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YOMIMONO / 技術

輻射熱という
熱の届け方。
体が感じる暖かさの物理

文・有限会社D'STYLE|岩手・盛岡の薪ストーブとサウナの店

公開日:2026年9月16日 / 最終更新日:2026年10月25日

冬の晴れた日、窓辺の日だまりに座ると、部屋の空気は冷たいままでも背中や膝がじんわりと温まります。焚き火にあたれば、顔は火照るほどなのに背中は寒い。どちらも、熱が空気を介さずに体へ届いていることを教えてくれる場面です。

熱の伝わり方には、伝導・対流・放射(輻射)の三つがあります。エアコンは主に対流で部屋を暖め、薪ストーブは放射と対流の両方で暖めます。この読みものでは、放射という熱の届け方を物理の言葉で少していねいにたどり、同じ室温でも暖かさの感じ方が変わる理由を考えます。

熱は、三つの道を通って移ります

一つめの伝導は、触れ合っているもの同士で熱が移る道です。冷えたフローリングに素足で立つと足裏から熱が奪われていくのは、この伝導によるものです。

二つめの対流は、空気や水が動くことで熱を運ぶ道です。エアコンは室内の空気を吸い込み、熱交換器で温めて吹き出します。温まった空気が部屋をめぐり、肌に触れたところで熱を渡します。空気を動かすことが前提になるため、どうしても風が生まれます。

三つめの放射は、物体がその表面温度に応じて電磁波を出し、その電磁波が別の物体に吸収されて熱に変わる道です。空気をほとんど温めずに届き、真空の中でも伝わります。太陽の熱が宇宙空間を越えて地球に届くのも、この道によるものです。

薪ストーブは、熱くなった本体の表面から放射を出すと同時に、本体に触れて温まった空気が上昇する対流も生み出します。機種によってどちらの性格が強いかが変わり、その違いは「輻射式と対流式」でご紹介しています。

放射の強さは、温度の4乗で決まります

物体が放つ熱放射の量は、ステファン=ボルツマンの法則で表されます。理想的な物体(黒体)が1平方メートルあたりに放つエネルギーは、絶対温度の4乗にステファン=ボルツマン定数(約5.67×10−8 W/(m²・K⁴))を掛けた値になります。

この式に数字を入れてみます。20℃(絶対温度で約293K)の壁は、1平方メートルあたり約420ワットを放っています。部屋の中のあらゆる面が、目に見えない赤外線を常に出し合っているわけです。これに対して、表面が300℃(約573K)のストーブは約6,100ワットを放ちます。二つの面の絶対温度の比は2倍に届きませんが、4乗が効くため、放つ熱は20℃の壁の約15倍に達します。絶対温度がちょうど2倍になれば、放射は16倍です。

放射の色合い、つまり波長も温度で変わります。最も強く放たれる波長は、ウィーンの変位則により約2,898を絶対温度で割った値(マイクロメートル)になります。皮膚の表面温度をおよそ33℃とすると、その波長は約9.5マイクロメートル、300℃の鋳鉄なら約5マイクロメートルで、どちらも目に見えない赤外線の領域です。表面温度が約5,800Kの太陽では約0.5マイクロメートルとなり、目に見える光の領域に入ります。

人の皮膚は、この長い波長の赤外線をきわめてよく吸収します。放射率の一覧では、人の皮膚は0.97から0.999とされ、理想的な黒体にごく近い値です。よく吸収する面は、同じだけよく放つ面でもあります。

人の体は、熱の多くを放射で手放しています

私たちの体は、周りの壁や窓、天井と、絶えず赤外線をやりとりしています。生理学の教科書には、安静にしている人が失う熱のうち、およそ60パーセントが放射、15パーセントが対流、20パーセントが蒸発、3パーセントほどが伝導によるとする記述があります。暖かさを考えるとき、空気の温度と同じくらい、周りの面の温度が大切になる理由がここにあります。

簡単のため放射率を1として、皮膚の表面を33℃と置いて計算してみます。皮膚は1平方メートルあたり約500ワットを放ち、20℃の壁からは約420ワットを受け取ります。差し引きで約80ワットが、放射によって壁へ流れていく計算です。向き合う面が10℃に冷えた窓ガラスなら、受け取る量は約360ワットまで減り、差し引きは約130ワットと1.7倍ほどに増えます。

冷たい窓のそばにいると、窓から寒さが降りてくるように感じます。物理の上で起きているのは、体から出ていく放射に見合うだけの放射が、冷たい面から返ってこないという現象です。窓辺の寒さには、空気の流れによる冷え込みも加わります。床付近の空気が冷える仕組みについては「エアコンで足元が寒い理由」で取り上げています。

