サウナ室の図面を考えるとき、ストーブや壁材に目が向きがちです。実際に利用者が長く触れているのはベンチです。
ベンチの高さが低すぎれば、頭だけが熱く、足元が温まりにくくなります。奥行きが足りなければ姿勢が落ち着かず、段差が大きすぎれば上り下りが負担になります。
反対に、寝転べるほど広いベンチをつくれば、室内は狭くなります。ストーブとの安全距離と通路幅があってはじめて、使いやすいサウナになります。
座り心地を決めているのは、結局このベンチです。
熱の感じ方、入れる人数、安全性、清掃のしやすさ、室内の印象まで、ベンチの取り方しだいで変わってきます。サウナ設計の中心といっていい部分です。
この記事では、D'STYLE/KUUTA saunaが、家庭用から施設用まで、サウナベンチを計画するときに確認しているポイントを解説します。
ベンチの高さがサウナの体感を変える
サウナ室では、暖められた空気とロウリュの蒸気が上へ移動します。
そのため、同じ室内でも天井に近いほど温度が高く、床に近いほど低くなります。上段ベンチと下段ベンチで体感が違うのは、この温度層のためです。
ベンチが低すぎると、温度計は十分な数字を示していても、利用者の身体は熱い層へ入りません。顔の位置だけが高温になり、足元には冷たい空気が残ることがあります。
設計では、次の位置関係を確認します。
- サウナストーン上端の高さ
- 利用者が足を置く高さ
- 上段ベンチの座面高さ
- 座ったときの頭の位置
- 天井までの距離
- 給気口と排気口の位置
- ストーブからベンチまでの安全距離
とくに効いてくるのが、足の位置です。
上段へ座っても足が床近くに下がっていれば、上半身と足元の温度差が大きくなります。足置きや下段を適切な高さへ設け、足まで温かい層へ入るように考えます。
ただし、ベンチを高くすればよいわけではありません。
天井に近づきすぎると、頭上の空間が狭くなり、ロウリュ時の蒸気を強く感じすぎたり、立ち上がった際に頭をぶつけたりします。室内の天井高とストーブの位置から逆算して決める必要があります。
「標準寸法」より、どの姿勢で使うかを先に決める
サウナベンチには、すべての室内へそのまま当てはめられる一つの正解寸法はありません。
一人で静かに座るのか。あぐらをかくのか。横になりたいのか。家族で入るのか。施設で多くの利用者が並んで座るのか。
求める姿勢によって、必要な奥行きと一人当たりの幅が変わります。
標準的に腰掛けるベンチ
普通に腰掛け、足を下段へ下ろして使う場合は、限られた室内を効率よく使えます。
D'STYLE/KUUTA saunaでは、標準ベンチの奥行きは500mmを基準に検討します。体格や背板、壁との隙間、施設用途によって調整します。
一人当たりの幅は600mm程度を一つの目安にしますが、これは最低限の人数を詰め込む数字ではありません。利用者同士の距離、肘の動き、施設の運用を考慮して決めます。
あぐらや横座りを楽しむベンチ
あぐらをかく、脚をベンチ上へ上げる、身体の向きを変えて過ごす場合は、より深い奥行きが必要です。
KUUTA saunaのゆったりベンチは、一人当たり幅800mm、奥行き700mm以上を基準に検討します。
広い座面は、姿勢を変えやすく、足を高い温度層へ入れやすいという利点があります。一方で、室内容積が増え、通路やストーブとの距離も必要になるため、建物全体の寸法へ影響します。
寝転べるベンチ
横になる場合は、利用者の身長に合わせた長さが必要です。
枕や背板、壁との隙間まで考えると、図面上で人が入るだけの長さでは足りないことがあります。また、施設では一人が横になると複数席を占有するため、運用ルールも考えます。
寝転びを優先するのか、着座人数を優先するのか。ここを先に決めておかないと、あとの寸法が決まりません。
下段は座席か、ステップか
二段ベンチの下段には、二つの役割があります。
一つは、温度の穏やかな座席として使うこと。もう一つは、上段へ安全に上がるためのステップや足置きとして使うことです。
小さなサウナでは、下段を常時座る席として数えると、通路が狭くなりやすくなります。上段を主な座席とし、下段は上がり降りと足置きを中心に考える方法もあります。
施設用では、初心者、高齢者、熱さが苦手な方が下段を利用することもあります。座席として使う場合は、奥行き、背もたれ、ストーブからの距離を確保します。
段差が高すぎる場合は、中間ステップや手すりを設けます。濡れた足で上り下りすることを前提に、踏み面と滑りにくさを確認します。
天井高はベンチと一緒に決める
住宅や建物の天井高をそのままサウナ室へ採用すると、必要以上に高い空間になることがあります。
天井が高すぎれば、熱い空気が利用者の頭より上へたまり、ストーブが暖める容積も増えます。その結果、暖まるまでの時間や燃料・電気の使用量が増える可能性があります。
