「薪ストーブが欲しいんですが、いくらくらいからありますか」
ショールームで聞かれると、いつも一瞬迷う質問です。「1万円台からありますよ」も、「本体だけで20万円以上、煙突の工事まで入れると100万円近くになることもあります」も、どちらも本当だからです。
同じ「薪ストーブ」という言葉の中に、実はまったく違う二つの道具が入っています。今日はその違いを、正直に整理させてください。
ホームセンターで買える薪ストーブと、うちが据え付ける薪ストーブ
新潟のホンマ製作所さんや、北海道の新保製作所さんが作る「ロマンチカル」のような薪ストーブがあります。ホンマ製作所さんは昭和49年創業、新潟で金属加工を専門にしてきた会社で、1万円台の鉄板製から鋳物製まで幅広く手がけ、ご自身のオンラインショップや楽天市場を通じて全国に直接販売しています。新保製作所さんの「ロマンチカル」も、大きな窓で炎を楽しめると、冬キャンプの世界でよく名前が挙がる一台です。
どちらも、よくできた道具だと思います。キャンプ場に積んでいって、焚き火の代わりに使う。停電したときの備えとして物置に置いておく。庭でバーベキューをしながら暖をとる。そういう場面では、軽くて、安くて、すぐ使えることがいちばんの価値になります。うちの店でも焚き火台やアウトドア用の調理器は扱っていますし、「気軽に火を楽しみたい」という気持ちそのものは、まったく否定するつもりがありません。
ただ、これを「この冬から、家の暖房として一年中焚きたい」という話にすると、事情が変わってきます。
何が違うのか。板の厚みと、燃やし方です
アウトドア用の多くは、薄い鋼板を折り曲げて箱にした作りです。軽くするための工夫で、持ち運ぶ道具としては理にかなっています。ダンパー(空気を絞って火力を調整する弁)が付いていないモデルも多く、使った方の感想を見ても「本体の温度がどんどん上がってしまう」「火力の微調整がしにくい」という声をよく見かけます。焚きたいときに焚いて、片づける道具なら、それで十分なんです。
一方、うちが扱っているヒタやアグニ、ドブレのような住宅用の薪ストーブは、一冬じゅう毎日焚くことを前提に設計されています。本体は厚みのある鋳物か鋼板で、二次燃焼という仕組みを持つ機種がほとんどです。薪が燃えるときに出る未燃焼のガスに、もう一段高温の空気を送り込んで、もう一度燃やし切る仕組みです。煙が減って燃費もよくなり、煙突にタールが溜まりにくくなる。この一手間があるかないかで、何年も使ったあとの掃除の手間がまったく変わってきます。

本体より、煙突のほうが大事な話
これはうちのどの記事でも書いていることですが、薪ストーブの安全と性能は、本体より煙突で決まります。住宅用の薪ストーブを設置するときは、壁や天井を通す煙突を二重の断熱構造にして、建物の間取りと屋根の形に合わせて一本一本計画します。可燃物からどれだけ離すか、屋根からどれだけ立ち上げるか。建築基準法や消防法に沿って考えるべき工事で、うちのような施工店が現地を見てから決める部分です。
アウトドア用の薪ストーブに付属している煙突は、多くが単管の、軽くて持ち運べる部材です。屋外で、その場かぎり使うぶんには問題ありません。しかしそれを、そのまま家の壁に穴を開けて常設し、冬じゅう毎日火を入れる、という使い方を想定した作りではありません。結露やタール、煙道内の温度管理まで含めて、常設の住宅用とは前提が違うのです。

値段の違いは、そのまま「前提の違い」です
アウトドア用は1万円台から、高いものでも数十万円で買えます。うちが扱う住宅用は、本体だけで20万円台から、煙突の工事まで含めると60万円、100万円を超えることも珍しくありません。
これは「うちのほうが高く売りつけている」という話ではありません。厚い鋳物を鋳型から作る手間、二次燃焼を成立させるための設計、家一軒ごとに図面を引いて組む煙突の工事。値段の差は、そのままかかっている手間の差です。うちは価格の安さで選んでもらう店ではないので、この差は正直に書いておきたいと思います。

アウトドア用を、家の中に据え付けてしまう相談
ときどき、「持っているアウトドア用の薪ストーブを、家の中に据え付けられますか」というご相談を受けます。基本的にはお勧めしていません。
可燃物との離隔距離も、連続して使い続けることを前提にした耐久設計も、住宅への常設を想定して作られていないからです。一度や二度、庭やベランダで使うぶんには問題にならないことが、一冬じゅう毎日となると話が変わってきます。屋外で使う道具と、家の一部として何年も使い続ける設備は、同じ「薪ストーブ」という名前でも、別のカテゴリーとして考えたほうが、あとあと安心です。
よくある質問
Q. アウトドア用にも二次燃焼のモデルがあると聞きました。それなら住宅用と同じですか。
二次燃焼の仕組みを積んだアウトドア用も増えています。それでも、常設を前提にした煙突計画や、建築基準法に沿った離隔距離の設計までは含まれていないことがほとんどです。燃やし方が近くても、設置の前提はやはり別だと考えたほうが安全です。
Q. アウトドア用のほうが軽くて場所を取らないので、狭い家ならそれで十分では。
一冬じゅう毎日焚くという使い方を考えると、耐久性と煙突の安全性のほうが先に効いてきます。狭い家であれば、燃焼効率のいい住宅用のほうが結果的に薪の消費も抑えられることが多いです。
Q. 今、アウトドア用を持っています。買い替えるべきですか。
キャンプや非常用として使い続けるなら、そのままで構いません。無理に買い替える必要はありません。家の暖房として本格的に使いたくなったときに、あらためて住宅用をご検討ください。
結局、何で選べばいいのか
ここまで理屈を並べましたが、選び方はシンプルです。キャンプや庭のBBQ、非常用の備えとして持っておきたいなら、アウトドア用で十分です。うちの店でも焚き火台やアウトドア調理器を扱っていますので、気軽な火はそちらでも楽しめます。
一方、「この冬から、家の暖房を薪ストーブにしたい」「一冬じゅう毎日焚いて、家族の居場所にしたい」という話であれば、それは住宅用の領域です。断熱・間取り・煙突の計画まで含めて、現地を見せてください。うちの仕事は、そこからです。
薪ストーブという同じ名前の道具の中に、キャンプ道具と、家の設備という、まったく別のものが並んでいます。どちらが上ということではなく、使う場所と使う頻度で、選ぶべきものが変わるだけの話です。迷ったら、ショールームで実物を見てください。うちには、いつも火が入っています。
岩手・盛岡で薪ストーブの導入をお考えの方は、ヒタ・アグニ・ドブレ・ヨツール・ハースストーン正規代理店のD'STYLEへ。煙突の計画から施工まで、住宅用の薪ストーブをご提案します。



