生きていれば、泣きたい夜があります。仕事で打ちのめされた夜、大切な人とぶつかった夜、理由もなく、ただ心が重い夜。今日は、そんな夜とサウナの話です。効能の話は控えめに、ただ、こういう場所があるということを、書いておきたいのです。

大人には、泣ける場所がない
大人になると、泣ける場所が、ほとんどありません。職場では無理、家では家族に心配をかける、車の中くらいが、せいぜいです。涙は我慢するもの、と体に教え込んで、私たちは日々をやり過ごしています。でも、涙には、ストレスを流すという、立派な仕事があります。アメリカの生化学者ウィリアム・フレイは、感情があふれて出る涙には、玉ねぎで出る涙とは違って、ストレスに関わる物質が含まれている、という研究を1980年代に発表しました。泣いたあと、なぜか少し軽くなる、あの感覚。あれは、気のせいではないのです。感情を無理に抑え込み続けることが、かえって心の負担になるのは、多くの心理学者が指摘するところ。泣くことは、弱さではなく、心が自分を守るための、まっとうな働きです。問題は、その安全弁を、安心して開ける場所がないこと。
サウナは、涙の許される部屋
サウナ室は、その数少ない場所のひとつです。薄暗く、一人で、顔は汗まみれ。涙が流れても、汗と見分けがつきません。誰にも、何の説明も要らない。熱の中で体がほどけてくると、こわばっていた心の蓋も、少しずつ、ゆるみます。我慢の背骨が、いい意味で、ふっと折れる。そこで出てくるものは、出してしまっていい。蒸気は、ぜんぶ黙って引き受けてくれます。水風呂で顔を洗えば、もう跡形もありません。外気浴で夜空を見上げるころには、呼吸が、さっきより深くなっているはずです。誰も、あなたが泣いたことを知りません。サウナを出れば、また、しっかり者の顔に戻ればいい。ひとりで抱えたものを、ひとりで、そっと降ろせる場所。大人には、そういう場所が、ときどき必要なのだと思います。(ひとりの夜の過ごし方は、こちら。)
泣いた夜は、よく眠れる
泣くことと、サウナ。実はこの二つは、どちらも、体をゆるめる側の神経、副交感神経を呼び戻す働きがあると言われています。つまり、泣きたい夜のサウナは、二重の回復装置なのです。涙で心の圧を抜き、温冷で体の緊張を抜き、上がったあとに深部体温が下がっていく坂道で、すとんと眠りに落ちる。泣いた夜は、翌朝が、少しだけ、ましになっている。それで十分な夜が、人生には、確かにあります。無理に前を向かなくて、いいのです。ただ、泣いて、温まって、眠る。それだけで、体は、明日を生きる準備を、静かに進めてくれます。(眠りの話は、こちら。)
弱っている日の、注意だけ
ひとつだけ、正直な注意を書いておきます。食事が喉を通らないほど弱っている日、眠れない日が何日も続いている日は、体力そのものが落ちています。そういう日は、温度を低く、時間を短く、けっして無理をしないこと。そして、心の重さが何週間も続くときは、サウナではなく、どうか専門家を頼ってください。サウナは、心強い味方ではありますが、医療の代わりではありません。それも、正直なサウナ屋の務めとして、はっきり書いておきます。あなたの心と体を守ることのほうが、いつだって、先ですから。
あなたの家に、安全弁を
岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビア岩手県正規代理店として、家族それぞれの「誰にも見せない夜」を、静かに受け止める部屋の設置を、お手伝いしています。泣いて、流して、そして眠る。それができる家は、強い家です。ご相談、いつでもどうぞ。
写真: DryPot (Wikimedia Commons, CC BY 2.5)