反対に、低すぎれば、上段へ座ったときに圧迫感があり、ロウリュの蒸気が急激に当たりやすくなります。
上段座面から天井までの寸法は、座った人の頭上空間、立ち上がる動作、ロウリュの流れ、照明や温度センサーの位置を見ながら決めます。
ベンチを後から決めるのではなく、断面図の段階で人の姿勢を描き、ストーブ、石、足、頭、天井の位置を確認します。前室・水風呂まで含めたサウナ室の設計・施工は、この断面の検討から始まります。
ベンチレイアウトの選び方
ベンチの形は、サウナ室の大きさ、扉、ストーブ、窓の位置によって変わります。
I型|小さな室内を無駄なく使う
一面の壁へ直線状にベンチを設ける、最もシンプルな形です。
小型の家庭用サウナや、一方向の景色を楽しむサウナに向いています。構造が分かりやすく、清掃や部材交換もしやすくなります。
一方で、利用者同士が横一列になるため、会話のしやすさや人数には限りがあります。
L型|角を使って人数と姿勢を増やす
二面の壁に沿ってベンチを設ける形です。
家族や友人と顔を合わせやすく、長い側では横になることもできます。窓、扉、ストーブを残りの壁面へまとめやすい点も利点です。
角部分は座りにくい空間になりやすいため、背板や座面の割り付け、清掃方法を考えます。
対面型|会話しやすい施設向けレイアウト
向かい合う二面にベンチを設けます。
複数人が利用し、会話を楽しむ施設や大型サウナに向いています。ただし、中央通路とストーブ周囲の安全距離が必要です。
室内幅が足りないまま対面にすると、膝がぶつかる、通路が狭い、ストーブへ近づきすぎるといった問題が起こります。
U型・プラットフォーム型|大人数を受け入れる
三方向にベンチを設けるU型や、床全体を高くしたプラットフォーム型は、大型施設で多く使われます。
熱い層へ多くの利用者を入れやすい一方、避難動線、段差、清掃、床下換気、ストーブの保護に細かな設計が必要です。
見た目の迫力だけで選ばず、スタッフが清掃し、点検し、将来修理できるかまで確認します。
オープン型と目隠し型の違い
ベンチ下を見せるオープン型は、空気が流れやすく、床の清掃や点検がしやすい構造です。
一方、前板で覆う目隠し型は、すっきりとした見た目になります。ホテルや高級住宅では採用されることがありますが、内部に湿気や汚れが残らないよう、前板を取り外せる構造や換気経路を設けます。
完全に密閉すると、床下が乾きにくくなり、配線や下地の点検も難しくなります。
デザインを整える場合も、「外せる」「洗える」「乾く」を条件にします。
フローティングベンチは下地から計画する
床へ脚を立てず、壁から浮いているように見せるフローティングベンチは、床面が広く見え、清掃もしやすいデザインです。
ただし、壁がベンチと利用者の荷重を支えなければなりません。
完成後の羽目板へ金具を留めるだけでは強度を確保できません。壁内の構造材、固定金物、防湿層、熱による木材の伸縮を設計段階から考えます。
長いベンチでは、見えにくい位置へ補助脚や金物を設ける場合もあります。見た目だけでなく、複数人が同時に乗ったときの安全性を優先します。
サウナベンチに適した木材
ベンチ材は、壁材以上に肌へ直接触れます。
選定では、次の点を確認します。
- 高温時に表面が熱くなりにくい
- ささくれが出にくい
- 樹脂やヤニが出にくい
- 汗や水分を含んでも変形しにくい
- 表面を清掃、研磨しやすい
- 交換材を将来入手できる
- 香りや色が空間の意図に合う
使用される樹種には、アバチ、アスペン、アルダー、サーモウッド、ヒノキなどがあります。樹種だけで性能が決まるわけではなく、乾燥状態、節、木取り、厚み、表面仕上げによって使い心地は変わります。木材の選び方はサウナ建材・木材のページでも解説しています。
香りの強い木材は魅力ですが、樹脂分や節の状態を確認します。施設用では、見た目だけでなく、交換のしやすさと継続的な調達も重要です。
D'STYLEでは、壁、天井、ベンチをすべて同じ材料にするとは限りません。身体が触れるベンチには熱くなりにくい材料を使い、壁には香りや木目を楽しめる材料を使うなど、役割を分けて選びます。
金属を肌へ触れさせない
サウナ室内の金属は高温になります。
座面や背板のビス頭が露出していると、利用者が触れてやけどをする可能性があります。固定金物は裏側から留める、木栓で隠す、身体が触れない位置へ配置するなどの方法を取ります。
角は面取りし、手足が触れる部分は滑らかに仕上げます。
完成時にきれいでも、木材は使用と乾燥を繰り返して動きます。ビスの緩み、反り、割れ、ささくれを点検できる構造にします。
強度は利用人数と使い方から考える
ベンチには、座って生じる静かな荷重のほかにも、さまざまな力がかかります。
利用者が勢いよく腰掛ける、立ち上がる、上段へ手を掛ける、清掃スタッフが乗るなど、動きによる力が加わります。
施設用では、次の項目を確認します。
