焼き芋の記事(こちら)を書いたら、「うちは焼きりんご派です」というお声をいくつもいただきました。ごもっともです。ここは岩手、全国有数のりんご県。県内どこの直売所にも、冬中りんごが山と積まれています。今日は、りんご県の冬のデザート、薪ストーブの焼きりんごの話です。

品種は、酸っぱいのが正解
焼きりんごの品種選びには、鉄則があります。生食でおいしい甘いりんごより、酸味のしっかりした品種が化けるのです。王様は、紅玉。もとはアメリカ生まれのジョナサンという品種で、明治のはじめに日本へ入ってきました。加熱すると果肉がとろりと崩れ、酸味と甘みが濃縮されて、香りが立つ。まさに焼かれるために生まれたようなりんごです。手に入らなければ、紅玉を親に持つジョナゴールドを。ふじなど甘い品種は煮崩れしにくく、しゃっきりした焼き上がりになります。どちらが好みかは、焼き比べる楽しみに取っておいてください。皮ごと焼けば、皮の内側の赤い色素が果肉に移って、断面がほんのり薔薇色に染まります。目にも楽しいのが、酸味系のもうひとつの得です。
江刺りんごという、岩手の宝
岩手のりんごの話をするなら、江刺りんごに触れないわけにいきません。奥州市江刺で育つこのブランドは、昼夜の寒暖差が生む蜜と、袋をかけずに太陽をたっぷり浴びせる「サンふじ」の濃い味で知られ、初競りでは驚くような高値がつきます。青森で生まれた「ふじ」は、いまや世界でいちばん多く作られるりんご。北国の寒さと厳しい冬こそが、りんごの甘さを育てます。火のそばで焼くその一個も、この土地の冬が育てた宝なのです。岩手のりんご作りは明治にさかのぼり、いまも県内には、りんご畑の広がるのどかな里の風景が残ります。
作り方は、詰めて、置くだけ
芯抜き、なければスプーンで、底を抜かないようにりんごの芯をくり抜きます。穴に、バター、砂糖、きび糖や蜂蜜でもよし、シナモン、あればレーズンやくるみを詰める。アルミホイルでゆったり包んで、あとは火に任せます。天板なら、ときどき転がしながら小一時間、じっくり派の焼き方。熾火の脇に置くなら三十分ほどで、とろとろ派の焼き上がり。りんごに含まれるペクチンが熱でゆるみ、果肉がジャムのようにとろけます。竹串がすっと通り、甘酸っぱい香りがホイルから漏れてきたら、できあがりです。バニラアイスを添えれば、店のデザートを超えます。溶けたバターと果汁がまざった焼き汁を、スプーンで最後の一滴まですくえば、それはもう、りんごのシロップです。
部屋中が、りんごの香りになる
焼きりんごの本当のごちそうは、待ち時間の香りです。バターとシナモンとりんごの甘い匂いが、ストーブの熱に乗って、部屋中に広がっていく。この香りの中で本を読んで待つ小一時間は、デザートの前菜のようなもの。子どもは匂いで集まってきます。そしてこの香りは、きっと将来の「実家の匂い」になります。(香りと記憶の話は、こちら。)
サウナ上がりの、冷やし焼きりんご
そして、サウナーへの提案です。焼きりんごを多めに作って、冷蔵庫へ。よく冷えた焼きりんごは、とろりとしたコンポートのようで、サウナ上がりの体に、甘みと水分と香りを一度に届けてくれます。温かいまま食べるか、冷やして食べるか。りんご県のサ甘味論争として、ご家庭でどうぞ。(サ甘味の話は、こちら。)
りんごと火の土地で
岩手・盛岡のD'STYLEは、ハースストーンやバーモントキャスティングスなど、おやつ作りの楽しい薪ストーブの設置をお手伝いしています。りんご箱を抱えて店にいらしたら、焼き方談義にいくらでも付き合います。ご相談、いつでもどうぞ。
写真: Kristof Zerbe (Wikimedia Commons, CC BY 3.0)




