01
カタログの数字の正体
エアコンのカタログには、たくさんの数字が並んでいます。
でも、いちばん大事な数字が小さな文字で書いてあります。
カタログに載っている5つの数字
| 数字 | 意味 | 測り方 |
|---|---|---|
| 冷房能力 | 冷やす力(kW) | 外35℃・室内27℃ |
| 暖房能力 | 温める力(kW) | 外7℃・室内20℃ |
| 低温暖房能力 | 寒いときの全力(kW) | 外2℃・室内20℃ |
| APF | 1年通しての省エネ度 | 東京の気温パターン |
| 畳数のめやす | どのくらいの部屋に合うか | 1964年の断熱基準で計算 |
ここがポイント
「暖房能力」の外気7℃は、東京の冬の朝の気温です。
盛岡の1月の平均気温は -1.9℃、朝の最低気温は -6.5℃。
カタログの暖房能力は、盛岡の冬とは別の世界で測った数字です。
「畳数のめやす」は、1964年(昭和39年)の断熱基準で計算しています。
60年前の家は、今の家よりずっと隙間が多かった。
今の高断熱住宅なら、エアコンは楽をしています。昔の家なら、もっとつらい。
02
冷房は強いのに、暖房が弱い理由
エアコンは「熱を作る機械」ではありません。
「外の空気から熱をかき集めて、部屋に運ぶ機械」です。
冷房と暖房の違い
部屋の中(27℃)から熱を吸い取って、
外(35℃)へ捨てる。
温度差 = 8℃
熱を捨てる先が暑くても、
捨てるだけだから楽。
外の空気から熱をかき集めて、
部屋の中へ運ぶ。
7℃のとき温度差 = 13℃
-5℃のとき温度差 = 25℃
-10℃のとき温度差 = 30℃
外が寒いほど、
かき集められる熱が少ない。
大きい部屋ほど、この問題が深刻になる
小さい部屋(6畳)に小さいエアコン。暖房が足りなければ、こたつ1台でフォローできます。
大きい部屋(20畳のリビング)に大きいエアコン。
暖房能力が半分に落ちたら、10畳分しかない。
20畳のリビングを10畳の力で温めるのは、無理です。
こたつ2台、ファンヒーター2台…… どんどん増えていきます。
さらに、大きい部屋ほど壁の面積が広く、窓も大きい。
「必要な熱量」は部屋が大きいほど急に増えるのに、
「エアコンが出せる熱量」は寒くなるほど急に減る。
この二重の挟み撃ちが、大きい部屋で起きます。
霜取り運転 ── 暖房が止まる時間
外気が5℃を下回ると、室外機の熱交換器に霜がつきます。
30〜90分ごとに「霜取り運転」が始まり、3〜15分間、暖房が止まります。
機種によっては冷風が出ます。
盛岡の冬(11月〜3月)は、ほぼ毎日この温度帯です。
実効の暖房時間は、10〜25%減ります。
03
外の気温で暖房力はこう変わる
カタログの暖房能力を100%として、外の気温が下がるとどこまで落ちるか。
赤い数字が、盛岡の冬です。
標準タイプ
| 機種 | 7℃ カタログ値 | 2℃ 低温暖房 | 0℃ 初霜 | -5℃ 盛岡1月朝 | -10℃ 厳寒 | -15℃ 強い寒波 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 6畳用 冷房2.2kW | 2.2kW 100% | 1.8kW 83% | 1.7kW 77% | 1.3kW 60% | 1.0kW 43% | 0.6kW 27% |
| 8畳用 冷房2.5kW | 2.8kW 100% | 2.3kW 83% | 2.1kW 77% | 1.7kW 60% | 1.2kW 43% | 0.7kW 27% |
| 10畳用 冷房2.8kW | 3.6kW 100% | 3.0kW 83% | 2.8kW 77% | 2.2kW 60% | 1.6kW 43% | 1.0kW 27% |
| 12畳用 冷房3.6kW | 4.2kW 100% | 3.5kW 83% | 3.2kW 77% | 2.5kW 60% | 1.8kW 43% | 1.1kW 27% |
