フィンランドは、しばしば「千の湖の国」と呼ばれます。実際にはその数は千どころではなく、大小あわせておよそ18万8千もの湖が、国土に散らばっています。フィンランド語で湖はヤルヴィといい、その言葉は地名や人の名字にもよく登場します。それほど、湖はこの国の暮らしと切り離せない存在です。今回は、水とともに生きるフィンランド、湖水地方の暮らしの話です。
18万8千の、水の粒
フィンランドの国土は、上空から見ると、無数の湖が青くきらめいています。その数、面積五アール以上のものを数えて、およそ18万8千。国土のおよそ一割が水面だといわれ、これほど湖の多い国は、世界を見渡しても数えるほどです。かつて大地を厚くおおっていた氷河が、退くときに岩盤を削り、そのくぼみに雪解け水がたまって、長い時間をかけて生まれた景色です。湖の多くは水深が浅く、夏にはほどよく水がぬるんで、泳ぐのにも心地よい温度になります。森と湖が複雑に入り組んだこの地形こそ、フィンランドの原風景といえます。
サイマー湖という、大きな水
数ある湖の中で最も大きいのが、南東部に広がるサイマー湖です。ヨーロッパでも四番目の大きさとされる、入り組んだ形の湖です。周辺は湖水地方と呼ばれ、大小の湖が水路で網の目のようにつながっています。十九世紀に開かれたサイマー運河は、この湖をフィンランド湾へと結び、木材を運ぶ大切な道になりました。かつては切り出した丸太を水路に浮かべて運び、船で人と物を行き来させました。湖は道であり、畑であり、暮らしそのものを支える大地だったのです。
湖に生きる、めずらしい隣人
サイマー湖には、世界でここにしかいない生き物がいます。サイマーワモンアザラシです。氷河期の名残で湖に取り残され、海と切り離されたまま独自に生き延びてきた淡水のアザラシで、その数は四百頭ほどと、たいへん貴重です。フィンランドの人々は、この小さな隣人を守るため、繁殖の時期に漁の網を控え、雪の巣穴を見守るなど、地道な保護を続けています。自然と共に生きる姿勢が、ここにも表れています。
湖のほとりに、家を建てる
フィンランドの人々にとって、湖のそばで過ごす時間は、暮らしの喜びそのものです。この国には、モッキと呼ばれる素朴な夏の別荘が、五十万棟を超えて点在します。多くの家族が湖畔にこの小屋を持ち、夏になるとそこで長い休暇を過ごします。電気や水道を引かず、薪で湯を沸かし、井戸や湖の水を使う素朴な小屋も少なくありません。泳ぎ、釣りをし、ボートを漕ぎ、沈まない夏の陽の下、夜遅くまで湖を眺めながらサウナで汗を流す。都会の喧騒を離れ、水と森に抱かれて過ごす日々が、心を深くほどいてくれるのです。
サウナと湖は、ひとつづき
湖の国のサウナは、水と切り離せません。熱い蒸気で体を温めたら、桟橋を駆けて、そのまま湖へ飛び込む。冷たい水に全身を沈め、火照りが引いたらまた火の部屋へ戻る。この温冷の繰り返しこそ、フィンランド式サウナの醍醐味です。冬には湖の氷に穴を開け、その凍てつく水に身を沈める人もいます。凍った湖で泳ぐことはアヴァントと呼ばれ、冬の楽しみのひとつになっています。湖畔に建つサウナ小屋は、フィンランドの夏を象徴する風景。水と火が隣り合う暮らしが、そこにあります。
岩手の水と、火の間で
豊かな水のそばで、火の部屋を持つ。この湖の国の暮らし方は、清流と湖に恵まれた岩手にもよく似合います。岩手・盛岡のD'STYLEは、ハルビアのサウナヒーターで、水と火を行き来する心地よいサウナ時間をお手伝いしています。フィンランドの湖の話も、店でどうぞ。
写真: Adrián Pérez from Helsinki, Finland (Wikimedia Commons, CC BY-SA 2.0)



