六月下旬の金曜日、ヘルシンキの街から人が消えます。店は閉まり、道路は郊外へ向かう車で埋まり、都市はしんと静まる。フィンランド最大の祝祭、ユハンヌス(夏至祭)の始まりです。国民の多くが湖畔の別荘や実家へ移動して、白夜の週末を過ごす。そしてこの祝祭の中心には、必ずサウナがあります。今日は、沈まない太陽の夜の話です。
一年でいちばん長い日を、祝う理由
北緯60度を超えるフィンランドの冬は、昼が数時間しかない暗さです。だからこそ、太陽がほとんど沈まない夏至は、光の勝利を祝う一年の頂点になります。キリスト教以前からの太陽の祭りが起源で、後に洗礼者ヨハネの祝日と重なってユハンヌスの名がつきました。現代では六月の20日から26日の間の土曜日が祝日と定められ、前日の金曜から国全体が休みモードに入ります。この日ばかりは、勤勉なフィンランド人も仕事の話をしません。湖と森とサウナへ帰る日、と国中が了解しているのです。
祝祭の道具立ては、火と蒸気と煙
ユハンヌスの一日は、こんなふうに流れます。昼は湖で泳ぎ、釣りをし、庭仕事。夕方、サウナを焚き始める。この日のサウナには特別な意味があり、多くの家がその年最初の新しいヴィヒタ(こちら)を、夏至に間に合うように白樺の若葉で束ねます。一年でいちばん香り高い、下ろしたてのヴィヒタで体を叩く。サウナから上がると、湖畔でコッコと呼ばれる大きな焚き火に火が入ります。水辺に組んだ丸太の櫓が燃え上がり、白夜の空に煙が立つ。周りではマッカラ(こちら)が焼かれ、大人はロンケロを開け、誰かがギターを弾く。夜中の12時でも空は薄明るく、時間の感覚がほどけていく。花火も爆竹もない、火と蒸気と煙だけの、静かな祝祭です。
夏至の夜の、かわいい迷信たち
ユハンヌスには、古い迷信がたくさん残っています。有名なのは、未婚の娘が七種類の野の花を集めて枕の下に置いて眠ると、夢に未来の伴侶が現れるというもの。サウナのヴィヒタを屋根に投げて、柄の向いた方角から結婚相手が来る、という地方の言い伝えもあります。科学の国フィンランドで、この夜だけは誰もが少し迷信深くなる。祝祭とはそういうものだと、あの国は心得ています。ちなみにユハンヌスの天気は毎年の国民的関心事で、「夏至に雨が降ると夏中天気が悪い」と皆が口にしては、たいてい外れます。
岩手の夏至に、白夜の真似ごとを
岩手の夏至は白夜にはなりませんが、それでも日没は19時をまわり、一年でいちばん夕方の長い季節です。この時期の「明るいうちから始めるサウナ」は、フィンランドの夏の気分にいちばん近づける遊びです。夕方5時にサウナを温め、明るい空の下で外気浴。上がったら庭で炭火を熾して、太いソーセージと冷たい炭酸。日本の暦で言えば夏至の日、六月下旬の週末に「わが家のユハンヌス」を定例化してしまう。季節の行事がひとつ増えると、一年の楽しみは確実に増えます(土曜サウナの話)。
夏のサウナの相談も、どうぞ
サウナは冬の道具と思われがちですが、フィンランドのサウナの絶頂は真夏にあります。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターで、夏の夕方のサウナの気持ちよさもご案内しています。今年の夏至の計画、店で一緒に立てましょう。
写真: Petritap (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