| 14畳用 冷房4.0kW | 5.0kW 100% | 4.2kW 83% | 3.8kW 77% | 3.0kW 60% | 2.2kW 43% | 1.3kW 27% |
| 18畳用 冷房5.6kW | 6.7kW 100% | 5.6kW 83% | 5.1kW 77% | 4.0kW 60% | 2.9kW 43% | 1.8kW 27% |
| 20畳用 冷房6.3kW | 7.1kW 100% | 5.9kW 83% | 5.4kW 77% | 4.3kW 60% | 3.1kW 43% | 1.9kW 27% |
| 23畳用 冷房7.1kW | 8.5kW 100% | 7.1kW 83% | 6.5kW 77% | 5.1kW 60% | 3.7kW 43% | 2.3kW 27% |
寒冷地タイプ(ズバ暖・スゴ暖・フル暖など)
| 機種 | 7℃ カタログ値 | 2℃ 低温暖房 | 0℃ 初霜 | -5℃ 盛岡1月朝 | -10℃ 厳寒 | -15℃ 強い寒波 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 6畳用 冷房2.2kW | 2.5kW 100% | 2.2kW 90% | 2.1kW 86% | 1.9kW 76% | 1.6kW 66% | 1.4kW 56% |
| 10畳用 冷房2.8kW | 3.6kW 100% | 3.2kW 90% | 3.1kW 86% | 2.7kW 76% | 2.4kW 66% | 2.0kW 56% |
| 14畳用 冷房4.0kW | 5.0kW 100% | 4.5kW 90% | 4.3kW 86% | 3.8kW 76% | 3.3kW 66% | 2.8kW 56% |
| 18畳用 冷房5.6kW | 6.7kW 100% | 6.0kW 90% | 5.8kW 86% | 5.1kW 76% | 4.4kW 66% | 3.8kW 56% |
| 20畳用 冷房6.3kW | 7.1kW 100% | 6.4kW 90% | 6.1kW 86% | 5.4kW 76% | 4.7kW 66% | 4.0kW 56% |
寒冷地エアコンは「落ちにくい」だけで、「落ちない」わけではありません。
-15℃では標準タイプの約2倍の能力が残りますが、カタログ値の6割程度です。
過信は禁物です。
04
「暖房20畳」は、盛岡では何畳?
カタログの暖房の畳数を、盛岡の冬の気温で換算しました。
| 機種 | 冷房 (鉄筋) |
暖房 カタログ値 (木造・7℃) |
暖房 盛岡の朝 (-5℃) |
暖房 厳寒の夜 (-10℃) |
|---|---|---|---|---|
| 6畳用 | 9畳 | 5畳 | 3畳 | 2畳 |
| 8畳用 | 10畳 | 6畳 | 4畳 | 3畳 |
| 10畳用 | 12畳 | 8畳 | 5畳 | 3畳 |
| 12畳用 | 15畳 | 9畳 | 5畳 | 4畳 |
| 14畳用 | 17畳 | 11畳 | 7畳 | 5畳 |
| 18畳用 | 23畳 | 15畳 | 9畳 | 7畳 |
| 20畳用 | 26畳 | 16畳 | 10畳 | 7畳 |
| 23畳用 | 30畳 | 20畳 | 12畳 | 9畳 |
20畳用のエアコンが、盛岡の厳寒の夜には7畳の力しか出せない。
これがカタログには書いていない、いちばん大事な数字です。
05
盛岡の冬、エアコン暖房の電気代
暖房能力が落ちても、電気代は落ちません。むしろ上がります。
能力が落ちた分、エアコンはフル稼働で電気を食います。
| 機種 | 東京の冬 (7℃・1日14時間) |
盛岡の冬 (-5℃・フル稼働) |
|---|---|---|
| 6畳用 | ¥7,598/月 | ¥19,270/月 |
| 14畳用 | ¥20,440/月 | ¥37,367/月 |
| 20畳用 | ¥31,604/月 | ¥45,570/月 |
