フィンランドからバルト海を渡って、リトアニアの首都ビリニュスへ行きました。二〇二六年一月三十日のことです。目的のひとつが、現地のサウナ資材店を見ることでした。同業の店先を見るのがいちばん早い、というのは、どの商売でも同じだと思います。
結論から書きます。あちらの店は、サウナ屋というより金物屋でした。

ヒーターが、家電量販店のように並んでいた
まず目についたのが、サウナヒーターの並べ方です。台の上に何台も、値札を付けて置いてある。壁際の棚には、箱に入った状態のものが型番順にずらりと積んである。冷蔵庫や洗濯機を選ぶのと同じ感覚で、家族連れが見比べていける形になっていました。
日本でサウナヒーターを買おうとすると、まずカタログを見て、こちらが機種を提案して、取り寄せる、という順番になります。実物を見比べられる場所は、全国でもそう多くありません。当社が盛岡のショールームに実機を置いているのはそのためですが、向こうでは、それが街の普通の店の風景でした。
木材が、量り売りではなく棚売りだった
いちばん驚いたのはここです。

棚の一区画がまるごとサウナ用の木材です。壁に張る羽目板、ベンチの座面になる厚い板、背もたれ用の細い材。それが樹種ごと、長さごとに分かれて積んである。ホームセンターで2×4材を買うのと同じ感覚で、サウナ室の材料が買えるようになっていました。
これは「自分の家にサウナを作る人がいる」という前提がなければ成立しない売り場です。日本では、サウナは行く場所であって作る場所ではありませんでした。だから部材が店頭に並ばない。あちらは逆で、作る人がいるから並んでいる。
煙突が、普通に売られていた

薪のサウナストーブを売るなら、煙突が要ります。当たり前のことですが、その当たり前が棚に並んでいる光景は、日本ではまず見ません。
煙突は、サウナや薪ストーブの部材の中でいちばん安全に直結します。断熱二重管を使うか、シングル管で済ませるか。曲がりを何回入れるか。この判断を誤ると、煙道火災につながります。売り場に並んでいるということは、素人が買っていくということでもあり、そこは日本の売り方とどちらが良いか、簡単には言えません。当社は英国RODTECH社認定の煙突掃除 安全インストラクターとして、煙道内に溜まったタールの状態を毎年見ています。煙突は、選ぶより先に「掃除できるように付ける」ことのほうが大事です。
石が、単体で売られていた

サウナストーンは消耗品です。使っていれば割れます。割れた石は熱を蓄えず、隙間が詰まって空気の通りも悪くなる。それでも日本では「石は最初に入れたら、ずっとそのまま」と思われていることが多い。
あちらの店では、石が袋詰めで棚にありました。オイルや香り、桶、柄杓と同じ扱いです。買って帰って、自分で積み替える。石の交換が特別なことではなく、生活の中の買い物になっていました。
持ち帰って、変えたこと
この店を見て、当社で変えた点があります。
ひとつ。実機を並べて、見比べられるようにする。盛岡のショールームには、薪のサウナストーブと電気のサウナヒーターを実際に置いています。カタログの数字だけでは、石が何キロ載るか、扉の開き勝手がどちらか、といったことは伝わりません。
ふたつ。サウナストーンを、消耗品として案内する。石の交換の目安は、使い方によって百時間から四百時間と幅があります。ご家庭で週に二回使う方なら、数年に一度は積み替えが必要になる計算です。この案内をしていないと、性能が落ちたことを機械の故障だと思われてしまいます。
みっつ。ベンチ材の樹種を、選べるようにする。あちらの木材売り場を見て、選択肢を用意していないのはこちらの怠慢だと思いました。座る場所の材は、肌に直接あたる部分です。
正直に書いておくこと
あちらの店に並んでいたものが、そのまま日本で使えるわけではありません。
電気のサウナヒーターは、電圧と結線の方式が国によって違います。ヨーロッパ仕様のものを個人で持ち込んでも、日本の電気工事の基準に合わせるところで止まります。木材も、輸入すれば運賃と検疫がかかり、国内で調達したほうが安くつくことがほとんどです。煙突についても、日本の建築基準法と消防の考え方があります。
参考になるのは、品物そのものではなく、売り方と、その前提にある暮らし方のほうでした。
よくあるご質問
Q. 海外からサウナヒーターを個人輸入できますか。
物としては届きますが、日本の電源に合わせる工事と、保証・部品供給の面で現実的ではありません。故障したときに部品が入らず、丸ごと交換になった例を見ています。国内の正規流通品をおすすめします。
Q. サウナストーンは、どのくらいで交換ですか。
使用時間で百時間から四百時間が目安です。石の種類と、ロウリュの頻度で大きく変わります。割れて小さくなった石が下に溜まってきたら替えどきです。
Q. サウナ室の壁材は、どの木がいいですか。
熱くなりにくく、樹脂の出にくい木を使います。肌が直接触れるベンチの座面と、壁とでは求められる性質が違うので、分けて選ぶのが基本です。ご予算と合わせてご提案します。
帰ってきて、思ったこと
店の品揃えは、その土地の暮らしの写し鏡です。サウナの部材が金物屋の棚に並ぶのは、家にサウナがあるのが普通だからで、日本にその棚がないのは、まだ普通ではないからです。
ただ、岩手も雪国です。冬が長く、寒さが厳しく、外で働く人が多い。サウナが暮らしの中に入る条件でいえば、リトアニアやフィンランドとそう遠くありません。棚に並ぶ日が来るかどうかは、売る側がどれだけ本気で在庫を持つかにかかっているのだと思います。
D'STYLEは岩手・盛岡で、ハルビアの正規代理店としてサウナヒーターとサウナ室の施工をしています。サウナストーンの交換、ベンチ材の張り替え、煙突の点検も承ります。岩手県はもちろん、秋田県・青森県まで伺います。
この記事について
- 写真は2026年1月30日、リトアニア・ビリニュス市内のサウナ資材店で撮影したものです(撮影・有限会社D'STYLE)。店名は伏せています。
- 本記事はフィンランド研修に続く同じ行程での見聞です。撮影地はフィンランドではなくリトアニアです。
- サウナストーンの交換目安(100〜400時間)は、石の種類・使用頻度により変動します。

