期待した通りの結果が出るとは限りません。そういう研究もあります。2024年に公表されたオランダの試験は、赤外線サウナに40分入ったあとの食後血糖を調べたものでした。体温はきちんと上がっていました。それでも血糖の上がり方は、むしろ大きくなっていたのです。

盛岡の冬、体を温める道具はいくつもある
岩手の冬は長く、外に出る機会が減ります。除雪をしたあとに体が冷えて、家に入ってから何で温まるか。灯油ストーブ、電気毛布、そして近年は自宅にサウナを置く方も増えました。D'STYLEでは薪・電気のフィンランド式サウナと、ペレット式のバレルサウナの両方を扱っていますが、もうひとつよく名前が挙がるのが「赤外線サウナ」です。石に水をかけず、遠赤外線ヒーターの輻射熱で体を温める方式で、比較的低い温度で使えることから健康目的で選ばれることがあります。今回はこの赤外線サウナについて、血糖への影響を調べた研究を紹介します。結論を先に言うと、期待されるような結果は出ませんでした。都合の悪い数字も含めて、そのまま読んでいきます。

2型糖尿病の方12名で調べた試験の中身
紹介するのは2024年に公表されたランダム化クロスオーバー試験です(マーストリヒト大学、PMC11560331/PMID 39209309)。対象は2型糖尿病の方12名(男性10名・女性2名、平均69±7歳、BMI27.5±2.9、HbA1c55.0±7.1 mmol/mol)。この方たちに、60℃の赤外線サウナに40分入ってもらう日と、21℃の普通の室温で40分過ごしてもらう日を、それぞれ別の日に設けました。同じ人が両方の条件を経験する「クロスオーバー」という組み方で、個人差の影響を抑えられる設計です。そしてどちらの日も、直後に2時間のブドウ糖負荷試験(甘い液体を飲んで血糖の変化を追う検査)を行いました。
体温はきちんと上がっていた
まず、赤外線サウナがちゃんと体を温めていたかどうか。鼓膜で測った体温は36.8℃から38.0±0.3℃まで上昇していました。約1.2℃の上昇です。これは狙いどおりで、輻射熱による加温が体に効いていたことを示しています。ここまでは想像どおりの結果でした。
血糖の上がり方は、むしろ大きかった
問題はそのあとの血糖です。ブドウ糖を飲んでからの血糖の総量(iAUCという指標で、2時間のあいだ血糖が高い状態がどれだけ続いたかを面積で表したもの)は、赤外線サウナのあとの方が有意に高い数値になっていました。17.7±3.1に対して14.8±2.8(単位はmmol/L・120分)、統計的な差の大きさを示すP値はP<0.001でした。P値が0.05より小さいほど「偶然では説明しにくい差」とされますが、ここでは0.001と非常に小さく、はっきりした差だったことになります。つまり、サウナに入った日の方が、食後の血糖はより高く長く上がっていたということです。

インスリンの働きには差がなかった
一方で、体がインスリンをどれだけ出したか(インスリンiAUC)を見ると、380±194に対して376±210(P=0.93)とほぼ差はありませんでした。インスリンの効きやすさを示すMatsuda指数という指標もP=0.67で、有意な差は見られませんでした。つまり、体を温めても「インスリンが効きやすくなった」わけではなく、むしろ血糖の上がり方だけが大きくなっていた、という結果です。研究チームの結論は「1回の赤外線サウナは、2型糖尿病の方の食後血糖の処理を改善しない」というものでした。都合の良い数字だけを拾わず、有意だった項目(血糖iAUC)と有意でなかった項目(インスリンiAUC、Matsuda指数)を両方書いておきます。
この研究からわかること、わからないこと
この試験は対象が12名、しかも1回だけの介入です。継続して入った場合にどうなるかは、この研究からはわかりません。また対象は2型糖尿病の方で、平均69歳という年齢層です。健康な方に同じことが言えるかどうかも、この研究だけでは判断できません。もうひとつ大事なのは、この研究の条件が「60℃の赤外線」であって、石に水をかけて蒸気を出すフィンランド式サウナとは加熱の方式も湿度もまったく別物だということです。輻射熱でじわりと温める赤外線と、対流と蒸気で一気に温めるロウリュとでは、体への熱の届き方が違います。この研究の結果を、フィンランド式サウナや薪ストーブのサウナにそのまま当てはめることはできません。

施工店として、方式の違いを実測で見ている
D'STYLEでは薪・電気のストーブとサウナストーンを使うフィンランド式、そしてペレット式のバレルサウナを施工してきました。現場で感じるのは、同じ「サウナ」でも立ち上がりの時間や熱の届き方がまるで違うということです。電気ヒーターとサウナストーンを使う方式は、石が蓄熱するぶん室温が安定しやすく、水をかければ湿度を足せます。ペレット式は着火から昇温までが比較的早く、庭のバレルでも冬の岩手で実用的な温度まで上がってくれます。輻射式のヒーターは対流が少ないぶん、上段と下段の温度差が出にくいという特徴もあります。どれが優れているという話ではなく、目的と設置場所に合わせて選ぶものです。血糖や代謝への影響を保証する道具ではありません。持病があり血糖のコントロールをされている方は、サウナに限らず新しい習慣を始める前に主治医にご相談いただくことをおすすめします。

数字は正直です。体温は上がっていたのに、血糖の上がり方はむしろ大きくなっていた。都合の良いところだけを見れば「サウナで代謝が変わる」と言いたくなりますが、この研究が示したのはそう単純な話ではありませんでした。対象はわずか12名、1回きりの介入で、継続した場合や健康な方への影響はまだわかっていません。それでも、正直に書かれた研究をそのまま読むことには意味があると思います。サウナは道具であって、薬ではありません。方式によって熱の届き方も、体への負担も違います。私たちはその違いを、施工した現場の実測とともにお伝えしていきたいと考えています。持病や服薬中の方は、サウナに限らず新しい習慣を始める前に主治医にご相談ください。本記事は研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。
参照した研究
- Meex RCR et al. 2024. Randomized crossover trial, Maastricht University. PMC11560331 / PMID 39209309.
この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。



