「うちのサウナ、何度まで上がりますか」。盛岡のショールームで、いちばん多く受ける質問です。答えながら、いつも思い出す研究があります。80℃と120℃、たった40℃の差が、体にどれだけ違う結果を残すか。数字で示した研究です。
若い女性22名が、2つの温度に入った
2023年、Frontiers in Public Health誌に載った研究です。サウナ経験がほとんどない22歳前後の女性22名(平均22.26歳)に、80℃で20分と、120℃で20分、それぞれサウナに入ってもらいました。同じ人が1週間の間隔をあけて両方を経験する、という組み方です。
どちらの回も、サウナのあとは18℃の部屋で6分過ごし、10〜11℃の冷たい水に1分入る、という同じ流れをたどっています。違うのは、サウナ室の温度だけでした。
体の変化は、思ったより小さかった
体重の減り方は、80℃で0.14kg、120℃で0.30kg。エネルギーの消費量は80℃で118.55±24.79kcal、120℃で185.95±25.18kcal。心拍数は80℃で79.27から114.23、120℃で82.68から120.95まで上がりました。
数字だけ見れば、120℃のほうが体を動かした量は多い。当たり前といえば当たり前です。ただ、この研究が本当に伝えたかったのは、ここから先の話でした。
気分は、80℃で上向き、120℃で丸ごと悪化した
研究では、POMSという気分の状態を測る調査票を使っています。緊張、抑うつ、怒り、疲労、混乱、活力という6つの項目を、サウナの前後で比べる方法です。
80℃のサウナのあとは、緊張・抑うつ・怒り・疲労・混乱のすべてが有意に下がり、活力だけが有意に上がりました。すっきりした、というのが数字にも表れた形です。
ところが120℃のサウナのあとは、逆でした。緊張・抑うつ・怒り・疲労・混乱・活力、6項目すべてが悪化する方向に動いたのです。高い温度に入れば入るほど気分がよくなる、という単純な話ではないことを、この研究ははっきり示しています。
20分に届く前に、3名が意識を失った
さらに踏み込んだ事実があります。120℃の条件では、20分の予定時間に対して、18分37秒から19分01秒あたりで、22名中3名(13.6%)が失神しました。
失神した人に共通していたのは、混乱スコアが全員レベル6だったことと、嘔吐の症状があったことです。つまり、体が「もう限界だ」という信号を、気分の乱れや吐き気というかたちで先に出していた、ということになります。
この研究の対象は、サウナにほとんど慣れていない22歳前後の女性22名という、限られた条件です。年齢層や経験値が違えば結果も変わり得ますし、これだけで「120℃は誰にとっても危険」と言い切ることはできません。それでも、高温であるほど早く、強く体調を崩す人が出やすい、という傾向は数字として残っています。

現場で「高温自慢」をしない理由
D'STYLEでは、薪ストーブでもペレットストーブでも、サウナ室を「何度まで上げられるか」を売りにはしていません。むしろ逆で、上段と下段でどれくらい温度差が出るか、ロウリュのあと体感がどこまで上がるか、そちらを実測して引き渡し時に説明しています。
施工したサウナ室のコントロールパネルには、92℃といった実際の使用温度が表示されます。これは高くも低くもない、多くのお客様が心地よく使っている温度帯の一例です。ストーブの出力を選ぶときも、闇雲に大きい機種を勧めることはしていません。部屋の大きさ、断熱、換気とのバランスで、無理なく安定した温度をつくることを優先しています。

引き渡しの日に、必ず伝えていること
施工が終わったあと、D'STYLEでは必ずいくつかの注意点をお伝えしています。一人で長時間入らないこと。内側から鍵をかけないこと。混乱したり、吐き気を感じたりしたら、座ったままにせず、すぐに外へ出ること。この研究の失神の予兆と重なる話です。
ストーブのまわりには木の柵を設けて、うっかり触れてやけどをしない造りにしています。砂時計や温度計も、入口から見える位置に据えるようにしています。何分入ったか、いま何度か、外から確認できることが、一人で入るときの安心につながるからです。

庭や車庫脇に置くからこそ、気をつけたいこと
岩手の自宅サウナは、母屋から少し離れた庭や車庫脇に建てることが多くあります。開放感があっていい配置ですが、裏を返せば、家の中にいる家族から気づかれにくい場所でもあります。
だからこそ、温度を上げすぎない設計と、異変があればすぐ出られる動線を、最初から一緒に考えるようにしています。冬の岩手は、外に出た瞬間の寒暖差も大きい土地です。サウナ室の中の温度管理だけでなく、外への出口までの距離や足元も、施工の段階で確認しています。

80℃で気分が上向き、120℃ですべてが悪化する。数字にしてみると、サウナは「熱ければ熱いほどいい」場所ではないことがわかります。岩手の冬、庭に建てる小さな部屋だからこそ、温度は控えめに、出口は近くに。それが、長く付き合えるサウナの設計だと考えています。
本記事は研究の紹介であり、サウナの設置・使用による疾病の予防や治療の効果を示すものではありません。
参照した研究
- Frontiers in Public Health. 2023;11:1303804
この記事は研究の紹介であり、効果を保証するものではありません。持病のある方、通院中・服薬中の方は、主治医にご相談のうえご利用ください。



