フィンランドのサウナ用品店の棚で、ひときわ目を引く一角があります。SAUNA HUNAJA、サウナハニー。サウナで肌に塗るための蜂蜜です(#130のスキンケアの記事の写真が、まさに現地のその棚です)。蜂蜜を、食べるのではなく、塗る。今日は、この甘い風習の話です。

蜂蜜は、古典的な美容素材
蜂蜜を肌に使う知恵は、フィンランドの専売ではありません。クレオパトラの蜂蜜風呂の伝説から、日本の蜂蜜パックまで、蜂蜜は世界中で古典的な美容素材でした。理由は、その保湿力。蜂蜜は空気中や肌の水分を抱え込む性質が強く、肌の上で天然の保湿膜として働きます。フィンランドの人たちは、これをサウナと組み合わせました。温まって毛穴のひらいた肌に、薄く蜂蜜をのばす。汗と蜂蜜がなじんで、上がって流したあとの肌が、しっとりつるりと仕上がる、という寸法です。
白夜が育てる、北欧の蜂蜜
本場の話も少し。フィンランドは、夏に太陽の沈まない白夜の国です。短いけれど日照のたっぷりある夏、花々がいっせいに咲き、蜜蜂は昼夜を問わず働きます。なかでもヤナギランという野の花からとれる淡い色の蜂蜜は、北欧を代表する味として親しまれてきました。清らかな自然の中で採れた蜜を、サウナ上がりの肌にまとう。食べるだけでなく肌にも使うという発想は、蜂蜜を身近な恵みとして大切にしてきた、北の暮らしから自然に生まれたものなのでしょう。
使い方と、正直な注意
やり方は簡単です。サウナで一度しっかり汗をかいたあと、腕や脚、体に蜂蜜を薄く塗り、数分置いて、シャワーでよく洗い流す。顔に使うなら目の周りを避けて、ごく薄く。ベンチや床に垂らすとべたつきと汚れのもとなので、タオルをしっかり敷くのが作法です。注意も正直に。蜂蜜アレルギーの方は使えません。肌の弱い方は腕の内側で試してから。そして共用サウナや施設では、匂いと汚れの観点からマナー違反になり得るので、これは自宅サウナの楽しみと心得てください。使ったあとの拭き掃除まで含めて、甘い風習です。(サウナ後の保湿の基本は、こちら。)
甘いだけじゃない、はちみつの底力
蜂蜜は、人類が最も古くから使ってきた甘味であり、薬草がわりの常備品でもありました。古代エジプトでは供物や保存食に用いられ、腐りにくい食品として重宝されたと伝わります。糖度が高く水分が少ないため、蜂蜜そのものは長く傷みにくいのです。だから開封後も常温で置いておける、扱いやすい素材でもあります。サウナ用に一瓶、洗面台の白湯用に一瓶、台所に一瓶。甘くて日持ちして、食べても塗ってもいい。こんなに気前のいい自然の恵みは、そう多くありません。一匹の蜜蜂が一生に集める蜜は、ティースプーン一杯にも満たないと言われます。無数の羽ばたきが、あの一瓶に詰まっている。そう思うと、サウナ上がりの一塗りも、白湯に溶かす一さじも、ずいぶん贅沢な時間に思えてきます。
岩手の蜂蜜で、地産の一塗りを
専用のサウナハニーは輸入品ですが、中身の本質は良質な蜂蜜です。つまり、岩手の蜂蜜で楽しめます。県内には養蜂家が多く、藤原養蜂場をはじめ、アカシア、トチ、栗と、地元の花の蜜が直売所に並ぶ土地柄。地場の蜂蜜を、サウナの一塗りに少しだけ拝借する。食べてよし、塗ってよし、サウナ上がりの白湯に溶かしてよし。甘みの三刀流です。(サ甘味の話は、こちら。)
甘い夜を、ご自宅で
岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビア岩手県正規代理店として、こうした本場の風習ごとサウナの暮らしをお届けしています。蜂蜜の夜、ヴィヒタの夜、塩の夜。引き出しの多いサウナは、飽きません。ご相談、いつでもどうぞ。



