冬の夜に停電すると、照明と同じくらい気がかりなのが暖房です。暖房が止まれば部屋の温度は時間とともに下がり、外が氷点下であれば、家の中も少しずつ冷えていきます。停電は地震のほかに、雪や風によっても起こります。雪国では、電線への着雪や雪の重みによる倒木で、規模の大小はあっても毎冬のように各地で停電が起きています。
この読みものでは、停電で止まる暖房と使い続けられる暖房を整理したうえで、冬の停電の実例、電気を使わない火を扱うときの一酸化炭素への注意、そして薪ストーブとペレットストーブそれぞれの備え方をご説明します。2011年の東日本大震災と2018年の北海道胆振東部地震の停電の規模は、「オール電化の家に薪ストーブを足す」でご紹介していますので、あわせてお読みください。
停電で止まる暖房、使い続けられる暖房
エアコンはコンプレッサーとファンを電気で動かすため、停電すると止まります。電気式の床暖房も同様です。灯油を燃やすFF式ストーブや石油ファンヒーターも、点火や送風、燃焼の制御に電気を使うので、タンクに灯油が残っていても運転できません。ペレットストーブも、着火、燃料の送り込み、排気のすべてを電気に頼っています。
電気がなくても使えるのは、乾電池やマッチで点火する反射式などの石油ストーブ、カセットボンベを使うガスストーブ、そして薪ストーブです。いずれも炎の熱を部屋に届ける仕組みで、停電の影響を受けずに燃え続けます。ただし、石油ストーブとガスストーブは、燃焼に室内の空気を使い、燃えたあとのガスもそのまま室内に出す開放型の器具です。薪ストーブは煙を煙突から屋外へ出します。この違いは、後ほどご説明する一酸化炭素の話で大切になります。
冬の停電は、雪と風からも起こります
冬の大きな停電として記録に残るのが、2005年12月22日に新潟県で起きた停電です。雪まじりの強風が運んだ海塩が電線や碍子に付いて絶縁が損なわれ、さらに電線が風で大きく揺れるギャロッピングが重なりました。東北電力管内の下越地域を中心に最大で約65万戸が停電し、すべての地域で電気が戻るまでにおよそ31時間かかっています。
2022年12月の大雪でも、東北電力管内で最大約2万3,600戸が停電しました。内閣府のまとめでは、原因は積雪などに伴う倒木による配電線の断線とされ、倒木が多く道路のない山間部を抱えた佐渡市では、12月26日の朝の時点でも約800戸の停電が続いていました。地震による停電では、2021年2月13日の福島県沖地震で火力発電所が相次いで緊急停止し、東京と東北の電力管内で最大95万戸が停電しています。
岩手をはじめとする北東北は森林の多い土地で、配電線が林の中を通る区間も長くあります。雪の重みで木が倒れれば、範囲は狭くても復旧に時間のかかる停電が起こり得ます。冬の停電は、そのあいだ暖房をどう確保するかという問題と切り離せません。
電気を使わない火にも、注意が要ります
停電の夜に暖を取ろうとして、一酸化炭素中毒の事故が起きることがあります。一酸化炭素は色もにおいもなく、気づかないうちに濃度が上がるところに怖さがあります。
とくに注意したいのが発電機です。経済産業省は、家庭用の発電機を屋内では絶対に使わないよう呼びかけ、物置や倉庫、車内、テント内のような換気の悪い場所での使用も避けるよう求めています。2018年9月の北海道胆振東部地震のあとには、屋内で発電機を使った方が亡くなる事故が起きました。屋外で使う場合も、排気が窓や給気口から入り込まない場所を選ぶ必要があります。
開放型の石油ストーブやガスストーブを使うときは、こまめな換気が欠かせません。東京都は開放型の暖房器具について、1時間に1回以上、5分程度窓を開けるなどの換気を勧めています。寒いからと窓を閉め切ったまま長い時間使い続けるのは避けてください。
