「サウナのあとの冷たい水って、本当に体にいいんですか」。ショールームでよく聞かれます。答えは、まあ条件つきのイエス、というところです。やり方さえ間違えなければ、あの冷たさはサウナの楽しみをぐっと深くしてくれます。
フィンランドの人々は、これを何百年も続けてきました。熱い部屋で温まり、凍った湖へ歩いて入り、また熱い部屋へ戻る。私も、ヘルシンキの海辺にある「Löyly(ロウリュ)」というサウナで、氷点下17℃のなか、凍ったバルト海に何度も入ってきました。最初の一歩は、いまでも怖い。それでも水から上がった瞬間、体の芯から熱が湧いてくる。あの往復の気持ちよさは、正直、理屈だけでは説明がつきません。

そして、この気持ちよさには裏付けもあります。温冷交代浴について研究でわかっていることと、これだけは守ってほしい安全のことを、7つに分けて書いていきます。
真実1:世界中で、静かに広がっている
温冷交代浴は「コントラスト療法」とも呼ばれ、いま世界のあちこちで広がっています。アスリートは回復のために、起業家は朝の習慣として取り入れている。北欧の伝統だった熱と冷の往復が、国境を越えて日常に入ってきました。日本の水風呂ブームも、たぶんその流れの一部です。
特別な道具も広い場所もいりません。熱いところと、冷たいところ。それさえあれば、どこでも始められます。手軽なんです。だから、これだけ広がったのだと思います。
真実2:冷たい水は、体の号砲
冷水に入ると、体は一瞬で反応します。血管がきゅっと締まって、心拍が上がる。血液は体の中心へ引き上げられます。この冷刺激には、炎症や筋肉痛をやわらげたり、免疫の働きを高めたりする効果があると報告されています。激しい練習のあとにアスリートが氷水へ浸かるのも、この反応を借りるためです。
冷たさは、体にとっては軽い非常事態のようなものです。だから全身が引き締まり、内側からぐっと力が湧いてくる。つらいはずの冷たさが、上がった直後にはなぜか心地よさに変わっている。あの不思議な感じは、ここから来ています。

真実3:ノルアドレナリンは、天然のコーヒー
冷たい水に浸かると、覚醒物質のノルアドレナリンが急に増えることがわかっています。頭が冴えて、気分が上を向く。集中もしばらく続きます。朝のコーヒー一杯に近い働きを、体が自前で用意してくれるわけです。
ただし、この急な反応は心臓への負担でもあります。強い冷刺激が不整脈を引き起こすリスクも指摘されています。心疾患のある方は、高温のサウナから氷水へ直行するのは絶対に避けてください。始める前に、必ずかかりつけ医に相談を。ここだけは、譲れません。
真実4:熱い部屋は、血管の体操
サウナに座ると、今度は逆のことが起きます。血管が開いて、皮膚の血流が増える。心拍は軽い運動をしたくらいまで上がります。フィンランドの長期研究では、サウナによく入る人ほど心血管疾患で亡くなるリスクが低かった、と報告されています。ロウリュの熱に身をあずける時間は、いわば血管の柔軟体操です。

真実5:交互に浴びると、ポンプになる
締まって、開く。締まって、開く。熱と冷を交互に浴びると、血管はポンプみたいに動き出します。血の巡りがよくなって、回復も進む。そのあとに、深い落ち着きと澄んだ集中がやってきます。熱だけでも、冷だけでも、たどりつけない場所です。サウナ好きが「ととのう」と呼ぶ状態の裏には、この往復があります。
回数を重ねるほど、体はこのリズムに慣れていきます。最初は身構えた冷水も、やがて楽しみに変わる。往復のたびに、頭のなかの雑音がひとつずつ静まっていくのがわかります。
真実6:始め方には、順序がある
入り方そのものは、難しくありません。まずサウナに10〜20分。無理はせず、心地よく汗をかく程度で。次に冷水へ。最初は1〜2分からで十分です。手足に水をかけるだけでも、立派な一歩。上がったら水分をとって、しっかり休む。この一巡を2〜3周。できれば、ひとりよりは友人と一緒がいい。顔色の変化に気づいてくれる人がそばにいるだけで、安全性はずいぶん変わります。物足りないくらいでやめておく。長く続けるコツは、たぶんそれくらいです。
真実7:儀式そのものに、癒しがある
最後に、数字にならない話をひとつ。温冷交代浴のあいだ、手にスマートフォンはありません。熱い部屋では、ただ呼吸をしている。冷たい水では、ただ感覚だけがある。画面から完全に離れて、自分の体とだけ向き合う数十分。この時間そのものが、いまのわたしたちには案外いちばんの癒しなのかもしれません。
熱い部屋で血管がゆるみ、冷たい水で締まる。
その行ったり来たりが、体を目覚めさせるんだと思います。
その点、岩手は恵まれています。冬の澄んだ外気に、冷たい水。おまけに雪まである。この往復をやるための舞台が、最初からそろっているんです。冷やし方の具体的なやり方は体を冷やす7つの方法に書きました。自宅にその舞台をつくってみたくなった方はサウナの設計・施工のページへ。盛岡・国道4号線沿いのショールームで、熱い部屋の入口をご案内しています。
参考文献:Laukkanen T, et al. JAMA Internal Medicine(2015)/Frontiers in Sports and Active Living(2021)



