かる、という人数の話ではありません。
信頼区間は、その数字の揺れ幅です。同じ調査をもう一度やったら、だいたいこのあたりに収まるだろう、という範囲です。範囲が1をまたいでいると、差がないという可能性が残ります。週2〜3回の区間は0.52から1.08。上端が1を越えていますから、ここははっきりしなかった、と読むのが正確です。
週4〜7回の区間は0.08から0.65。1をまたいでいません。差があるほうに寄っています。ただし、ずいぶん広い幅です。点推定の0.23だけを取り出して、四分の一になる、と読むのは正確ではありません。区間の広さは、その推定がまだ揺れているという合図です。
三つめが観察研究です。くじ引きをしていない研究のことをいいます。たとえば、毎朝の雪かきを欠かさない人ほど元気だ、という結果が出たとします。雪かきが体を作ったのか、もともと動ける人だから雪かきが続くのか。後から比べただけでは、この順序は分けられません。サウナも同じです。もともと丈夫だからサウナに通える、という向きの説明を、この設計では消せません。因果関係を示すものではない、というのはそういう意味です。
入っている時間でも、向きは同じでした
同じ報告では、週あたりにサウナで過ごした時間でも解析しています。週15分以下の群を基準にすると、週45分を超える群のハザード比は0.57、95%信頼区間は0.35から0.94でした。1をまたいでいません。入る回数だけでなく、合計した時間のほうでも、同じ向きの関連が出ています。
ここで、モデルという言葉が出てきます。何を差し引いて比べるかを何段階か用意して、同じ数字を並べて見せることがあるのです。年齢と性別だけを差し引いた段階では0.49、区間は0.30から0.80。血圧やコレステロール、喫煙といった確立した危険因子まで差し引いた段階が、先ほどの0.57、0.35から0.94。さらに身体活動と社会経済状況を加えた段階でも0.57、0.35から0.94で、動きませんでした。
もう一段階だけ、性格の違う計算も載っています。追跡のあいだに新しく起きた冠動脈疾患まで差し引いた段階で、こちらは0.60、区間は0.34から1.05となり、1をまたぎます。ただしこれは、途中で起きた病気まで差し引く計算です。前提がほかと違いますから、横に並べる相手ではありません。この記事では、頻度のハザード比と条件をそろえるため、確立した危険因子まで差し引いた段階の0.57を主に置いています。
どの段階の数字かを添えないと、同じ論文から正反対の印象を作れてしまいます。

予測式に足したら、精度はごくわずかに上がった
この研究がほかと違うのは、ここからです。著者たちは、従来から使われている心血管リスクの予測モデルに、サウナ頻度という変数を一つ足してみました。
医学の予測モデルは、年齢や血圧、コレステロール、喫煙といった危険因子を組み合わせて、この先何年かのリスクを見積もる式です。天気予報に近いものです。明日の降水確率は七割、と言われるのと同じで、その人に必ず起きるという話ではありません。そこに新しい項目を足したとき、当たり方が良くなるかを調べる指標があります。C統計量、正味再分類改善、統合識別改善。名前は難しいのですが、やっているのは、予測が前より当たるようになったかの測定です。
C統計量は、二人を並べたときに、先に出来事が起きたほうを式が正しく当てられる割合だと思ってください。0.5なら、当てずっぽうと同じ。1に近いほど、よく当たります。
結果は、C統計量が0.0091上昇(P=0.010)、正味再分類改善が4.14%(P=0.004)、統合識別改善が0.0037(P=0.041)。いずれも統計的には有意でした。
正直に書きます。0.0091は小さい数字です。小数第三位の変化で、実際の診療の見込みがひっくり返ることはありません。予測が劇的に変わるわけではない、と書いておきます。意味があるのは大きさより、足す価値がゼロではなかったという事実のほうです。喫煙や運動と同じ列に、サウナの頻度を並べてよかった、という一票。それ以上でも、それ以下でもありません。
P=0.010は、本当は差がないのにこれくらいの差が偶然出てしまう確率が1%ほど、という意味です。差が大きいという意味ではありません。有意と、重要は、別のことです。
脳卒中の報告と、調整という言葉
同じ研究グループから、脳卒中についての報告も出ています。Neurology の2018年90巻22号、e1937-e1944の論文です。