温度計の数字と、体が感じる温度

周りの面の温度をひとつにまとめた指標を、平均放射温度といいます。体が実際の部屋と同じだけの放射をやりとりするような、仮想の均一な囲いの温度のことです。そして、空気の温度と平均放射温度を合わせた指標を、作用温度と呼びます。静かに座って過ごし、気流が毎秒0.1メートル程度までの穏やかな室内では、作用温度は両者のほぼ平均として扱えます。

この考え方を使うと、日々の実感がよく説明できます。エアコンで空気を24℃に保っていても、冷えた窓や外壁のせいで平均放射温度が18℃なら、作用温度は21℃です。反対に、空気は20℃でも、ストーブの放射や温まった壁で平均放射温度が24℃なら、作用温度は22℃になります。温度計の数字は低いのに後者のほうが暖かく感じられるのは、このためです。

壁掛けの温度計やエアコンのセンサーが測っているのは、基本的に空気の温度です。数字のわりに寒い、数字のわりに暖かいという感覚は、多くの場合、周りの面の温度の違いから生まれています。

放射の暖かさには、向きと距離があります

放射は光と同じようにまっすぐ進むため、受け取る量は熱源の見え方で決まります。熱源が視界の中で大きく見えるほど多く受け取り、離れて小さく見えるほど少なくなります。焚き火の前で顔だけが熱いのは、体の前面だけが火を向いているからです。

向きによる不均一さには、許容できる範囲の目安があります。室内環境の欧州規格(EN 16798-1)では、一般的な住まいや事務所に相当する区分で、温かい天井との差は5K未満、冷たい壁とは10K未満、冷たい天井とは14K未満、温かい壁とは23K未満とされています。人は頭上から来る熱には敏感で、横から来る温かい放射にはずっと寛容だということが、この数字から読み取れます。床に据えて横から暖める薪ストーブは、この性質に合った熱源といえます。

赤外線は皮膚の表面近くで吸収されて熱に変わり、その熱は血流によって体の内側へ運ばれます。前は暖かく背中は涼しいという偏りは、ストーブの熱で壁や床が温まり、それらの面が穏やかな放射を返し始めると、次第にならされていきます。

放射を生かす住まいと暮らし方

放射の暖かさを生かす第一歩は、冷たい面を減らすことです。窓は家の中で最も冷えやすい面で、複層ガラスや内窓で室内側の表面温度が上がれば、体から奪われる放射が減ります。夜はカーテンを閉めて、冷えたガラスと体のあいだに一枚の面をはさむだけでも違いが出ます。

家具の置き方も効いてきます。放射はまっすぐ進むので、ストーブとソファのあいだに背の高い家具があると、その陰には熱が届きにくくなります。ストーブが見える場所は、熱も届く場所です。

エアコンとの併用では、それぞれの得意を組み合わせる考え方が役立ちます。空気を動かすのは対流の仕事、体や壁を直接温めるのは放射の仕事です。温風が苦手な方に向けた工夫は「エアコンの風が気になる人へ」にまとめました。

日だまりの心地よさを、冬の夜の部屋にもつくる。放射という熱の届け方を知ると、暖房選びは、空気の温度を上げる工夫から、体を包む面の温度を整える工夫へと広がっていきます。

エアコン暖房の実力 対流暖房の仕組みと、外気温ごとの能力低下。 薪ストーブのページ 輻射熱で暖める薪ストーブの機種一覧。 サウナのページ 輻射熱で暖めるサウナヒーターと施工事例。

参考:ステファン=ボルツマン定数は米国立標準技術研究所(英語)、皮膚の放射率は百科事典の放射率の項(英語)、放熱の内訳は生理学の教科書(英語)、作用温度の定義は百科事典(英語)、放射の不均一さの目安は欧州暖房換気空調協会の解説(英語)による。数値の計算は当社。

よくある質問

Q. 遠赤外線パネルヒーターも輻射ですか?

はい、遠赤外線パネルヒーターも輻射暖房の一種です。ただし表面温度が100〜200度程度のため、薪ストーブ(300〜400度)やサウナストーンと比べると輻射の強さは穏やかです。狭い範囲をじんわり暖めるのに向いています。

Q. 岩手以外の東北でも対応していますか?

はい。当社は岩手・盛岡を拠点に、青森県・秋田県・山形県・宮城県をはじめ東北全域で施工を行っています。まずはお気軽にご相談ください。

D'STYLE
橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)

岩手・盛岡で薪ストーブとサウナの施工を手がけて20年。

輻射熱の暖かさを、体で知る。

盛岡のショールームで薪ストーブとサウナの暖かさを体験できます。