車の中で暖を取る場合にも危険があります。JAF(日本自動車連盟)の試験では、マフラーが雪に埋まった状態でエンジンをかけ続けると、車内の一酸化炭素濃度がわずか1分24秒で50ppmに達し、その後は測定器の上限である300ppmを超えました。雪の日に車内で待つときは、マフラーのまわりの雪を取り除き、できるだけエンジンを止めることが大切です。火を使う暖房を置く家では、電池で動く一酸化炭素警報器を備えておくと、停電中でも異常に早く気づけます。
薪ストーブは、煙突の引きで燃え続けます
薪ストーブは、燃焼に使う空気を取り込み、煙を煙突から屋外へ出す暖房です。煙突の中の暖かい排気が上昇する力、いわゆるドラフトが空気を引き込み、排煙を続けますので、送風機もポンプも要りません。点火はマッチやライターで足ります。停電しても、乾いた薪があるかぎり暖房を続けられます。
炎は部屋の明かりにもなり、天板ではやかんの湯を沸かしたり、鍋を温めたりできます。停電でIHクッキングヒーターや電子レンジが使えないあいだも、温かい飲み物や汁物を用意できることは、寒い夜の大きな支えになります。
暖房:電気を使わずに燃え続けます
明かり:炎が部屋を照らします
湯沸かし:天板にやかんを載せます
調理:鍋で温め直しや煮込みができます
そばに置いておきたいもの
乾いた薪(数日分)と焚き付け
マッチかライター
耐熱手袋と懐中電灯
電池式の一酸化炭素警報器
扉を開けて薪を足すときは、炎が落ち着いてから静かに開けると、煙が室内へ戻りにくくなります。停電の夜もふだんと同じ手順で焚くことが、いちばんの安全策です。
ペレットストーブは、電源を用意すれば動かせます
ペレットストーブは停電すると止まりますが、必要な電力はそれほど大きくありません。ハーマンのカタログによれば、消費電力は最小65〜90W、最大150〜245Wです。500Whのポータブル電源で最大運転およそ2〜3時間、1,000Whでおよそ4〜6時間がめやすで、長い停電に備えるなら、燃料を足せば動き続ける正弦波のインバーター発電機が確実です。
注意したいのは、止まった直後です。燃焼ポットに火が残っているのに排気ファンが止まるため、配管の短い納まりでは煙が室内に漏れるおそれがあります。メーカーは無停電電源装置の使用や、排気筒を高く立ち上げる納まりを求めています。容量の選び方や納まりの考え方は「ペレットストーブと停電」にまとめています。薪とペレットの兼用機であれば、停電中は薪に切り替えて焚くこともできます。
ふだん使う暖房が、いざというときの備えになります
停電への備えというと特別な道具を思い浮かべがちですが、実際に頼りになるのは、ふだんから使い慣れた暖房です。薪ストーブであれば、乾いた薪を数日分、手の届く場所に置いておくこと。焚き付けとマッチ、耐熱手袋、懐中電灯をストーブのそばにまとめておくこと。ペレットストーブであれば、ポータブル電源を充電した状態に保ち、つなぎ方を一度試しておくことです。
当社では、薪ストーブをふだんの暖房として使っていただくことを前提にお勧めしています。冬のあいだ毎日火を扱っていれば、焚き付けの組み方も空気の加減も自然に身につき、停電の夜にも落ち着いて火を入れられます。電気の暖房とは別の系統の熱源を、暮らしの中にひとつ持っておくことが、雪国の冬の安心につながると私たちは考えています。
関連するページ:煙突について・ペレットストーブとは
参考:2005年の新潟の停電は東北電力の発表などをもとにした記録(新潟大停電)、2022年12月の大雪は内閣府「令和4年12月22日からの大雪による被害状況等について」(PDF)、2021年の地震は経済産業省「令和3年2月に発生した福島県沖地震の被害とその対応のまとめ」(PDF)、発電機の注意は内閣府広報誌「ぼうさい」掲載の経済産業省の記事(内閣府)、換気の目安は東京都保健医療局(東京都)、車内の一酸化炭素はJAFの試験(JAF Mate)、ペレットストーブの消費電力はハーマンのカタログ(当社の各機種のページ)による。
エアコン暖房の実力 外気温ごとの能力低下。停電でなくても厳しい数字。 薪ストーブのページ 電気を使わない暖房。取扱い機種の一覧。