薪ストーブの料理の話をすると、シチューだのピザだのと、ごちそうの話になりがちです。でも、薪ストーブ乗りたちが冬に何百回と作り、いちばん愛しているのは、もっと素朴なものです。焼き芋。熾火の中でじっくり火の通った芋の、あのねっとりした甘さは、オーブンにもレンジにも、けっして出せません。今日は、わが家の黄金レシピの話です。
なぜ熾火の芋は、甘いのか
さつまいもの甘さは、でんぷんが糖に変わることで生まれます。この変化がいちばん進むのは、高すぎない温度でじっくり加熱したとき。強火で一気に焼くより、穏やかな熱で時間をかけるほど、芋は甘くなるのです。そして、薪ストーブの熾火は、まさにこの「穏やかで長い熱」の名人。炎が落ち着いたあとの熾火は、遠赤外線で芋の芯までゆっくり火を通し、甘みを最大限に引き出してくれます。ねっとり系がお好みなら紅はるかや シルクスイート、ほくほく系なら紅あずま。品種で焼き上がりの顔が変わるのも、楽しいところです。
包み方と、置きどころ
作り方は簡単です。芋をよく洗い、濡らした新聞紙かキッチンペーパーで一巻き、その上からアルミホイルで二重に包む。この「濡れ紙の一枚」が蒸し焼き効果を生んで、しっとり仕上げてくれます。置き場所は、燃え盛る炎の中ではなく、炎が落ち着いた熾火のそば。灰を少しかぶせるくらいの位置で、途中で一度ひっくり返しながら、四十分から一時間ほど。竹串がすっと通れば、できあがりです。焦らないこと。芋は、待った分だけ甘くなります。(熾火の育て方は、火の起こし方の話に。)
子どもが、火に集まる日
焼き芋の日は、家の中の空気が少し変わります。子どもたちが、そわそわとストーブの前に集まってくる。「まだ?」「もうちょっと」というやりとりを三回くらい繰り返して、ホイルを開ける瞬間の、あの湯気と歓声。おやつが「出てくるもの」ではなく「火と時間が作るもの」だと知ることは、ちょっとした食育であり、火育でもあります。(子どもと火の話は、こちら。)
サウナ上がりの、冷やし焼き芋
ひとつ、通の楽しみ方を。焼き芋を多めに作って、冷蔵庫で冷やしておく。サウナ上がりの火照った体に、冷たいねっとり焼き芋。これが、驚くほど合います。水分と糖分の補給になり、腹持ちもいい。岩手の冬の、サ甘味の隠れた王様です。(サウナと甘いものの話は、こちら。)
おやつ付きの暖房を
暖房で、おやつが作れる。考えてみれば、薪ストーブとは不思議な道具です。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハースストーンやバーモントキャスティングスの薪ストーブの設置をお手伝いしています。焼き芋に向くおすすめの機種、店先でこっそり教えます。この冬は、家で焼き芋屋さんを開業しませんか。



