YOMIMONO / 暖房の数字

エアコンの「20畳用」が
20畳を暖められない理由

文・有限会社D'STYLE|岩手・盛岡の薪ストーブとサウナの店

公開日:2026年9月16日

家電量販店でエアコンを選ぶとき、まず目に入るのが「おもに20畳」「おもに14畳」という表示だ。自分の部屋の広さに合わせて選べば大丈夫、とほとんどの人が思う。岩手に住んでいる私たちも、かつてはそう考えていた。

ところが、あの畳数は「外の気温が7度のとき」の能力で決まっている。盛岡の1月の朝、外がマイナス10度になったとき、エアコンが出せる暖房の力はカタログの半分以下になる。

畳数を決めているJISの試験条件

エアコンの暖房能力を測る試験規格はJIS C 9612。この規格が定める暖房の試験条件は、外気温7度・室内20度だ。東京の冬の平均気温が5〜6度だから、関東の基準としては合っている。

問題は、この7度という数字が全国一律であること。盛岡の1月の平均最低気温はマイナス5度、明け方はマイナス10度を下回ることが珍しくない。試験条件と実際の気温のあいだに、17度もの開きがある。

気温が下がると、どれだけ能力が落ちるか

エアコンのヒートポンプは、外の空気から熱を汲み上げて室内へ送る仕組みだ。外の気温が下がると、汲み上げられる熱の量が減り、暖房の出力が落ちる。

標準的なエアコンの場合、7度を下回ると1度ごとにカタログ値から約3.3%ずつ能力が落ちていく。下の数字を見てほしい。

20畳用エアコン(カタログ値 7.1kW)の実力
外気温 7℃(JIS試験条件):7.1 kW=20畳
外気温 0℃:5.4 kW=15畳
外気温 −5℃:4.2 kW=11畳
外気温 −10℃:3.1 kW=7畳
外気温 −15℃:2.2 kW=5畳

マイナス10度の朝、20畳用のエアコンが出せる暖房の力は3.1kW。カタログ値の43%だ。20畳のリビングに立っているエアコンは、実質7畳分の仕事しかしていない。

寒冷地エアコンなら大丈夫か

「寒冷地仕様」のエアコンは、低温時の能力低下が緩やかに設計されている。標準型が1度あたり約3.3%落ちるのに対し、寒冷地仕様は約2.0%に抑えてある。

寒冷地エアコン 20畳用(カタログ値 7.1kW)の場合
外気温 −5℃:5.4 kW=15畳
外気温 −10℃:4.7 kW=13畳
外気温 −15℃:4.0 kW=10畳

マイナス10度で13畳。標準型の7畳よりはだいぶましだが、それでもカタログの20畳には届かない。「寒冷地用だから大丈夫」と20畳の部屋に20畳用を入れると、冷え込んだ朝は暖まりきらない。

霜取り運転のこと

能力の低下に加えて、もう一つの問題がある。外気温が0度を下回ると、室外機の熱交換器に霜が付く。霜が厚くなると空気の取り込みができなくなるため、エアコンは暖房を止めて「霜取り運転」に入る。

霜取りの間、10分から15分ほど暖房が止まる。気温が低いほど頻度が上がり、マイナス10度以下ではおよそ1時間に1回、霜取りが入るようになる。暖房が切れるたびに室温が2〜3度下がるので、体感温度はカタログの能力以上に落ちる。

なぜ畳数の表示は変わらないのか

エアコンの畳数表示が全国一律なのは、JIS規格がそう定めているからだ。メーカーも「低温暖房能力」という数値をカタログの隅に小さく載せてはいるが、売り場では「おもに20畳」の文字が前面に出る。

これはメーカーが嘘をついているのではない。JISの試験条件で測れば、確かに20畳を暖められる能力がある。ただ、岩手の冬はJISの想定の外にある。

数字を知った上で、暖房を選ぶ

エアコンがすべての暖房を担える地域と、そうでない地域がある。岩手はそうでない側だ。エアコンの能力が半分以下になる温度帯で、何を主力の暖房にするか。その判断材料を、数字で持っておくことに意味がある。

薪ストーブの出力は外の気温に左右されない。10kWの薪ストーブは、マイナス10度でも10kWだ。エアコンで同じ暖房力を得るには、20畳用が4台要る。この差が、岩手の冬では効いてくる。

エアコンの暖房能力と外気温の関係は物理法則なので、この計算は北海道から九州まで全国どこでも同じように使えます。とくに岩手・青森・秋田・山形・宮城の東北5県は冬の外気温が厳しく、この問題が暮らしに直結する地域です。

エアコン暖房の実力 ── 深いページ JIS試験条件・能力低下の計算式・全13機種の外気温ごとの出力表。カタログの数字の正体を、全部書きました。 暖房えらびガイド 家の広さと断熱から、必要な暖房の力を考える。

よくある質問

Q. エアコンを2台にすれば解決しますか?

台数を増やせば合計の暖房能力は上がりますが、電気代も台数分になります。マイナス10度で20畳を暖めるには20畳用が3台必要な計算で、月の電気代が5万円を超えるケースもあります。

Q. 寒冷地エアコンを選べば1台で足りますか?

寒冷地仕様はマイナス10度でもカタログ値の約66%を維持しますが、20畳用で13畳分です。20畳のLDKには不足します。ワンサイズ上を選ぶか、サブの暖房と組み合わせるのが現実的です。

Q. この数字はどこから出していますか?

能力低下率は、各メーカーの公表データとJIS B 8615-1の試験条件を基に、当社が算出した推定値です。実際の低下率は機種・設置環境・使用条件により異なります。詳しい計算方法はエアコン暖房の実力に全部書いてあります。

Q. 岩手以外の東北でも対応していますか?

はい。当社は岩手・盛岡を拠点に、青森県・秋田県・山形県・宮城県をはじめ東北全域で施工を行っています。まずはお気軽にご相談ください。

D'STYLE
橋本 大治(有限会社D'STYLE 代表)

岩手・盛岡で薪ストーブの施工を手がけて20年。

数字の先は、体で感じてください。

ショールームで実際に焚いた薪ストーブにあたれます。ご相談は無料です。

相談・お問い合わせ 薪ストーブのページへ