盛岡に住んでいると、冬の朝にエアコンが「追いつかない」場面は珍しくない。設定温度を24度にしても部屋が20度止まり。風量を最大にしても足元が冷たい。故障を疑って業者を呼んだが、異常なしと言われた。
異常がないのに暖まらない。その原因は、エアコンの仕組みと盛岡の冬の気温の組み合わせにある。
盛岡の冬は、エアコンの試験条件より17度低い
エアコンの暖房能力は、JIS C 9612という規格で「外気温7度」のときに測定される。東京の冬の平均的な気温を想定した試験条件だ。
盛岡の冬はこうなる。
12月:平均 −4℃ / 厳しい朝 −10℃
1月:平均 −6℃ / 厳しい朝 −13℃
2月:平均 −5℃ / 厳しい朝 −12℃
JISの試験条件との差:11〜20℃
JISが想定する7度と、盛岡の朝のマイナス10度は17度も離れている。この17度がエアコンの暖房力を半分以下に削る。
盛岡の朝、エアコンはどこまで落ちるか
標準的なエアコンは、外気温が7度を下回ると1度ごとにカタログ値から約3.3%ずつ能力が落ちる。盛岡の朝の気温で計算するとこうなる。
| 外気温 | 20畳用(標準) | 20畳用(寒冷地) | 実質の畳数(標準) |
|---|---|---|---|
| 7℃(JIS基準) | 7.1 kW(100%) | 7.1 kW(100%) | 20畳 |
| 0℃ | 5.4 kW(77%) | 6.1 kW(86%) | 15畳 |
| −5℃(盛岡12月) | 4.2 kW(60%) | 5.4 kW(76%) | 11畳 |
| −10℃(盛岡1月) | 3.1 kW(43%) | 4.7 kW(66%) | 7畳 |
| −15℃(冷え込む朝) | 2.2 kW(27%) | 4.0 kW(56%) | 5畳 |
盛岡の1月の朝、標準のエアコン20畳用は実質7畳分しか出せない。リビングにもう一台エアコンを足しても、2台で14畳分。20畳のLDKはまだ足りない。
岩手で使われてきた暖房
岩手の家庭ではもともと灯油のストーブやボイラーが主力だった。灯油の暖房は外気温に関係なく火力が出るし、霜取り運転もない。エアコンが普及した今でも、灯油併用の家庭は多い。
ただ、灯油は価格が安定しない。2020年代は1リットル100円前後で推移しており、20畳のLDKをシーズン通して暖めると10万円を超える家庭もある。そして灯油には「におい」と「給油の手間」がある。
薪ストーブとペレットストーブという選択肢
岩手には、もうひとつの選択肢がある。薪ストーブとペレットストーブだ。
薪ストーブは6kWから15kWの出力があり、外気温に左右されない。10kWの薪ストーブは、マイナス10度の朝でも10kW。エアコン20畳用を4台分の暖房力を、薪を燃やすだけで得られる。
ペレットストーブは薪ストーブより手間が少ない。タンクにペレットを入れてスイッチを押すだけで、自動で点火・運転・消火する。排気筒の工事も煙突より小規模で済む。3kWから15kWまで機種がある。
どちらも「岩手の気温」と「エアコンの限界」を知った上で選ぶと、判断の精度が上がる。数字を並べるところまでが当社の仕事です。「このストーブが合う・合わない」を決めるのは、数字を見たお客様ご自身です。
この計算はエアコンの物理特性に基づくもので、全国どこでも同じように当てはまります。盛岡と同じく冬の寒さが厳しい青森・秋田・山形・宮城でも、同じようにエアコンの能力は落ちます。東北5県に共通する問題です。
エアコン暖房の実力 能力低下の計算式と全13機種の外気温ごとの出力表。 薪ストーブのページ 岩手・盛岡で扱う薪ストーブのブランドと機種。 ペレットストーブのページ トヨトミ・ウォームアーツ・ハーマン。国産からイタリア製まで。