対象は、調査開始の時点で脳卒中の既往がない男女1,628人。年齢は53歳から74歳。中央値14.9年の追跡で、155件の脳卒中が起きています。週4〜7回サウナに入る群のハザード比は、年齢と性別を差し引いた段階で0.39、95%信頼区間は0.18から0.83。確立した危険因子までさらに差し引いても0.39、区間は0.18から0.84。身体活動と社会経済状況を加えた段階では0.38、区間は0.18から0.81でした。差し引く条件を増やしても、数字はほとんど動いていません。
調整という言葉を、ここでもう一度。年齢や性別、血圧、喫煙、運動といった別の要因の影響を差し引いてから比べる手続きのことです。サウナによく入る人のほうが、たまたま若かったり、たばこを吸わなかったりするかもしれない。その分を先に引いておかないと、サウナの手柄に見えてしまいます。
とはいえ、差し引けるのは測った項目だけです。測っていない違いは、どれだけ計算しても残ります。それに、この二つの報告は同じ地域の、重なりのある集団から出ています。同じ土壌から二本の芽が出ている、という程度に受け取るのが健全だと思います。
繰り返しになりますが、どちらも観察研究です。関連が示された、というところまでで、因果関係を示すものではありません。サウナに入れば脳卒中を防げる、という読み方はできません。
入る前に、確かめておきたいこと
数字の話が続いたので、ここで安全の話を挟みます。サウナに入っているあいだの体を、実測した報告があるからです。
健康な成人19人が93℃・湿度13%のサウナに25分入った実験(Complementary Therapies in Medicine 2019;44:218-222)では、加熱中は収縮期血圧も拡張期血圧も進行性に上昇し、心拍数も上がり続けました。血圧が下がったのは、サウナを出て休んだ後です。著者は、急性のサウナ使用は血圧を下げるのではなく上げる、とはっきり書いています。
同じ報告では、サウナ中の負荷はおよそ60〜100ワットの動的運動に相当するとしています。自転車をゆっくりから中くらいの強さで漕いでいるあたりです。座って目をつぶっているだけなのに、体のほうは坂道を上っています。
ですから、次のような場合は無理をしないでください。お酒を飲んだ後は入らないこと。入る前に水分を摂り、長く我慢しないこと。高血圧、心疾患、不整脈のある方、薬を服用中の方、高齢の方、妊娠中の方、体調のすぐれない日は、まず主治医に相談してください。持病がある方は、上限の温度と時間、水風呂を使ってよいかまで具体的に聞いておくと安心です。
岩手の冬は、条件が一つ増えます。氷点下の屋外へ出る、雪に倒れ込む、冷たい水風呂に頭から入る。血圧も心拍も上がりきった状態からの急な冷刺激は、体にとって別の負荷です。朝いちばんの雪かきで息が上がる、あの感じを思い出してください。寒さそのものが、体には仕事です。外気浴も水風呂も、段階を踏んでください。そして、ひとりきりで入らないこと。家庭用サウナでは、これがいちばん現実的な備えになります。
ここから先は、研究の話ではありません。私たちが岩手で家庭用サウナを設置してきた現場の話です。研究で示された関連を、家庭用サウナという商品の効果として読み替えることはできません。

岩手の納品先で、見えていること
研究の話をここまで書いたのは、女性のデータが薄いという課題が、私たちの仕事の実感と重なるからです。
家庭用サウナは男性が一人でこもるもの、と思われがちです。けれど岩手でサウナ室を納めてきて、実際に多いのはご夫婦で使われる家です。打ち合わせの席で温度や湿度の希望を細かく話されるのは、奥様のほうというお宅も少なくありません。
その希望は、たいてい、もう少しぬるく、です。同じ室温でも、体格が違えば体感は変わります。だから設定温度を下げて、そのぶんロウリュで湿度を足す。低めの温度でも汗は出ますし、長くいられます。
温度の見当をつけるとき、研究で使われた設定が参考になります。心血管の危険因子を持つ102人が30分入った実験のサウナは73℃・湿度10〜20%。運動の後にサウナを足した8週間のランダム化比較試験では、65〜80℃で15分でした。いずれも記事末の出典に挙げています。ランダム化比較試験は、くじ引きで群を分けてから比べる設計です。順序の疑いは残りにくくなります。
フィンランドのサウナが一律に低温だ、という意味ではありません。先ほどの血圧の実測は93℃で行われています。私たちが見てきた範囲では、日本の施設のサウナはもっと高温で低湿度に振ってあり、家庭用サウナはそこまで上げなくても十分に成立します。
