家電量販店でエアコンを選ぶとき、最初に目に入るのは「おもに20畳」「おもに14畳」という大きな表示です。部屋の広さに合わせて選べば足りるはずだと、多くの方が考えます。ところが東北の冬には、20畳用を20畳のリビングに付けたのに、朝になると部屋が暖まりきらないという声をよく耳にします。
その理由は、エアコンの側と部屋の側の両方にあります。カタログの数字の読み方は「エアコンのカタログの読み方」で詳しく扱いました。この読みものでは視点を部屋の側に移し、畳の大きさ、天井の高さ、窓、換気、外の気温、冷えた壁と床という順に、「20畳」という言葉の中身をほどいてみます。
「20畳」という広さは、ひとつに決まっていません
畳の大きさは、地域や建物によって異なります。よく知られる規格では、京間(本間)が約191cm×95.5cm、中京間が約182cm×91cm、江戸間(関東間)が約176cm×88cm、集合住宅に多い団地間が約170cm×85cmです。1枚の面積に直すと、京間は約1.82㎡、団地間は約1.45㎡で、2割以上の差があります。
一方、不動産の広告で部屋の広さを畳数で示すときは、業界の公正競争規約の施行規則により、畳1枚あたり1.62㎡以上という換算を使う決まりです。この基準では20畳は32.4㎡以上となります。同じ20枚の畳を敷いた部屋でも、京間なら約36.5㎡、団地間なら約28.9㎡で、その差は7㎡あまり、1.62㎡で割るとおよそ5畳分に相当します。
「20畳のリビング」という言い方は、間取り図の表記なのか、実際に畳を敷いた枚数なのかで、意味が変わります。エアコンを選ぶ前に、まず床面積を㎡で確かめておくと、後の検討がぶれにくくなります。
畳数の目安は、天井の高さを見ていません
エアコンの畳数の目安は、床の広さだけで区切られています。けれども実際に暖める相手は、床の上に広がる空気と、それを囲む壁や天井です。建築基準法の施行令は居室の天井高を2.1m以上と定めており、住宅では2.4m前後がよく見られますが、近ごろは2.7m前後の高い天井や、吹き抜けのある居間も増えました。
32.4㎡の部屋で天井高が2.4mなら、空気の容積は約78㎥です。天井が2.7mになると約87㎥で、1割あまり増えます。さらに、そのうち6畳分が2階の天井まで吹き抜けていて、高さが5m程度あるとすると、容積はおよそ103㎥となり、天井高2.4mの部屋より3割ほど大きくなります。暖かい空気は上へたまるため、吹き抜けの上部が暖まるほど、人のいる床の近くは取り残されがちです。足元が冷える仕組みは「エアコンで足元が寒い理由」で詳しく書いています。
リビング階段や、廊下へ開け放した引き戸も同じ働きをします。間取り図の上では20畳でも、暖かい空気が流れ出ていく先がつながっていれば、エアコンが受け持つ空間はその分だけ広がります。
窓が、暖めた熱を外へ逃がします
部屋の熱がどこから逃げていくかを考えると、窓の影響が際立ちます。建材と住宅設備の業界団体である日本建材・住宅設備産業協会の資料では、冬の暖房時に家から流れ出る熱のうち、約58%が窓などの開口部からとされています。前提とする住宅の条件によって値は変わり、窓メーカーの試算には52%という数字もありますが、いずれにしても半分前後を占めます。
リビングは家の中でもとくに窓の大きな部屋です。南の掃き出し窓に加えて、庭に面した窓や高窓を設けることも珍しくありません。窓の面積が大きいほど、冷えたガラスの表面で冷やされた空気が床へ流れ落ちる冷気の流れも強くなります。厚手のカーテンを床まで垂らす、内窓を加えるといった手当ては、エアコンの機種を替えるより先に効くことがあります。
換気で入れ替わる空気も、暖め直しています
2003年7月に施行されたシックハウス対策の法改正により、住宅の居室には原則として機械換気の設備が求められるようになりました。住宅では、1時間に部屋の空気のおよそ半分を入れ替える能力がひとつの目安になっています。