- 想定する最大利用人数
- ベンチの長さと支持間隔
- 下地材の寸法と固定方法
- 壁への固定部分
- 床の防水層を傷めない納まり
- ストーブガードや手すりとの接続
- 脱着部分のがたつき
- 将来の部材交換方法
見えない下地を十分に入れ、完成後も増し締めや補修ができるようにします。
清掃しやすいベンチは長く使える
サウナベンチには、汗、皮脂、水分、タオルの繊維などが付着します。
清掃が難しい構造では、見える表面だけを拭いても、座板の隙間、背板の裏、床との取り合いへ汚れが残ります。
計画時には、次の点を考えます。
- 座板やすのこを取り外せるか
- ベンチ下へ手や清掃道具が入るか
- 床の水を排水口へ流せるか
- 壁際に汚れがたまらないか
- 木材を十分に乾燥させられるか
- 破損した板だけを交換できるか
- 配線や照明を点検できるか
施設用では、毎日の清掃時間も運営コストです。
複雑な曲面や細かな隙間を増やすほど、手入れには時間がかかります。見た目と清掃性の両方を確認し、スタッフが無理なく続けられる構造にします。
ベンチの仕上げとメンテナンス
ベンチを無塗装で使うか、サウナ用の保護剤を使用するかは、木材と運用方針によって決めます。
一般住宅用の塗料やニスを、確認せずに高温の座面へ使用することは避けます。高温での使用を想定したサウナ用製品を選び、メーカーの施工方法と乾燥時間を守ります。
日常の手入れでは、使用後に換気して乾燥させ、汚れを長期間残さないことが基本です。
表面が毛羽立った場合は、状態を確認して研磨します。割れ、腐食、ぐらつきがある場合は、使用を止めて部材や下地を補修します。
保護剤を使う場合も、異なる種類を重ね続けると、べたつきや色むらが出ることがあります。最初に使用した製品と施工記録を残しておきます。
家庭用と施設用では優先順位が違う
家庭用サウナでは、家族の体格や好みに合わせ、ゆったりした座面や寝転べる長さを優先できます。
施設用では、利用者の体格や経験が一定ではありません。座席数、上り下りの安全、非常時の退出、清掃時間、部材交換まで考える必要があります。
貸切施設では自由な姿勢を取りやすい一方、初めて利用する人にも段差や使用方法が伝わる表示が必要です。
同じ面積でも、家庭用と施設用で最適なベンチは異なります。
高級仕様にも、予算を抑えた仕様にもできる
ワンオフのサウナベンチというと、高価な造作を思い浮かべる方が多いかもしれません。
ただ、オーダー設計だからこそ、費用を抑える方向に振ることもできます。
- ベンチを直線形状にして加工を減らす
- 高価な材料は身体が触れる部分へ絞る
- 下地を共通化して交換しやすくする
- 窓や照明へ予算を配分する
- 将来拡張できるよう下地だけ準備する
使い方と予算に合わせて、こうして中身を組み替えていけます。
反対に、景色を楽しむ大きな窓、浮遊感のあるベンチ、間接照明、曲面加工、希少材を組み合わせた高級仕様も可能です。
ワンオフだから高い、とはかぎりません。必要なところへ費用を寄せられるのが、オーダー設計の良さです。
D'STYLE/KUUTA saunaのベンチ設計
D'STYLE/自社sauna KUUTAでは、ベンチをサウナ室全体の一部として設計します。
- サウナ室の容積
- ストーブの出力とストーン量
- サウナストーン上端の高さ
- 天井高
- 給気と排気
- 窓や扉からの熱損失
- 利用者の足と頭の位置
- ストーブとの安全距離
- 非常ボタンや照明の位置
- 清掃、点検、部材交換
これらを断面図と平面図で確認し、その場所に合う高さ、奥行き、形状を決めます。
標準的に座るベンチ、あぐらを楽しむ広いベンチ、寝転べるベンチ、施設向けの多段ベンチなど、ご希望に合わせてご提案します。
まとめ|良いベンチは、熱・動線・清掃で決まる
サウナベンチを計画するとき、幅や奥行きの数字だけを先に決めると、ストーブとの距離、通路、天井高、換気とのバランスが崩れることがあります。
先に固めておきたいのは、利用者がどんな姿勢で過ごし、足をどの高さへ置き、ロウリュの蒸気をどの位置で受けるのか、という点です。
さらに、安全に上り下りできること、清掃して乾燥できること、将来板を交換できることまで含めて設計します。
良いベンチは、熱と動線と清掃で決まる。
幅や奥行きの数字は、そのあとでいい。
D'STYLE/KUUTA saunaでは、個人宅、別荘、ホテル、旅館、温浴施設など、用途とご予算に合わせてサウナ室を一室ずつ設計・施工します。
図面や設置予定場所の写真があれば、利用人数と希望する入り方を伺い、ベンチ、ストーブ、換気、照明まで一体でご提案します。ご相談は無料です。
※本記事の寸法は設計時の考え方とD'STYLE/KUUTA saunaの基準を示すものです。実際の寸法、構造、耐荷重、安全距離は、室内条件、利用人数、採用機器、建築条件によって調整します。


