フィンランドのサウナには、決まった食べものがあります。マッカラ。直訳すればソーセージですが、日本の朝食のウインナーを思い浮かべてはいけません。直径4〜5センチはある太い一本を、豪快に焼いて、皮をパリッと裂いて食べる。サウナ小屋の外の焚き火端で、湯上がりの顔がほてったまま頬張るこの一本は、フィンランド人にとってサウナ体験の正式な一部です。今日は、サウナ飯を深掘りします。
マッカラは「フィンランドの国民食」である
フィンランドの夏の統計では、国民一人あたりのマッカラ消費量は年間数キロにのぼると言われ、夏至祭(ユハンヌス)の週末には全国のスーパーからマッカラが消えると冗談になるほどです。定番は、グリルマッカラと呼ばれる焼き専用の太物。中でもHKシニネンなどの銘柄は、日本の「赤いきつね」なみに誰もが知る存在です。面白いのは、具や味付けの流儀が驚くほど質素なこと。切り込みを入れて焼き、フィンランド式の甘いマスタード(シナッピ)をひと筋。以上です。ケチャップ派とマスタード派の論争はあれど、野菜を挟むとか、パンに載せるとかの飾りは基本なし。サウナで研ぎ澄まされた舌には、肉と塩と煙だけで十分ごちそうなのです。
焼き場は、焚き火から石の上まで
焼き方にも文化があります。夏の別荘では、焚き火や炭火にマッカラ用の長い焼き串。冬は、サウナストーブの熱を借ります。フィンランドの雑貨屋には、サウナの石の上に置くマッカラ焼き専用のアルミ皿や小さな鉄箱が普通に売られていて、サウナに入りながら夕食が焼き上がるという寸法です。石の上で焼くと、肉汁が落ちて石を汚すので、必ず受け皿を使うのが唯一のマナー。湯気と一緒にほのかな燻香がついて、これがまた合う。薪ストーブの天板でじっくり焼く手もあり、これは岩手の家でそのまま真似できます(ストーブ料理の話)。
相棒のロンケロは、五輪生まれ
マッカラの隣には、たいてい銀色の缶があります。ロンケロ(ロングドリンク)。ジンをグレープフルーツソーダで割った炭酸で、ほろ苦さと軽さがサウナ上がりの体に驚くほどなじみます。この飲み物、実は1952年のヘルシンキオリンピック生まれ。世界中から押し寄せる観客に素早く飲み物を出すため、あらかじめ缶で混ぜておく発想で作られた、いわば国家的な発明品です。以来70年、フィンランドのサウナとマッカラの正式な相棒の座にいます。日本でも輸入缶が手に入るようになりましたし、グレープフルーツの炭酸で気分は十分再現できます。もちろんアルコールは、サウナから完全に上がって、水分補給を済ませたあとの一杯で(水分の話)。
岩手のサウナ飯を、発明しよう
ここからは楽しい宿題です。フィンランドのサウナ飯がソーセージなら、岩手のサウナ飯は何がふさわしいか。私たちの候補は、炭火の南部せんべい、湯上がりの冷麺、ストーブ天板の焼きりんご(こちら)。サウナで整った舌は、素朴な味ほどおいしく感じます。あなたの家のサウナ飯の定番が決まったら、それはもう立派な家の文化です。
サウナ飯の話は、店でも大好物です
岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターの店であると同時に、サウナの楽しみ全部の相談所でありたい店です。マッカラの焼き皿の話から冷麺論争まで、サウナ飯談義はいつでも歓迎です。
写真: 不明 (Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0)