盛岡で20畳用エアコンを暖房でフル稼働させると、月4〜5万円。
12月〜3月の4か月で 16〜20万円。
薪ストーブの薪代は、年間 10〜15万円(購入する場合)。
自分で調達できれば、もっと安くなります。
06
薪ストーブは、外の気温に左右されない
エアコンは外が寒いほど弱くなる。薪ストーブは外が寒いほど強くなる。
煙突のドラフト(上昇気流)が強まり、燃焼が安定するからです。
外が寒い → 熱源(外の空気)が減る
→ 能力低下+霜取りで止まる
→ 電気代が跳ね上がる
いちばん寒いときに、いちばん頼りにならない。
外が寒い → 煙突ドラフトが強くなる
→ 燃焼が安定、出力は変わらない
→ 蓄熱で火が消えても暖かい
いちばん寒いときに、いちばん頼りになる。
数字で比べてみると
| エアコン20畳用 | 薪ストーブ (定格7kW級) | |
|---|---|---|
| 7℃での暖房力 | 7.1kW | 7.0kW |
| -5℃での暖房力 | 4.3kW | 7.0kW |
| -10℃での暖房力 | 3.2kW | 7.0kW |
| -15℃での暖房力 | 2.5kW | 7.0kW |
| 電源を切ったあと | 即座に冷える | 蓄熱で1〜3時間温かい |
| 月の費用(12〜3月) | ¥30,000〜50,000 | ¥25,000〜40,000 (薪購入の場合) |
07
盛岡でエアコンを選ぶなら、ここを見る
エアコンを否定しているわけではありません。
夏の冷房と、春秋の軽い暖房には、エアコンは最高の道具です。
でも冬の主暖房には、カタログの数字を正しく読んでから決めてください。
見るべき3つの数字
- 低温暖房能力(外気2℃での最大出力)
カタログの奥のほうに小さく書いてあります。盛岡では「暖房能力」より、こちらが現実に近い。 - 暖房の畳数(木造)
鉄筋のほうは大きく見えますが、岩手の住宅は木造が多い。木造の数字で見てください。
その数字をさらに6割にしたのが、盛岡の真冬の実力です。 - 暖房の消費電力(最大値)
盛岡の冬はフル稼働が当たり前。最大消費電力 × 14時間 × 30日 × 31円 が、だいたいの月の電気代です。
薪ストーブとエアコンの併用という選択
冬の主暖房は薪ストーブ。
帰宅直後の立ち上がり待ちや、深夜の補助にエアコン。
この組み合わせが、盛岡の冬でいちばん合理的です。
薪ストーブが本気を出すまでの20〜30分を、エアコンがつなぐ。
薪ストーブが温まったら、エアコンは消す。
それぞれが得意なことだけをやる。いちばん賢い使い方です。
FAQ
よくある質問
寒冷地エアコンなら大丈夫ですか?
標準タイプより確実に強いですが、-15℃ではカタログ値の6割程度まで落ちます。 20畳用の寒冷地エアコンでも、-15℃では12畳分くらいの力。 「大丈夫」の基準は、お住まいの広さと断熱性能によります。
ペレットストーブはどうですか?
ペレットストーブも外気温に左右されません。出力は4〜10kW(機種により異なります)。 電源は必要ですが薪の調達が不要で、自動運転ができます。 薪ストーブとエアコンの中間の性格です。 ペレットストーブのページに詳しい話があります。
このページの数字は正確ですか?
能力低下率は、各メーカーの公表データと JIS B 8615-1 の試験条件を基に、
当社が算出した推定値です。実際の低下率は機種・設置環境・使用条件により異なります。
カタログの数字(暖房能力・低温暖房能力・APF)は省エネ性能カタログ2025年版の代表値です。
薪ストーブの工事はいくらくらいですか?
ストーブ本体と煙突工事で、150万円〜350万円くらい(機種と工事内容によります)。 詳しくは費用と相場のページをご覧ください。 相談は無料です。
数字を並べるところまでが当社の仕事です。
「このストーブが合う・合わない」を決めるのは、数字を見たお客様ご自身です。
ここに書いた数字の話を、もう一段深くしたい方。
盛岡のショールームで、火のそばで続きをどうぞ。
