1月の朝6時、部屋が急に冷えてきて目が覚める。エアコンのランプは点いているのに、風が出ていない。リモコンを確認しても異常なし。10分ほどすると、また風が出始める。
故障ではない。「霜取り運転」だ。寒冷地に住んでいると、冬に何度もこれを経験する。
霜取り運転が起きる仕組み
エアコンの暖房は「ヒートポンプ」という仕組みで動いている。外の空気から熱を汲み上げて、室内に運ぶ。外が寒くても、空気の中にはわずかな熱がある。それを圧縮して温度を上げ、室内へ送る。
問題は、外の空気から熱を奪うとき、室外機の熱交換器が外気より冷たくなること。外気温が0度を下回ると、空気中の水蒸気が熱交換器の表面で凍る。霜だ。
霜が付くと空気が通らなくなる。すると熱が汲み上げられない。エアコンは暖房を止め、冷媒の流れを逆にして室外機を温め、霜を溶かす。これが霜取り運転だ。
どのくらい止まるのか
霜取り運転の時間は、1回あたり10分から15分。気温が低いほど霜が付きやすく、頻度が上がる。
外気温がマイナス5度のとき、およそ2時間に1回。マイナス10度ではおよそ1時間に1回。マイナス15度を下回ると、もっと頻繁になる。暖房が稼働している時間のうち、2割近くが霜取りに取られることもある。
止まっている間、室温は2度から3度下がる。再起動しても設定温度に戻るまでにまた時間がかかる。このくり返しが、体感の寒さを数字以上に大きくする。
寒冷地エアコンでも霜は付く
寒冷地仕様のエアコンは、霜取りの時間を短くしたり、室外機のヒーターで霜を予防する設計が入っている。それでも霜取り運転そのものは無くならない。外の空気から熱を汲む仕組みである限り、霜は物理的に避けられない。
停止時間が5分に縮んでも、マイナス10度で1時間に1回は止まる。夜中に3回は止まる計算で、寝ていても気づく人は少なくない。
薪ストーブが止まらない理由
薪ストーブの暖房原理はヒートポンプとまったく違う。薪を燃やし、その熱を鋳鉄や鋼板が吸い取り、輻射熱として部屋へ放つ。外の空気から熱を汲み上げる必要がない。外がマイナス20度でも、炉の中で薪が燃えている限り、暖房の力は変わらない。
霜取りがない。途切れない。止まらない。
もうひとつ、蓄熱という性質がある。鋳鉄製のストーブは100kgから300kgの重さがあり、その重い鉄が熱をため込む。寝る前に薪を入れておけば、明け方まで輻射熱が続く。朝6時に部屋が急に冷えることがない。
どちらが良い悪いではなく
エアコンには立ち上がりの速さがある。ボタンひとつで動く手軽さがある。薪ストーブには、火をおこす手間がある。薪を調達し、乾燥させ、保管する仕事がある。
ただ、岩手の冬の朝に「暖房が止まらない」ことの価値は、東京の人が想像するより大きい。マイナス10度の朝に暖房が10分止まることが、一晩に3回あることが、11月から3月まで毎日続くこと。その体験をした人にとって、薪ストーブの「止まらなさ」は、スペックの数字では表れない安心感になる。
エアコンの暖房能力と外気温の関係は物理法則なので、この計算は北海道から九州まで全国どこでも同じように使えます。とくに岩手・青森・秋田・山形・宮城の東北5県は冬の外気温が厳しく、この問題が暮らしに直結する地域です。
エアコン暖房の実力 能力低下の計算式と外気温ごとの出力表。カタログの数字の正体を全部書きました。 薪ストーブのページ 岩手・盛岡のD'STYLEが扱う薪ストーブ。ブランドと機種の一覧。