転職に踏み切るか、現状にとどまるか。大きな買い物を決めるか、見送るか。あの人に、あの話をどう切り出すか。人生は、迷いごとの連続です。今日は、その決断とサウナの話。結論を先に言ってしまいます。大事なことは、疲れた頭で決めない。ととのってから決める。この一手間だけで、決断の質は、目に見えて変わります。
疲れた頭は、悪い決断をする
一日の終わりの脳は、決断力を使い果たしています。心理学では、選び続けるほど判断の力がすり減っていく現象を「決断疲れ」と呼びます。2011年に米国科学アカデミー紀要(PNAS)で発表された、シャイ・ダンジガーらの研究が有名です。イスラエルの裁判官の仮釈放審査を調べたところ、休憩明けの許可率がおよそ65パーセントだったのに対し、疲れのたまる休憩の直前には、ほぼゼロまで落ちていました。同じ書類、同じ裁判官。違うのは、頭の元気だけです。疲れ切った判断は、投げやりに転ぶか、不安で固まるかの、どちらかに寄っていきます。大事な決断ほど、この時間帯を避けるのが賢明です。
「考えない時間」が、答えを整理する
ここでサウナです。面白いことに、サウナは「考える場所」ではなく「考えられない場所」として、決断に効きます。90度前後の熱の中では、ぐるぐる回っていた思考が、強制的に止まる。ところが脳は、意識が考えるのをやめている間も、水面下で情報の整理を続けています。心理学でいう「インキュベーション(孵化)効果」、散歩や入浴の最中に、ふと答えが降りてくる、あの働きです。サウナと水風呂と外気浴で意識のおしゃべりを黙らせている間に、脳の奥では、散らかった机が静かに片づいていきます。数学者アンリ・ポアンカレは、長く解けなかった難問の答えが、研究机の前ではなく、乗り合い馬車に足をかけた何気ない瞬間に、ふいに閃いたと書き残しています。頭を、あえて別のことに向けている時間こそ、答えの熟成室なのです。外気浴で空を見上げたとき、「なんだ、もう答えは出ていたじゃないか」と気づく瞬間は、サウナ好きなら覚えがあるはずです。(ひらめきが降りてくる仕組みは、こちら。)
紙に書いて、入って、また読む
実践的なやり方を、ひとつ。迷っていることを、サウナに入る前に、一枚の紙に書き出しておきます。二つの選択肢と、いま感じている不安を、飾らず正直に。そしてサウナに入り、水風呂に沈み、外気浴でぼんやりと過ごす。上がってから、もう一度その紙を読み返してみてください。書いたときと見え方が変わっていたら、それが頭の整理された証拠です。どちらかの選択肢が急に軽く見えたり、逆に重く見えたり。答えは、新しい情報からではなく、静まった心から立ちのぼってきます。
フィンランドは、サウナで決めてきた
サウナの国では、これは昔からの知恵です。フィンランドには、大事な話し合いや交渉をサウナで行う伝統があり、国会議事堂にもサウナが備わっているほど。ウルホ・ケッコネン大統領(在任1956年から1982年)の「サウナ外交」は語り草で、外国の要人を熱い部屋に招き、裸のままで難しい交渉をまとめたと伝わります。裸の対話は駆け引きを減らし、熱は頭の余計な力みを取る。「怒りとサウナは一緒に入れない」ということわざも、冷静さを取り戻す場所としての知恵でした。(サウナのことわざの話は、こちら。)
決断の道具として、一台
人生の決断の質が暮らしの質を決めるのなら、頭を整える装置は、立派な人生の道具です。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビア岩手県正規代理店として、あなたの「決める前の90分」の場所をご用意します。ちなみに、サウナを買うかどうかの決断も、どうぞととのった頭で。展示場のサウナを体感してから決めていただくのが、私たちの流儀です。
写真: Arto J (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