先ほどの天井高2.4mの20畳で考えると、1時間に入れ替わる空気は約39㎥です。空気1㎥の温度を1℃上げるのに要る熱は約0.33Whですから、室温20℃に対して外気が盛岡の1月の日最低気温の平年値であるマイナス5.2℃なら、入ってくる冷気を暖め直すだけで約320W、マイナス10℃なら約390Wの熱を使い続ける計算です。熱交換型の換気設備であれば、この量は小さくなります。換気そのものは健康のために欠かせないものですから、止めずに、その分の熱を見込んでおくことが大切です。
外の気温が下がると、機械の力も下がります
ここで、ようやくエアコンの側に目を向けます。カタログの暖房能力は、日本産業規格JIS C 9612に基づき、外気7℃・室内20℃の条件で測った値です。低温暖房能力の欄は、外気2℃での値を示しています。気象庁の平年値(1991〜2020年)では、盛岡の1月の平均気温はマイナス1.6℃、日最低気温はマイナス5.2℃で、真冬の朝は試験の条件をかなり下回ります。
エアコンは外の空気から熱を汲み上げて室内へ運ぶ機械なので、外気が冷えるほど運べる熱が減ります。当社が各社の公表値をもとに試算した目安では、標準的な20畳用(定格7.1kW)は、外気マイナス10℃で3kW前後まで能力が下がります。加えて、室外機に付いた霜を溶かすあいだは暖房が一時止まります。機種ごとの落ち方は「エアコン暖房の実力」に表でまとめています。
冷えきった部屋は、空気より先に壁と床が熱を吸います
夜のあいだ暖房を止めていた部屋では、朝の時点で空気だけでなく、床や壁、家具までが冷えています。エアコンの温風で空気の温度はすぐに上がりますが、冷えた床や壁は、その熱を少しずつ吸い取っていきます。空気に比べて床や壁、家具ははるかに多くの熱を蓄えるため、温度計の数字が設定温度に届いても、体には肌寒さが残ります。人は周りの面との熱のやりとりでも寒さや暖かさを感じているからです。
しかも、朝は一日のうちで最も外気が冷える時間帯で、エアコンの能力が最も落ちる時間とも重なります。朝は、必要な熱が最も大きく、出せる熱が最も小さい時間帯です。20畳用が20畳を暖めきれないと感じる場面の多くは、この重なりの中で起きています。
足りない分を見積もり、補う方法を考えます
ここまでの話をまとめると、確かめておきたい点は五つです。床面積を㎡で測ること、天井の高さと吹き抜けやリビング階段の有無、窓の大きさと種類、換気設備の種類、そして真冬の朝の外気温です。これらを並べると、カタログの畳数だけを頼りにした場合と比べて、必要な暖房の大きさがかなり違って見えてくるはずです。
そのうえで、窓の断熱や、暖かい空気の逃げ道をふさぐ工夫といった部屋の側の手当てと、暖房機器の選び方の両方から考えます。エアコンをひとまわり大きくする方法のほか、外の気温に出力が左右されない熱源を組み合わせる方法もあります。薪ストーブやペレットストーブは燃料を燃やして熱をつくるため、真冬の朝にも出せる熱が変わりません。冷え込みの厳しい時間をそちらに任せ、穏やかな日や季節の変わり目はエアコンで補うという分担も考えられます。
当社では、お住まいの間取りや窓の様子をうかがいながら、エアコンを生かしたうえで何を足せばよいかを一緒に考えています。間取り図や部屋の写真があれば、検討はより具体的になります。
関連するページ:盛岡・岩手の薪ストーブ専門店
参考:畳の規格寸法と広告での1畳=1.62㎡の換算は不動産用語の解説(三井のリハウス)、開口部から逃げる熱の割合は日本建材・住宅設備産業協会の資料を引いた解説記事、シックハウス対策の換気設備の義務化は国土交通省、盛岡の気温は気象庁の平年値(1991〜2020年)による。エアコンの低温時の能力は当社の試算。
エアコン暖房の実力(詳しいページ) JISの試験条件、能力低下の計算式、全13機種の外気温ごとの出力表をまとめています。 暖房えらびガイド 家の広さと断熱から、必要な暖房の力を考える。