低い温度で蒸気を立てるには、サウナストーンの量がものを言います。石は蓄熱する素材です。たっぷり積める機種ほど熱を溜め込み、水をかけたときの蒸気がふっくらと上がる。温度計の数字が同じでも、石の量で体感は変わります。
薪で焚くなら、置き場の話も先にします。薪は乾かして初めて燃える材料です。雪の載らない場所に一年分積めるか、真冬に長靴で取りに行ける動線か。続くかどうかは、そこで決まります。
盛岡の冬は、外に出るのが億劫になる季節です。家の中に行き先が一つある、というのは続けやすさに直結します。フロントガラスの霜を落として、施設まで走る必要がない。その距離のなさが、習慣として続くかどうかを左右します。これはあくまで使い勝手の話で、健康がどうなるという話ではありません。
問診票にサウナの欄がないなら、余白に自分で書き添えてもよいと思います。週に何回、何分。それは主治医と話すときの材料になります。

D'STYLEは岩手・盛岡で、家庭用サウナのKUUTA、ハルビア(Harvia)のサウナストーブ、そして薪ストーブとペレットストーブの設置をしています。おすすめの一台を尋ねられることは多いのですが、私たちが先にお伺いするのは、誰が、どれくらいの温度で、週に何回入る家になるのか、ということです。
機種の話は、その後です。電気で温めるハルビアのSOPO、薪を焚くハルビアのLegend。火を扱う時間ごと楽しみたい方と、帰宅後すぐに温めたい方では選ぶものが違います。石をどれだけ積めるかも機種ごとに違います。薪ストーブも同じ話で、鋳物のストーブは鉄板より立ち上がりが遅いかわりに、冷めにくく、当たりの柔らかい熱になります。素材が熱をどう持つかは、カタログの出力の数字より暮らしを左右します。
ご夫婦で使うなら、温度は低めに振ったほうが長く続きます。続く設計にしておくことが、結局は無理がないのだと思います。
雪が屋根に載る季節、庭の小屋に灯りがついて、湯気が窓を白くする。岩手の冬にそういう場所を一つ作る仕事を、これからも続けます。
本記事は公表された研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果、および当社製品の効果・効能を示すものではありません。家庭用サウナは医療機器ではありません。体調や持病に関することは、必ず主治医にご相談ください。
参照した研究
- Laukkanen T, Kunutsor SK, Khan H, Willeit P, Zaccardi F, Laukkanen JA. BMC Medicine. 2018;16:219(男女1,688人、女性867人・男性821人、平均63歳、中央値15.0年追跡、心血管死181件。頻度・滞在時間とも、本文では確立した危険因子まで調整したモデルの値を主に用いています)
- Kunutsor SK ほか. Neurology. 2018;90(22):e1937-e1944(脳卒中既往のない男女1,628人、53〜74歳、中央値14.9年追跡、脳卒中155件。週4〜7回群のハザード比は年齢・性別調整0.39、危険因子調整0.39、身体活動・社会経済状況を追加調整0.38)
- Lee E, Laukkanen T, Kunutsor SK ほか. European Journal of Preventive Cardiology. 2018;25(2):130-138(心血管危険因子を持つ102人、73℃・湿度10〜20%で30分の単回サウナ)
- Lee E, Kolunsarka I, Kostensalo J ほか. American Journal of Physiology - Regulatory, Integrative and Comparative Physiology. 2022;323(3):R289-R299(成人47人の8週間ランダム化比較試験、運動後に65〜80℃で15分)
- Ketelhut S, Ketelhut RG. Complementary Therapies in Medicine. 2019;44:218-222(健康な成人19人、93℃・湿度13%で25分。加熱中は血圧・心拍が上昇)
この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。



